
校正の難しいところ。覚えておきたい役立つポイント[例題で解説]
校正では、一つの赤字が複数の箇所に影響してくるということがあります。また、赤字が入ったことによって、他の箇所と矛盾してくるということもあります。
単純に、赤字の指示通りに修正されていればOKというだけでなく、
・その赤字が他にも影響してこないか
・他と矛盾していないか
などを確認するケースも多いです。
【例】(出典:Wikipedia「スヌーピー」_一部抜粋)
・「スイートピー」を「スヌーピー」に変更する赤字です。
一見すると何もおかしくないように思えます。
ですが、文の後方を見ると他にも「スイートピー」の単語が出てきます。
このような一つの文言の変更によって、他にも赤字を入れる必要が出てくることはよくあります。特定の文言を探すのであればソフトで検索することも可能です。
ただ、ソフトでは検索できないものも多く、そういうものは校正者の目で見つけるしかありません。
このような例は、校正の経験を積めばわかってくるというものでもなく、こういう事例があるということを知っていれば誰でもわかることです。数学の公式のようなものです。何回か練習すればコツがつかめてきます。
例題でポイント解説
例題で使用している素材は、InRed_3月号の特集記事『ユニクロで揃える 15000円コーデ』の誌面になります。
「InRed」2021年3月号(宝島社)
・問題1
▼ 次の赤字を見て、他に必要な赤字がないか考えてみてください。
(※問題形式にしていますが、答えだけ見て理解するのでも大丈夫です)
解説と解答
【1】
ライムグリーンの画像を、ラベンダーにサシカエる指示なので、メイン画像の位置にラベンダーが入ります。そのため(1)のラベンダーのサブ画像が不要になります。
そして、メイン画像の「ライムグリーン」がサブ画像の位置に入ります。
【2】
結果的に、「ライムグリーン」と「ラベンダー」の位置が入れ替わるということになります。
【3】
(2)にラベンダーのキャプションがあります。
(1)にライムグリーンの画像が来るので、(2)の「肌の透明感を引き立てるラベンダー」と不一致になります。そのため、このキャプションをライムグリーンのものに変更する必要があります。
【赤字例】
≪注意≫
赤字でなく鉛筆で疑問出しするほうが適切な場合もあります。現場の作業方針によります。
▼ ライムグリーンの画像を削除する場合
【赤字例】
ラベンダーの画像とキャプションを削除するだけでなく、赤字が1つ増えます。
ラベンダーが削除され、ベビーピンクが一つになるので「各」が不要になります。
・問題2
▼ 次の赤字を見て、他に必要な赤字がないか考えてみてください。
解答と解説
【1】
シャツの金額変更の赤字が、(1)と(2)の金額にも影響してきます。
【2】
(1)の3か所に、値下げしたシャツと同じ商品があるので、それらが「¥1,990 ⇒ ¥1,500」になります。
それに伴い、(2)の合計金額の3か所も変更する必要があります。
【赤字例】
・問題3
▼ 次の赤字を見て、他に必要な赤字がないか考えてみてください。
解答と解説
バッグなしの画像に差し替わるので、(1)のバッグの項目が不要になります。
それに伴い、(2)の合計金額も変更する必要があります。
また、(3)の箇所にバッグのキャプションがあるので削除する必要があります。
【赤字例】
[補足]
トルの指示を入れる場合は、取った分をどこで調整するかの指示を入れてあげると親切になります。
この例では、取った分を下へ移動させています。
体裁的な基準は、規定書や他のページなどを見て判断します。校正側で勝手な判断はできないので、基準が曖昧な場合は疑問出しで対処しておきます。
・問題4
▼ 次の赤字を見て、見落とされそうな箇所を考えてみてください。
解答と解説
【1】合番の入れ替え
【2】キャプションの入れ替え
【1】と【2】ともに、入れ替えの指示だけで通じる場合もありますが、
【1】は合番の文字が小さい、【2】は誌面下の離れた位置にあるため、修正モレが起こりやすいです。
仮に、【2】が修正されないままだと、画像とキャプションが矛盾してくるので致命的な間違いになります。
・問題5
▼ 次の赤字を見て、おかしな箇所がないか考えてみてください。
解答と解説
TOTAL金額の「¥12,960」に赤字を入れ忘れているように思えますが、赤字の合計金額が「¥15,070」となっています。特集テーマである『15000円コーデ』と矛盾してきます。赤字自体がおかしいということになります。
この場合は、担当者に直接報告することが賢明です。場合によっては、コーディネート商品を一から見直すということも考えられます。
おわりに
校正作業では、単に赤字が直っているかの確認だけでなく、その赤字から派生して何かおかしな点がないかを考えることも多いです。
こういうことは、経験を積み重ねて学ぶというよりも、普段から意識しておくことが重要です。
また、多くの間違いに触れることで、見る範囲や見る視点も変わってきます。それには、自分一人の努力だけでなく、勉強会などの場面で他の校正者の考え方・視点を学ぶことが大切になってきます。
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