校正者不足を解消するために[将来に向けた校正者の人員構成]

information

校正者不足を解消するために[将来に向けた校正者の人員構成]

現在、社内の校正・校閲メンバーの構成で悩んでいる方、将来の人員確保が不安という方は多いと思います。既に人材を探しているが、理想の人材になかなか出会えないということも多いと思います。

これからも続く人材不足の中で、優秀な人材を集められる可能性はほぼ運でしかありません。これは、大手でも中小でも変わりありません。運頼みにするぐらいなら、いっそ育成したほうが確実ですが、それも時間を要するのがネックです。

では校正をデジタル化しようと思っても、それほど校正の領域はデジタル化が進んでいません。AIでの校正も期待できる分野ではありますが、まだまだ人に置き換われるほどのものは存在しません。

そのため理想の人材を探し求め四苦八苦するよりも、個人の力をチームでカバーできるような組織づくりに切り替えたほうが問題解決には近道です。

まずは、今集められる人材でベストなメンバー構成を考えてみることです。個人のスキルに頼るよりもチームで互いのスキルを補うやり方のほうが、将来にわたって持続できるチーム運営が可能になります。

校正者のスキル分け[校正スキルか校閲スキルの見極め

ここで紹介するメンバー構成の例は、自社で扱う媒体の性質が、校正系もしくは校閲系かどちらかに著しく偏っている場合ではなく、校正系・校閲系の仕事が半々ぐらいの割合の場合を想定しています。

校正の実務経験がない方には、校正者と聞けば校正も校閲も両方できるように思えますが、大抵の校正者はどちらかにスキルが偏っている傾向にあります。どちらが得意なのかは、校正者本人に直接聞いてみるとわかるはずです。

どちらもやっているから両方のスキルが高いとは限りません。野球でたとえると攻撃と守備みたいな感じです。かといって、校正と校閲のどちらかのスキルの高い人が、もう一方のスキルが極端に低いということはありません。

そのため校正の実務経験がない方から見たら、両方できているように見えるだけです。(※両方ともスキルの高い方は稀にですが存在します)

1. 校正メンバーを5名と想定した場合

わかりやすくチームメンバーの人数は切りのいい5名と想定しています。

年間を通して、基本は社内の校正部門で様々な校正・校閲案件を捌いていくという前提です。ただ仕事がオーバーフローしそうな繁忙期などには、外部の校正専門会社に仕事を依頼します。

5名の雇用形態は特にこだわっていません。社員やアルバイト、フリーランスでも構いません。ただ将来にわたって雇用を安定化したいなら、社員が望ましいです。

以下、校正系・校閲系とスキル分けしていますが、前述したようにどちらかのスキルがより高いかということです。校正系だから校閲ができないということではありません。逆も同様です。経験年数は目安になります。

メンバー構成を5名と想定した場合

 1人目:校正系    
 → 窓口対応・PCスキル有り・実務少し:10年以上

 2人目:校閲系    
 → 校閲実務のメイン担当:5年以上

 3人目:校正系    
 → 校正実務のメイン担当:5年以上

 4人目:校閲校正系 
 → 2人目・3人目のサブ的ポジション:3年以上

 5人目:校正系    
 → 校正実務(新人):半年以上

2. 各校正者の役割

それぞれの校正者の役割

1人目:校正(窓口対応・PCスキル有り・実務少し)

1人目は、校正案件が来たら内容を理解して2~5人目に流す役割です。時には、自分も実務に加わるため実務少しとしています。

校閲系でなく校正系としているのは、窓口対応・各物件の割り振り・PC業務と並行して、校閲業務をするのは至難の業だからです。これらの業務をやりつつ校閲業務ができる人はまず探してもいません。

この1人目の役割を編集者や進行管理がやることもありますが、できれば校正の実務経験者に任せたほうがよいでしょう。このポジションが一番重要なためです。次のような方には不向きな役割といえます。

  • 校正・校閲の実務経験が少ない
  • PCスキルがない
  • 言われた通りに何でもやるタイプ

他にも、校正の立場から効率化を提案できる・効率化できる術を知っている人物が望ましいです。たとえば、次のような提案です。

  • このような原稿の作り方にしてもらえれば、校正の時間を短縮できる
  • この段階で校正を入れたほうが、後工程の効率化につながる

スケジュールや作業内容、全体の段取りを把握して効率化を考えることができる人物が最適です。

校正業務はアナログな部分がまだまだ多いため、データを加工したり原稿作成の仕方を少し工夫したりするだけで、グッと時間が削減でき品質を上げることができます。もちろん、校正だけの効率化を目指していては意味がないので他部署との連携は必須です。

窓口対応者が何でも仕事を受け入れていると、いつかオーバーフローするのは目に見えています。仕事の入口でどれだけ効率化できるか(してもらえるか)が肝心です。それができないと校正者の負担は増すばかりです。

PCスキルが必要なのは、データの段階で見つけられる間違いを潰しておくためです。現在では、わざわざ人の目で探すより、事前にデータ上で間違いを探すほうが効率のいい場面も多いからです。

2人目 校閲(校閲系の物件をメイン)
3人目 校正(校正系の物件をメイン)

2人目と3人目の役割は明確です。その系統の物件が来たらメインで担当するということです。

4人目:校閲校正(2人目・3人目のサブ的ポジション)

2人目には及ばないが校閲が得意な人が望ましいです。ここが校正系だと、2人目の校閲系をサポートできる人がいなくなってしまいます。※3人目のサポート役は、1人目がやります。

5人目:校正(校正実務(新人でも可))

将来を見据えての人材です。いずれは4人目のポジションになれるように育成します。

3. 校正メンバーを4名~1名と想定した場合

校正者を4人とするなら

4人目を削ります。

1人目:校正系    窓口対応・PCスキル・実務少し
2人目:校閲系    校閲実務のメイン担当
3人目:校正系    校正実務のメイン担当
4人目:校閲・校正系 2人目・3人目のサブ的ポジション
人目:校正系    校正実務(新人)

※5人目を削ってしまうと将来的な人材育成が困難になります。現時点でのスキルや経験値で人材を採用していると、将来的な人員補充が難しくなります。

校正者を3人とするなら

3人目・4人目を削ります。

1人目:校正系    窓口対応・PCスキル・実務少し
2人目:校閲系    校閲実務のメイン担当
3人目:校正系    校正実務のメイン担当
4人目:校閲・校正系 2人目・3人目のサブ的ポジション
人目:校正系    校正実務(新人)

校正者を2人とするなら

3人目~5人目を削ります。

1人目:校正系    窓口対応・PCスキル・実務少し
2人目:校閲系    校閲実務のメイン担当

3人目:校正系    校正実務のメイン担当
4人目:校閲・校正系 2人目・3人目のサブ的ポジション
5人目:校正系    校正実務(新人)

※社内に校正者が2人でいいというのなら、新人育成まで考えると誰かの負荷が増すばかりなので、5人目を削らざるをえません。繁忙期などは、外部の校正会社か派遣社員などに頼るのが得策です。

校正者を1人とするなら

社内に校正者が1人しかいないなら、校正の実務者は基本社内に必要ないでしょう。1人目の役割としては、実務をこなすよりも外部の校正会社に仕事を振るコントロール役に徹したほうがうまくいくはずです。

1人目:校正系    窓口対応・PCスキル・実務少し
2人目:校閲系    校閲実務のメイン担当
3人目:校正系    校正実務のメイン担当
4人目:校閲・校正系 2人目・3人目のサブ的ポジション
5人目:校正系    校正実務(新人)

校正の仕事量が安定しているなら1人目に実務を任せても大丈夫ですが、仕事量に波があるなら1人目にかかるプレッシャーは相当なものになるので、実務を任せるのは極力避けたほうがいいでしょう。

【関連記事】

4. 校閲スキルの人材が少ない理由

校閲系スキルの人材が少ないのは、校閲の仕事は外部に振ることが容易にできるからです。

校正作業は、原稿や別紙資料、ゲラを送ったり、カラーコピーやスキャンを取る必要があったり、外注するのにも結構手間がかかることがあります。

一方、校閲はゲラのPDFさえあれば、全国どこへでも依頼することが可能です。社内に人材を多く抱えておく必要がありません。

※定期的に発生する校閲の仕事は、外部の校正会社もしくはフリーランスの方に業務委託する仕組みにしたほうが、社内の人員のスリム化につながります。校閲の仕事をネット経由で依頼したい場合は、以下のクラウドソーシングが利用できます。

【関連記事】

おわりに

人材の募集を考えるとき、誰もが何でもできる優秀な人材を望むのが当然です。ですが、現実問題それは難しいところです。今後は、校正・校閲のやり方や業務範囲も大きく変化していく可能性があります。適切な人材を採用するのもこれからはもっと難しくなってくるはずです。

優秀な個人の集まりで品質を維持していると、欠員ができたときにその穴を埋めるのは困難になってくるでしょう。その状態では、誰かに皺寄せがいき、その誰かが疲弊していくという負のスパイラルに陥ることが考えられます。

そのため人員構成は互いを補えあえるチームメンバーを見据えたほうが、将来にわたって持続可能でフレキシブルな人材構成を目指すことができるはずです。