校正ミスを減らすために vol.2[校正作業の数値化で学んだこと]

校正ミスを減らすために[校正作業の数値化で学んだこと]

過去に、校正・校閲の作業単価を出すため、校正作業の定量化に携わった経験があります。

定量化の過程には、まず
「校正の作業項目の洗い出し」
「どの作業にどれくらいの時間がかかっているか」
といったことが必要になります。

要は、校正の各作業にどれだけの時間がかかっているかを集計し、そこから単価を算出しようとしたわけです。

■ 定量化とは?
一般には質的にしか表せないと考えられている事物を、数量で表そうとすること
【出典:三省堂大辞林 第三版】

1:定量化の具体例から結果

1.校正の作業項目を洗い出し、分類していく

一見、簡単そうですが、何十人もいる校正者の各作業をピックアップして、まとめあげるのは大変な作業です。中には、消極的な方もいます。当時は、まとめる側ではありませんでしたが、大変な作業だったのは間違いないです。これだけも、2~3週間はかかっていたと思います。

2.分類された作業項目に対して時間を計測していく

ここからは、各校正者が作業項目ごとに校正にかかった時間を計測していきます。

まずは、校正するものの開始時刻と終了時刻を記入します。
10ページの校正物なら『10頁/10:00~12:00/120分』というように紙に記入してくやり方です。

・原稿との突き合わせの時間は何分
・素読みの時間は何分
ということだけでなく、校正作業にかかわる細かい点も計測します。

・画像を何点確認したか?
・別紙の原稿はどれぐらいあったか?
・原稿の赤字の多さは?
 などなど。

それぞれに対して、校正者が数えて記入していきます。
『画像確認:10点』
『別紙原稿:10枚』
『原稿の赤字量:大』
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項目は、全部で20~30ぐらいだったと思いますが、項目分けできないイレギュラーなものも多く、それらは別枠で記入していきます。初校のような原稿量が多く、確認項目もたくさんある場合は、作業項目や時間を記入するだけでも、校正側にとってはかなりの負担です。

当然、校正にかかる時間は、原稿の内容や原稿の赤字の量、校正者個人のスキルによってかなり大きな差が出てきます。また、オペレーターの修正精度によっても、赤字が入る量が違ってくるので、校正だけの時間を出したところでどうなのか……。

色々と未知数な要素はありましたが、それでも長期間集計していけばどこかに収束していったのかもしれません。

しばらく煩わしくも定量化の作業は続きましたが、十数人の校正者が紙に書いた時間を集計するわけなので、その作業は膨大になっていきます。

当初の目論見とは違い、集計する作業が追い付かず、大きな負担になるということで、この定量化作業自体は短期間で終了したわけです。

で、それまでの短期間のデータもとに、作業単価を算出したわけですが、当然ざっくりとしたものしかできません。明らかにおかしな作業単価になったりしたものもあります。結局は、微調整していきながら校正の単価表を作り上げていったという感じでした。

消化不良で色々と不満はありましたが、後から振り返ってみれば良かった点もあります。

2:定量化の副産物

1.作業分解ができたこと

校正の作業項目の洗い出しができたのは大きなメリットです。
当初は、校正業務は一連の作業の連続だと思っていたので分解なんかできないと思う人も多かったですが、なかば強制的に作業分解させられると、作業の見方が変わってきます。

「この仕事は分解できる」 or 「この仕事は分解できない」
という視点が生まれてきます。

また、分解できたとしても、あとで取りまとめる大変さがあるので、分解できるけど分解しないものもあります。

2.作業項目を全員で共有できること

作業の分解ができたことで、校正者間で作業項目が共有できます。それにより、言語化しやすくなり仕事のシェアがしやすくなります。「この部分だけ手伝ってほしい」とかがスムーズになります。

3.作業項目の細分化で、時間が読める

作業ごとの時間の計測により、自分がどの作業にどれだけ時間がかかっていたのか把握できるようになったことです。
それまでは、ひとつの校正物に対して漠然とした時間感覚でしたが、作業の流れに区切りが見えてきます。「この作業なら15分とか、ここまでなら30分でできます」ということが言えるようになってきます。

4.ミスの起きやすい時間が見えてきたということ。

就業時刻間近・終電間近になると、細かなミスが集中してくることです。(これは定量化作業の前からやっていたことですが)作業の開始時間と終了時間を記入していたために見えてきたことです。

終業時刻が見えてくると気が緩んでしまうのか、時間内に終わらせようと焦ってしまうのか、当人はそう思っていなくても、仕事に少なからず影響してきます。

1~4のことは、何となく誰でも頭の中ではわかっていると思います。ですが、実際に数字で示されるのと頭でわかっているのとでは、響く度合いが違ってきます。

3:品質のムラをなくす

校正だけに限らず、定量化することで、新しい発見や今後の改善点が見えてくる事例はたくさんあります。

残念ながら、校正の定量化プロジェクト自体はよくない結果で終わりましたが、定量化自体は正しい運用をすればいい結果をもたらしてくれるものです。頭の中でわかっているよりも、数字で示されるほうが説得力が増し、改善につなげる動機づけにもなります。

今、自分の業務を漠然と捉えている(=他人に業務内容を説明できない)なら、作業分解していくと見えてくることは多いかもしれません。

ミスが多くなる時間や場面を発見できれば、それに合わせた対処をすることで、自分自身の品質のムラをなくすことができます。また、自分が思っている以上に時間がかかっている作業、苦手な作業などもハッキリと見える可能性もあります。

漠然としたものに手探り状態で対策を立てるより、ピンポイントで対処したほうが効果的です。