校正のポイントと考え方

校正・校閲のスキルアップ[勉強会でやり方とコツを学ぶ]

校正・校閲のスキルアップには色々な方法があります。

・取ったメモを振り返る
・他の校正者の赤字・疑問出しを見る
・セミナーに行く
・勉強会をする(社内・社外) etc.


どれも効果的な方法ではありますが、
受け手への一方向だけの伝達になる恐れがあるため、場合によっては独りよがりになる可能性があります。

偏ったスキル形成に陥らないためにも、皆が能動的に参加できるワークショップのような勉強会があると効果的です。既に社内でこのような形式で勉強会を実施しているところもあると思います。

教える・教わるというものではなく、
教え合うといった形です。


ワークショップのような勉強会と言っても特に難しいものではありません。何か校正をする材料(ゲラでも書籍でも)を用意し、それを皆で見て(プロジェクターに映したり配布したり)、どういう間違いが起こるかを考えていくといった流れで進めます。


期待できる効果

1.どんな間違いが起こりえるか予測する力を鍛えられる
これは過去の経験から活かされることが多いので、普段からメモを取って復習しておくことが大切です。

2.他の校正者の意見を吸収できる
他の校正者の赤字・疑問出しを見る効果と同等です。他の校正者の意見を聞いて『こういう間違いもあるのか』『そういうポイントで見ているのか』などが勉強できます。


実際にやってみると、誰か一人が話すとそれがきっかけとなって周りからも意見が出てくるものです。よくある間違いだけでなく、校正するポイントや関連する情報も出てきます。



実際に、次の誌面から校正でよく起こる間違いやポイントを見ていきたいと思います。
 (本当は皆でやるのが効果的ですが、自分一人で考えていきます)

校正のポイントと考え方
【出典:『InRed』2021年4月号 P.53(宝島社)> 公式サイト

ポイント:氏名って何と確認する?

氏名の確認

校正のポイントと考え方

氏名は何と確認する?

著名な方なら公式のHPで確認することできますが、
そうでない方は原稿(確認元)が必要です。

氏名はメールの署名覧などにも記載されていますが、名前に旧字体の漢字が使われていると簡略化された新字体で入ってることもあります。


例えば、次のようなものです。

校正のポイントと考え方

新字体が間違いということではありませんが、氏名を確認する原稿として一番適切なものは「名刺」です。


漢字だけでなくアルファベット表記も要注意です。基本はパスポートなどで使われるヘボン式ローマ字に当てはめる形ですが、特殊な表記の方もいます。氏名の読みとローマ字の読みが合っているからといって正しいとは限りません。

「校正」をヘボン式で表すなら「kosei」になりますが、「kousei」と表記されていることもあります。

どちらの表記もよく見られます。パスポートなどとは違い、名刺では氏名の英語表記にある程度個人の融通が利きます。使用している本人のこだわりもあります。何が正しいか校正側では判断が付きません。

そのため、氏名は名刺で確認するのが適切です。


※名刺を含め氏名等が記載された原稿は、個人情報になりうるので慎重に取り扱う必要があります。


ヘボン式ローマ字とは?

日本語表記をラテン文字表記に転写する際の規則、いわゆるローマ字の複数ある表記法のうち、日本国内および国外で最も広く利用されている方式である。

【出典:Wikipedia_ヘボン式ローマ字

ポイント2:必ず入る注記を考える

必ず入る注記

校正のポイントと考え方

校正・校閲のスキルアップと勉強会

必ず入る注記って?

紹介している商品情報以外のものが画像内に映り込んでいる場合は、上記赤枠のように「※○○以外は付録に含まれません」という注記が入ります。これは読者に誤解を与えないように必ず入るものです。

このような注記は、InRedのようなファッション雑誌だけでなく、すべての媒体の商品画像に共通して入るものです。

「※バッグ以外は付録に含まれません」以外にも、
「※○○はオプションです」や、飲食店のメニューで「※画像は○人前です」などはよく見られるものです。

モデルさんのコーディネート画像などでは、
「※○○はスタイリストの私物です」という注記も見られます。

表記は様々ですが、何かとセットになって入る文は意外と多いです。


・キャラクターグッズやブランド品などあれば、コピーライトがセットで入ることが多いです。

校正・校閲のスキルアップと勉強会

・電話番号があれば、受付時間や受付期間なども必要になってきます。

校正のポイントと考え方

・飲食店などの店舗の営業時間が記載されていたら、必ず定休日もセットで入ってきます。

媒体によっては、
・この文が入ったら、この注記を載せる
・この数値を超えたら、この注記が必要
 などの決まりごとがあったりもします。

必ず入る注記はパターン化されたものばかりです。経験よりも知識です。慣れると条件反射のように確認するクセがついてきます。一度、自分の身近なものをまとめておくと便利です。

ポイント3:覚えるべき間違い、覚えなくていい間違い

間違いの可能性

 校正・校閲のスキルアップと勉強会

校正・校閲では起こりうる間違いは無数にあるわけですが、闇雲に何でも覚える必要もなく、覚えるべき間違いと覚えなくてもいい間違いがあります。

たまに、校閲のテスト問題で、この問題意味あるのかな?というものに出会うことがあります。

デジタル校正ソフトを使っていれば、難解な漢字であればあるほど間違いのパターンが推測しやすいのでソフトで検索しやすくなります。四文字熟語などもそうです。

そのようなものを必死に覚えたしてもスキルアップに直結するかは正直なところ疑問です。


問題を通して見ていきたいと思います。

Q1.

斜め掛けも手さげもOK
持ち肩を変えられて便利

「持ち方」を「持ち肩」に変えた問題です。こういう問題は意味がなく実務に役立ちません。
テキストの入力変換では「もちかた」を変換しても「持ち肩」にはなりません。意図的に打ち間違えようとしないとならない間違いです。

原稿の手書きの指示でも「持ち方」を「持ち肩」に書き間違える可能性は非常に低いです。この手のものは発生率が限りなく低いので練習問題としては相応しくない(=覚えなくていい)です。


Q2.
斜め掛けも手下げもOK
持ち方を変えられて便利

「手下げ」ではなく「手提げ」が正しいものになります。
これも、テキストの入力変換で「てさげ」を変換して「手下げ」にはなりません。意図的に打たない限りはこのような間違いになりません。

ただ、手書きで「てさげ」の赤字を入れる場合に「手下げ」と間違う可能性があります。「下げる」という行為から「下」の字が連想されやすいので。

そのため、完全にテキストデータで原稿を支給されるなら覚える優先度は低く、手書きの原稿指示が多いなら、「手下げバッグ」となる可能性もあるので覚えておいたほうがよいです。


Q3.
斜め掛けも手さげもOK
持ち方を代えられて便利

「変えられて」が「代えられて」になっています。どちらも頻繁に使われるもので、入力の際にどちらに変換されてもおかしくありません。

変換ミスが起こりやすく、かつ手書きでも間違う可能性があります。校正でも前後の文から使い分けを判断しなくてはいけません。このようなものが問題としては相応しい(=覚える必要がある)ものです。

決して、難解な漢字や重箱の隅をつつくような語句の使い分けが、校正・校閲において必要というわけではありません。

ポイント4:よく出てくる英単語を考える

英単語への対応

校正・校閲のスキルアップと勉強会

「CLOSE-UP」

英単語はどんな媒体にでも入ってきます。長文だと翻訳会社に依頼するなどで対応しますが、単語程度なら辞書でスペルチェックすればOKということも多いと思います。


基本的に、幅広い読書層をターゲットとするなら一般的な英単語が使用されます。難しい英単語は使用されません。

ただ、難しくない英単語だからといって油断はできません。皆が間違っているはずがないと思い込んで見てしまうのでスペルミスがあっても、うっかり見落としてしまうことがあります。


英単語は媒体を限定すれば、出現する語も予測できるのでまとめて覚えておくと効果的です。

例であげた「CLOSE-UP」はハイフンで結ばれた複合語です。
複合語に限定するなら、InRedのようなファッション雑誌では次のような単語が出てくる可能性が高いです。

・brand-new  … 真新しい、新品の、手に入れたばかりの
・up-to-date  … 最新(式)の・現代的な・先端的な
・out-of-date … 時代遅れで・旧式で

[単語の意味はWeblio英和辞典を参照]

ポイント5:レイアウト変更に伴う間違い

引き出し線

校正・校閲のスキルアップと勉強会

引出し線は部分拡大や、特定の場所を説明するのに頻繁に使われます。

この引出し線も媒体問わずよく見られます。レイアウト変更があったときなど、差す位置がズレてしまうことがよく起こります。

素読みをメインにしている校正者は、大きな修正があった場合に文字ばかりに目が行ってしまうため、引き出し線のズレなどに気付けないことが多いように覆えます。

たかが引出し線と思うかもしれませんが、取り扱い説明書や図面などで、引出し線の差す位置が間違っていると大きなクレームにつながります。

ポイント6:右綴じ・左綴じって何?

 右綴じと左綴じ

校正のポイントと考え方


読者の目線を考える

この記事を見ている方の目線は、基本は縦方向+右方向だと思います。

校正・校閲のスキルアップと勉強会


そのため、この「バッグからポシェットへのたたみ方」の説明を見た瞬間、
目線の方向が逆になるので、ちょっと読みづらいと感じたかもしれません。

校正・校閲のスキルアップと勉強会


でも、実際のInRedの誌面ではこの向きが見やすいものとなります。
右から左方向にしているのには、ちゃんと理由があります。

これには綴じ方が関係してきます。


右綴じ・左綴じ

1.表紙を上にして、右側で綴じられているもの(右側に背表紙があるもの)は、一般的に縦書き用とされています。

 校正・校閲のスキルアップと勉強会 縦書き 


2.逆に、左側で綴じられているもの(左側に背表紙があるもの)は、横書きに使用されます。

 校正・校閲のスキルアップと勉強会 横書き 


3.縦書き・横書きが誌面内に混在するものは右綴じが多いです。

 校正・校閲のスキルアップと勉強会 縦横混在 

InRedは右綴じ(上記の)なので、読者の目線は右から左方向に流れます。

校正・校閲のスキルアップと勉強会
これを考えると、「バッグからポシェットへのたたみ方」の説明が、右から左方向になっているのも納得いくと思います。


左綴じなら左から右方向に目線が行きます。

校正・校閲のスキルアップと勉強会
仮に、「バッグからポシェットへのたたみ方」の説明が、左綴じに掲載するものなら逆方向にしていた可能性が高いです。


InRedは、他のページもこの基準で統一されています。

別のページで、日焼け止めの商品が紹介されています。
誌面では、3つの商品の右肩に1・2・3の合番が振られています。

下の画像では1と3の数字は隠してありますが、
数字が、右から「1→2→3」なのか?
    左から「1→2→3」なのか?

どっちになるか読者の目線を考えるとわかると思います。

校正のポイントと考え方


答え
校正のポイントと考え方 


右綴じ・左綴じは、紙媒体をメインにしている校正者でも意外と知らない方が多いです。自分が携わる媒体の仕様ぐらいは、ある程度知っておいたほうが校正時に役立つこともあります。

誌面のサイズや全体のページ数は必須ですが、右綴じ・左綴じ、用途、読者層(誰向けなのか)
などは、最低限知っておきたい項目です。

読者層は特に重要で、一般の読者層に向けのものに専門用語などが使われていたら、表現を変えたり補足の注記を入れたりする必要が出てきます。また、シニア向けのものなら文字サイズが小さくなりすぎないように注意しないといけません。


さらに、こういう一連の手順を説明しているものは、単純に画像とその下のキャプションが対応しているかの確認だけでなく、その通りの手順で完成できるかも考える必要があります。

校正のポイントと考え方

他にも、料理のレシピや組立図などでも完成形をイメージしておかないといけません。記載されている手順と材料を使って、ちゃんと完成できるのかを考えるのも校正の見るべきポイントです。

ポイント7:0120 = フリーダイヤル?

フリーダイヤルのロゴ

校正・校閲のスキルアップと勉強会

フリーダイヤルは、NTTコミュニケーションズが提供する「0120」のことです。
「0120」から始まるものが、すべてフリーダイヤルというわけではありません。

そのため、上記のフリーダイヤルのロゴは、NTTコミュニケーションズが提供する「0120」にしか使用できません。公式サイト


フリーダイヤル以外で有名なものに、フリーコールがあります。
これも0120から始まりますが、KDDIが提供するものです。
次のフリーコールのマークが使用されます。

校正・校閲のスキルアップと勉強会
公式サイト


仮に、原稿で「0120-123-4567」と電話番号の赤字が入ってきて、フリーダイヤルのロゴが勝手に入ってきたら、それが本当に正しいかどうか校正者としては事実確認すべきです。

ただ、ロゴも電話番号も支給された原稿通りであるなら特にそのままで問題ないと思います。

おわりに

一つの誌面から一人でポイントを考えていきましたが、周りの皆と話あえばもっと色々な視点から意見が出てくるはずです。

単にこういう間違いがあるということだけでなく、校正で見るポイントや考え方も一緒に話し合えれば、いい勉強会になるはずです。

経験の浅い校正者も、「こういうときはどうするの?」「この間違いってなんで起こるの?」など疑問がわいてくると思うので、質問するいい機会になります。


この手の勉強会は「毎月一回やります!」と宣言すると、義務的になって形骸化されていくので目に見えています。繁忙期は避けるようにし、皆の自発性を大切にすることです。

2~3カ月に一度ぐらいがちょうどいいと思います。それまでは各自で勉強しておくといった感じです。

気持ち的には茶話会程度で取り組んだほうが意見も活発になりやすいです。あまり活発になりすぎるも困るので、そこはベテラン校正者が、ファシリテーター的な役割(まとめ・進行役)になるとスムーズに行きます。


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