校正での見落としで落ち込む人

過剰品質が低予算化と価値低下を招く

過剰〇〇といえば、過剰供給、過剰包装のような言葉が有名ですが、これらの言葉は良くない例として使われることが多いです。

過剰な行為や状態が、自分にとって相手にとって、時には両者にとっても、良からぬ影響を及ぼすということです。

校正の仕事でも、この過剰○○は見れます。過剰品質というものです。

これは、校正者の行き過ぎた品質へのこだわりが、良からぬ結果を招くというものです。言い換えると、予算を度外視して、良かれと思ってやった校正が、知らぬ間に自分の首を絞めているかもしれないということです。

ボタンの掛け違いが起きてしまう例

顧客とユーザの関係を『金の斧、銀の斧』の童話で例えられることはよくあります。

この童話の教訓を例えとしているわけでなく、この童話のファクトだけを抜き出して例えとしています。


木こり顧客川の神様ユーザとした設定のお話です。

木こりは、川の神様に、自分が落とした鉄の斧を返して欲しいとお願いします。

しかし、川の神様は、木こりが要求する鉄の斧より、銀の斧・金の斧の方が良いものと思い、木こりに勧めます。

まず、ここでギャップが生じています。川の神様は、鉄の斧より、銀の斧・金の斧の方が、木こりにとって良いものだと思い込んでいます。

何が欲しいかはユーザが決めます。ここでは、ユーザのインサイトは関係ありません。今、木こりが必要としているものは、仕事で必要な鉄の斧なわけです。高価な斧でなく、今仕事で使える斧です。

この例では、顧客(川の神様)は、ユーザ(木こり)の要望を汲み取っていないばかりか、自分が良かれと思った銀の斧・金の斧を勧めているわけです。これでは、ボタンの掛け違いが発生してしまいます。

良かれと思ってやったことが常に相手に受け入れられるわけではありません。しかも、それで相手が喜んでくれると思うのは大きな誤解です。

時には仇となることがあります。特に、金銭が発生するのであれば揉めごとの原因になります。

適正価格を知る

校正者でも、予算や時間を度外視して品質にこだわるとこのようになります。品質にこだわること自体は大切ですが、予算や時間を度外視しての品質へのこだわりは過剰品質に陥ってしまいます。

ここでの過剰品質は、オーダーされた以上に良かれと思って『ここも違う』『あそこも違う』。だから、校正しておこうということです。

この場合、あらかじめ予算が決まっているものでしたら、当然割に合わないことになってきます。自分で自分の首を絞める原因です。

仮に、時間給で校正費を請求するなら、発注側の想定時間と校正者側の実働時間とでギャップが生じます。

こうならないため、校正者は、事前にどこまでを校正するかを決めておく必要があります。

ですが、校正側に校正作業の価格表が無い場合が多く、校正価格がグレーゾーンになっている場合があります。


【価格表】


※画像は粗くしています。

このような校正の価格表により、原稿状態や校正内容に応じて、細かく1ページ当たりの単価を設定しておきます。要は、自分のスキルの適正な売値です。

この価格表を提示することで、発注側にも値ごろ感が伝わり、金額のブレも生じにくくボタンの掛け違いを無くすことができます。

フリーランスの方は、自身が営業であり校正者であるため、予算と時間の感覚をはっきり持っている人が多いです。一方、月給/時給で働く校正者は、この辺りの感覚がやや低い傾向にあります。

ただ、時間や予算がかかるからといって作業を切り詰めるという方向に行くのではなく、まずは労働の対価としてちゃんと適正価格を請求しましょう。自分のスキルの安売りはやめておきましょう。

過剰品質が生む負のスパイラル

過剰品質になっても許される例外として、
・校正の仕事を始めたばかりで経験を積むことを目的とする場合、
・仕事の広がりを求めている場合、
など、将来的な戦略の一つとしてはありかもしれません。

ただ、低価格(割に合わない)のままずっと仕事が繰り返されると不幸のはじまりです。

仕事を発注する側にとっては、低価格である程度の品質が当たり前となってきます。これは校正者自身だけでなく、発注側にとっても不幸なことです。発注側は、校正はこの予算でこれだけ見てくれるものだと誤解してしまうからです。誰も得しない状況が生まれます。

負のスパイラルから脱却

最近では、人材不足により、値段交渉をしてくる会社は多いです。数年前に比べれば派遣費用も上がっているので、普通の会社ならその辺りの事情も知っているはずです。

決して値上げ交渉は珍しいことではありません。会社としても、値段交渉を持ちかけられたとしても、ついに来たという感じで構えているところがあります。悪く言えば、言われるまで待っておこうと静観している状況です。

ずっと一緒に仕事をしていて、発注側の担当者と長い付き合いであれば、何となくの関係性でいつも見積もりを出すということはないと思います。お互いに、校正費の相場がわかっているなら問題ないです。ただ、発注側の担当者が変わったときは、書面で金額を明確にしておく方がいいです。

また、当初受けたオーダーよりも想定外に時間がかかりそうな場合や、校正しなくてもよいと言われた箇所で、『ここも違う』『あそこも違う』という場合にも注意が必要です。

このときの最善手としては、気づいた段階で、発注側に「この辺りも間違っていますが、校正した方がいいですか?」と先に聞くことです。逆に、「この辺りも間違っていたので校正しておきました」では、それがスタンダードになってしまいます。

「この辺りも間違っていますが、校正した方がいいですか?」と尋ねると、発注側が「ではお願いします」という確率は、非常に高いです。

そこで、予算交渉が出来ればいいですが、出来ない(やりづらい)方は、お金が掛かりますと直接的に言わなくても、「その分時間が掛かりますけど大丈夫ですか?」など表現を変えて、『あなたの想定したオーダーよりも作業量が多いということ』を暗にわからせるように上手く伝えましょう。

おわりに

校正者なら誰でも、自分の納得が行くまで時間をかけてじっくり校正したいのが本音だと思います。正直、お金の話を言いづらいことはよくあります。ですが、あとあとのマイナス要因を取り除くために、予算交渉はちゃんとやっておいた方がよいでしょう。自分のためだけでなく、相手にとってもプラスになることです。

【まとめ】
・自分のスキルは安売りしない
・労働の対価として適正価格をいただく
・予算交渉はビジネスでは当たり前のこと