「窺う」と「伺う」の漢字の使い分け[例文解説]

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「窺う」と「伺う」の漢字の使い分け[例文解説]

「うかがう」という語は、漢字では「窺う」または「伺う」と表記されます。この記事では、これらの表記の使い分けについて例文を交えて説明します。

[記事作成にあたっては、以下の書籍・辞書・サイトを参考にしています]

 ・漢字の使い分け ときあかし辞典_研究社
 ・記者ハンドブック(第14版)_共同通信社

窺う・伺うの使い分けの基準

「窺う」「伺う」の使い分けの原則としては、次の2点を押さえておきましょう。

① こっそり見る、じっと観察する場合 =「窺う」
② 話を聞く、訪問する場合 =「伺う」

」という字はあなかんむりの漢字であることから、「穴から中の様子を覗いて見る」、つまり「こっそり見る」と考えると覚えやすいです。

伺う」は、「聞く」「訪問する」といった語の謙譲語です。目上の人の様子を「うかがい見る」ことから、その動作の相手を敬う謙譲語となったとされます(小学館『デジタル大辞泉』より)

窺う・伺うの使い分けの問題①

前述の点を踏まえて、以下の例文中の「うかがう」を漢字で表記する場合、それぞれ「窺う」「伺う」のどちらが適切か考えてみてください。

Q
1. ご意見をうかがいたい
2. 部屋の中の様子をうかがう
3. 相手の顔色をうかがう
4.
挨拶にうかがう
5.
お名前をうかがってもよろしいでしょうか。
6. 複雑な事情があることがうかがわれる
7. 社長を怒らせてしまったかもしれないので、そっと機嫌をうかがう

A
例文の1つ目は「意見を聞く」という意味なので、「伺う」と表記します。

ご意見をいたい

2つ目の例文は「部屋の中の様子をこっそり見る」という意味なので、「窺う」を使用します。

部屋の中の様子を

3つ目の例文は、「相手の顔色をじっと観察する」と読み替えられるので、「窺う」とするのがよいでしょう。

相手の顔色を

4つ目の文中の「うかがう」は「訪問する」という意味で使われているので、「伺う」が適切です。

挨拶に

5つ目の例文の「うかがう」は「聞く」の意なので、1つ目の文と同様に「伺う」とします。

お名前をってもよろしいでしょうか。

6つ目の例文のように「推し量る、察する」という意味合いを表す「うかがう」は、「窺う」と表記します。「うかがわれる」「うかがえる」の形で使われることが多い用法です。

複雑な事情があることがわれる

7つ目の文の「うかがう」については、文脈を考慮する必要があります。この例文の場合は、社長が怒っていないかどうか「こっそり観察する」という文脈なので、「窺う」が適切です。

社長を怒らせてしまったかもしれないので、そっと機嫌を

窺う・伺うの使い分けの問題②

続いて、以下の例文についても同様に、それぞれ「窺う」「伺う」のどちらが適切か考えてみましょう。

Q.
1. チャンスをうかがう
2.
明日の午後うかがいます
3.
近くを通りかかったのでうかがいました
4.
表情から決意のほどがうかがえる
5.
今週はお忙しいとうかがっております。
6.
事情に通じた人から、内部の状況をうかがう

A
1つ目
の例文の「うかがう」は「狙う、待ち受ける」という意味で使われています。「じっと観察してタイミングを計る」と考えると、「窺う」とするのが適切だと判断できるでしょう。

チャンスを

2つ目3つ目の例文はいずれも「訪問する」意なので、「伺う」とします。

明日の午後います
近くを通りかかったのでいました

4つ目の文中の「うかがう」は「うかがえる」の形で使われており、「推し量る、察する」の意味を表します。表記は「窺う」とするのがよいでしょう。

表情から決意のほどがえる

5つ目の例文の「うかがう」は「聞く」の謙譲語として使われているので、「伺う」とします。

今週はお忙しいとっております。

6つ目は、文脈に注意が必要なケースです。後半の「内部の状況をうかがう」のみに着目すると「窺う」が適切なように思われるかもしれませんが、前半に「人から」とあるので、「人から聞く」の謙譲語と判断して「伺う」を使用します。

事情に通じた人から、内部の状況を

おわりに

以上、「窺う」と「伺う」の使い分けについて説明しました。

謙譲語として使われている場合は「伺うを使う、「うかがわれる」「うかがえる」の形のときは「窺うとするというように基本的な法則はありますが、後半の例文の6つ目のように文脈に注意が必要なケースもあります。

単語の組み合わせから機械的に判断するのではなく、意味を意識して使い分けましょう。


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