「身につける」の漢字は「付ける?」「着ける?」
「身につける」を漢字で表記する場合、「身に付ける」あるいは「身に着ける」と表記できますが、使い分けの基準はあるのでしょうか。この記事では、これらの表記の使い分けについて、国語辞典等を参照しながら解説します。
[記事作成にあたっては、以下の書籍・辞書・サイトを参考にしています]
・『日本国語大辞典』 ・『デジタル大辞泉』
・『新明解国語辞典』 ・『広辞苑』
・『記者ハンドブック 第14版』(共同通信社)
・「異字同訓」の漢字の使い分け例(報告)
・毎日ことばplus
「身につける」の漢字表記
まず、「身につける」という表現には、大きく分けて次の2つの意味があります。
① 着たり、体につけて持ったりする
② 知識や技術などを自分のものにする
次に、これらの意味の違いと漢字表記との関係を見ていきましょう。
『広辞苑』『日本国語大辞典』『デジタル大辞泉』は、いずれも見出し語として「身に付ける」の表記を採用しています。上記の① ②のどちらの意味であっても「付ける」と表記するという立場です。『新明解国語辞典』では、見出し語は同じく「身に付ける」となっていますが、①の意味の場合には「『着ける』とも書く」とされています。
上記をまとめると次のようになります。
①「着たり、体につけて持ったりする」ことを意味する「身につける」の漢字は?
→「身に付ける」:『広辞苑』『日本国語大辞典』『デジタル大辞泉』『新明解国語辞典』
→「身に着ける」:『記者ハンドブック 第14版』「『異字同訓』~」(『新明解国語辞典』)
②「知識や技術などを自分のものにする」ことを意味する「身につける」の漢字は?
→「身に付ける」:『広辞苑』『日本国語大辞典』『デジタル大辞泉』『新明解国語辞典』『記者ハンドブック 第14版』「『異字同訓』~」
→「身に着ける」:(「『異字同訓』~」)
特に②の意味については「付ける」とされる傾向がありますが、解釈が割れており、絶対的な基準はないことがわかります。
おわりに
以上、「身に付ける」と「身に着ける」の使い分けについて、国語辞典等での扱われ方を見てきました。
なお、判断に迷う場合には、無理に漢字を使わずひらがなで「身につける」とすることも可能です。毎日新聞の校閲センターが運営するサイト「毎日ことばplus」では、「知識を身に『つける』」をどのように表記するかのアンケート結果が示されています。
それによると、「付ける」「着ける」「つける」の3択でアンケートを取ったところ、最多は「つける」で64.2パーセント、次いで「付ける」が26.5パーセント、「着ける」は9.3パーセントだったとのことです。この結果を見ても、ひらがな表記は広く受け入れられやすいと考えられます。「毎日ことばplus」でも「平仮名書きというのは合理的な選択肢と言えるでしょう」と結論づけられています。