校正料金を引き下げる過剰品質(やりすぎ)が校正業界をダメにする

校正料金を引き下げる過剰品質(やりすぎ)が校正業界をダメにする

1:校正・校閲の過剰品質とは?

過剰〇〇といえば、過剰供給、過剰包装のような言葉が有名ですが、これらの言葉は良くない例として使われることが多いです。

過剰な行為や状態が、自分にとって相手にとって、時には両者にとって良からぬ影響を及ぼすということです。

校正の仕事でも、この過剰○○は見れます。過剰品質というものです。

これは、校正者の行き過ぎた品質へのこだわりが、良からぬ結果を招くというものです。言い換えると、良かれと思ってやった校正が、知らぬ間に自分の首や他人の首を絞めているということです。

2:過剰品質はコミュニケーションエラー

校正の過剰品質は、相手(発注者)との意思疎通ができていない場合に生じます。
一種のコミュニケーションエラーです。

この状況は、童話『金の斧、銀の斧』でたとえられることがあります。
(※この童話の教訓をたとえとしているわけではなく、この童話の事実関係だけを抜き出しての例です)

木こりは、川の神様に自分が落とした鉄の斧を返して欲しいとお願いします。

しかし、川の神様は、木こりが要求する鉄の斧でなく銀の斧・金の斧を木こりに勧めます。

まず、ここでギャップが生じます。

川の神様は、鉄の斧より銀の斧・金の斧のほうが、木こりにとって良いものだと思い込んでいます。

何が欲しいかは木こりが決めます。木こりが必要としているものは、高価な斧でなく、今仕事で使える自分が使い慣れた鉄の斧です。

川の神様は、木こりの要望を汲み取っていないばかりか、自分が良かれと思った銀の斧・金の斧を勧めているわけです。

これでは双方にズレが発生します。

良かれと思ってやったことが常に相手に受け入れられるわけではありません。しかも、それで相手が喜んでくれると思うのは大きな誤解です。

この行為は、時に仇となることがあります。
特に、金銭が発生するような場面であれば、ストレスや揉めごとの原因となる恐れがあります。

3:過剰品質の生まれる原因と不幸な結果

校正者が品質にこだわること自体は大切なことですが、予算感覚を持たない品質へのこだわりでは、過剰品質に陥ってしまいます。

校正での過剰品質は、オーダーされた以上のことまで良かれと思ってやってしまうことです。この状況に陥る一番多いケースは、依頼された作業範囲以外の間違いを見つけてしまった場合です。

たとえば、次のようなケースです。
校正依頼者から「赤字の修正確認だけお願いします」とオーダーされて校正作業を進めていたが、たまたま赤字修正以外の間違いを見つけてしまったという場合です。

このときに依頼者に報告せずに『ここも違う』『あそこも違う』と、作業範囲をどんどん広げて校正をやり続けてしまうと不幸のはじまりです。

あらかじめ予算が決まっているものなら、当然割に合わなくなってきます。ページ単価で仕事を引き受けているなら1ページ当たりの単価が低くなるばかりです。

仮に、時間単価で校正費を請求するなら、依頼者側の想定時間と校正者側の実働時間とでギャップが生じます。誰も得しない状況が生まれます。

このような状況にならないために、校正者はイレギュラーなことがあれば依頼者にちゃんと報告しなければいけません。

気づいた時点で、依頼者に「この辺りも間違っていますが、校正したほうがいいですか?」と確認することです。逆に「この辺りも間違っていたので校正しておきました」という事後報告では、それがスタンダードになってしまいます。

「校正したほうがいいですか?」と尋ねると、依頼者は「じゃあ、お願いします」と返答する確率は非常に高いです。

そこで、予算交渉ができればいいですが、できない(やりづらい)場合は、お金が掛かりますと直接的に言わなくても、「その分時間が掛かりますけど大丈夫ですか?」など表現を変えて、『あなたの想定したオーダーよりも作業量が増えるということ』をわからせるように伝えます。

ここで報告するのを怠っていると、

依頼者は、そこまでするのが校正の仕事だと誤解してしまいます。オーダーしなくても、校正に手配すれば色々と間違いを見つけてくれる、この感覚が当たり前となってしまいます。

予算が決まっているものなら、この価格ならここまで校正してもらえるという誤った基準が、依頼者の中にでき上がってしまいます。校正者がオーダー以上のサービスでした作業も含めて、依頼者に適正価格だと思われるということです。

さらに悲劇なのは、この依頼者が別の校正者に仕事を依頼するときです。

「他の校正者は、この料金でここまで校正してくれたから、この料金でお願いできませんか?」という、不幸が連鎖してしまいます。

これは、依頼者が悪いのではなくて、黙って作業してしまった校正者が不幸の起点となっています。

報告を怠る・なあなあで済ませていると、自分が見えないところでマイナスを被る人が出てくるということです。

4:負のスパイラルから脱却

過剰品質がスタンダードになってしまった校正物件は、改めて料金を見直してみる必要があります。

最近では、人材不足による人件費の高まりにより、値段交渉をする会社は多いです。数年前に比べれば派遣費用も上がっています。普通の会社ならその辺りの事情も知っているはずです。

決して値上げ交渉は珍しいことではありません。交渉を持ちかけられたとしても「ついに来た」という感じで構えていることもあります。悪くいえば、言われるまで待っておこうと静観している状況です。

また、発注側の担当者が同じでずっと一緒に仕事をしていて、長い付き合いであれば、何となくの関係性で見積もりを出さないというケースも多いと思います。お互いに校正費の相場がわかっているなら、それでも問題ないです。

ただ、発注側の担当者が変わったときは、書面で校正費用を明確にしておくほうが、後々の誤解を生まないために安心です。

5:感謝の性質

人に感謝してもらうことは誰でもうれしいことです。感謝されることが、仕事のモチベーションとなることも多いです。

ただ、過剰品質の場合は、感謝の性質が違ってきます。発注者側からすれば、一定の料金さえ支払えば、何でも校正してくれるわけです。感謝するのは当たり前です。

校正者なら誰でも、自分の納得が行くまでじっくり時間をかけて校正したいのが本音だと思います。正直、お金の話も言いづらいときがあります。

ですが、後々のマイナス要因を取り除くためにも、イレギュラー時の報告と予算交渉はちゃんとやっておくべきです。これは、自分のためだけでなく、発注者にとっても適正な料金相場を知ることができるのでプラスになります。