
経験則からくる違和感
何となくの違和感。
注意していなくてもふと気づいてしまうことは、よくあると思います。
出版・印刷業界に身を置く方なら、
原稿や校正ゲラを見た瞬間、『何かおかしい…』と違和感を覚え、眉をひそめた…
という経験は一度や二度はあったはずです。
まず、違和感がおこり、よく見てみたらやっぱり違うな、という経験です。
おそらく、この違和感は、校正・校閲以外の職種、編集、デザイナー、DTPオペレータにも共通するのかもしれません。もしくは、それぞれの職種で独自の視点で気づく違和感があったりするのかもしれません。
視野を「全体」から「部分」へ
この違和感は、普段からページを俯瞰する感覚を持っておかないと養われてきません。
ポイントとしては、視野を「全体」から「部分」に狭めるといった感じです。
校正目線でいうと、
「ページ周り」
↓
「段落」
↓
「文字」
と移動していく感じです。
1.余白
余白としましたが、適切な距離感と言い換えたほうがいいかもしれません。
▼ ページ周り
通常の印刷物は、ページ周りに余白を持たせています。
この余白がちゃんと確保されていない場合、違和感を覚えます。
印刷物として、余白がないと非常に読みづらいです。逆に、余白がありすぎても読みづらくなります。
文字と仕上がり線との適切な距離感が大切です。
ただ、文字の場合は、デザインとして意図的に文字を誌面いっぱいに大きくし、あえて誌面内に収まらせないようにすることで、インパクトや迫力を狙っている場合もあります。
絶対に、余白がないとダメというわけでもないので注意しましょう。
▼ キャプション
画像などにつくキャプション(図版部分に付け加えられた説明文)の位置。
画像とキャップションが離れすぎていると、文字が誌面上に浮いているように感じ、すぐ違和感を覚えます。
▼ 行間/文字間
行間や文字間の詰まり過ぎ・開きすぎなどもすぐに分かります。
それらは、可読性を意識しているわけなので、
「見づらい=読みづらい」につながるので、すぐに気づくのも当然でしょう。
2.書体・級数
書体・級数は見慣れたら、誰もが一目瞭然です。
書体が変わるだけで、誌面のイメージがガラッと変わります。
真っ先に違和感を覚える人もいるかもしれません。
フォーマットが決まっているものなら、誌面で使用する書体や級数などはあらかじめ決められています。そのため、すぐに違いに気づくことも多いです。
ただ、雑誌やカタログなどは、読者を飽きさせないように、数年ごとにフォーマットをリニューアルしていくものです。リニューアルの都度、フォーマットを覚え直さなくてはいけませんので、その時は要注意です。
3.段落の一字下げ、末揃え
文頭が一字下げでないものもすぐに気づきます。
また、文末が揃っていないのも同様です。
(例)
一字下げのもの 一字下げでないもの
●〇〇〇〇〇〇〇〇 ●〇〇〇〇〇〇〇〇〇
〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇 〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇
〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇 〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇
文末が揃っているもの 文末が揃っていないもの
〇〇〇〇〇〇〇〇● 〇〇〇〇〇〇〇〇●
〇〇〇〇〇〇〇〇〇● 〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇●
〇〇〇〇〇〇〇〇〇● 〇〇〇〇〇〇〇〇〇●
最近では、一字下げにしていない段落も多く見られます。
一字下げは、あくまで形式的なものなので、下がっていなくても間違いではありません。
文末が揃っていないものは、文章の区切りが良い位置で、意図的に改行していることもあります。
文章の途中で改行されていて、文末が揃っていないものは、意図的でない恐れがあるため校正としては指摘しておいたほうがいいでしょう。
ただし、Web媒体などでは、この限りではありませんので、Web媒体の校正をメインにやられている方は、特に違和感が起きることもないかもしれません。
体裁の間違いを潰し、素読みへ
パッと見てわかるものなので、レイアウトや体裁的な間違いばかりですが、最初に分かりやすい間違いを潰しておくと、後で校正するのもラクです。
最初に体裁系の間違いを見つけておいてから、後で素読みに集中するみたいに、頭を切り替えて校正するという方も多いと思います。