校正校閲のよくある間違い

注釈でよくあるパターン化された間違い

校正では、媒体問わずあるある的な間違いが意外と多くあります。ただ、そのような間違いは個人のノウハウとなりあまり公にされていないのが現状です。

職場の研修や学校でも「経験を積めば何とかなる」と思われがちですが、実際は経験を積まなくとも知識として持っておくだけで見つけられる間違いがあります。

ここでは『注釈』に絞っていますが、注釈は紙・Web限らずどの媒体でも使用されるものです。覚えておくときっと役に立つ日がくるはずです。

注釈の意味・名称・例

「注釈(ちゅうしゃく)」とは?

本文中の語句の意味や用法を解説すること。また、その解説。
本文の上方に置く頭注、本文中に置く割注、本文の下方にある脚注などの総称。

【出典】weblio国語辞典Wiktionary 

 注釈の名称

注釈は、どこに配置されるかで名称が変わってきます。
左上から「割注」「頭注」「脚注(縦組)」「脚注(横組)」「傍注」「後注」となります。

校正校閲の注釈の説明
【出典:日本エディタースクール出版部「本の知識」 P.23より】


 注釈の例

・表組での例
注釈でよくあるミス防止対策
脚注の例になります。
注記号(表内の※1や※2など)と表の下の注釈文(※1○○○など)が一対となっています。


 注記号の一例

※1 ※2 ※3
*1 *2 *3
 )  1) 2) 3)
( ) (1) (2)(3)
注1 注2 注3

他にも、†(ダガー)などが使用される場合もあります。

たとえば、厚生労働省のHPでは「 1)  2)」の体裁のものが多く使用されています。

注釈でよくあるミス防止対策
【出典:厚生労働省HPより】


注記号にどの記号を使用するかは、各社・各媒体のルールによるので特に決まりはありません。ただ、あくまで注釈はその用語を補足するものなので、馴染みのない記号を使うよりは見慣れたものを使う方が、読み手側に補足の説明があると伝わりやすくなります。

このような注釈は、使用ルールがある程度決まっているので起こる間違いはパターン化されやすいです。

以降の文では、注釈の例として横書きの脚注を取りあげていますが、縦書き/横書き関係なく、どの注釈でも起こりえる間違いです。

1:注釈の実例(ファッション誌InRedより)

宝島社:ファッション誌_InRed(インレッド)12月号_P.61・62の誌面より


 例1

・Panasonic 「スチーマー ナノケア」の説明文
注釈でよくあるミス防止対策

・部分拡大
注釈でよくあるミス防止対策

このような文中に注記号が入っているものはよく見られます。特に、家電や機械系の媒体になると注記号の数も多くなってきます。

この注記号「※1」は、「約15%もアップ」に対しての補足説明です。何かと比較して優位性を示す場合にはその根拠が必要になってきます。たとえば、「電気代約30%削減」「世界最軽量」「業界No.1」なども同じように扱われます。


 例2

・Panasonic 「温感かっさ」の説明文
注釈でよくあるミス防止対策

・部分拡大
注釈でよくあるミス防止対策
この文では「ドレナージュ」という聞きなれない用語に対して注釈が付けられています。

一般的でない用語、専門用語、固有名詞などには、読み手のために補足しておく必要があります。これは、校閲の仕事の範疇になります。読み手が迷う・理解できないであろう言葉に対しては、その説明が必要ではないかと指摘します。難解な漢字などにも、ルビを振る指摘をすることがあります。

また、この文では、注記号が2か所あるのもポイントです。

同じ語が何度も出てくるからといって、そのすべてに注記号を付ける必要はありません。たとえば、最初に「ドレナージュ」が出てくる見出しの箇所、1つだけに注記号を付けるという選択肢もあります。

ただ、ここでは「ドレナージュ」という語が2つしか出てこないので両方に注記号を付けているのだと思われます。

仮に、例2の文字量で「ドレナージュ」という用語が4つも5つも出てきて、それらに逐一注記号が付いていると、かえって文が読みにくくなります。

文字量と注記号を付ける語の出現数のバランスを考慮して、どこに注記号を付けるべきかを決める必要があります。


■ 注記号が最初に出てくる語だけに付いている場合の注意点

次のように最初の語のみ注記号が付いているパターンです。
(※「■■■」は同一の固有名詞)

注釈でよくあるミス防止対策


この文に入れ替えの指示が入った場合。

注釈でよくあるミス防止対策


最初の語に注記号がなく、2番目に出現する語に対して注記号が付くことになります。

注釈でよくあるミス防止対策


この場合は、最初の語に注記号が付くように入れ直す必要があります。

注釈でよくあるミス防止対策   

文字の入れ替え指示だけでなく、文字の追加や削除、レイアウト変更などの際にも最初に来る語の順番が変わることがあるので注意が必要です。

2:注記号をトル

ここからが本題になります。注釈でよくあるパターン化された間違いです。

表に入っている赤字を見て、他にも修正すべき箇所がないかという視点で考えてみてください。わかりやすく表組の例にしていますが、考え方は文章でも同じになります。

注記号にだけトルの赤字が入っている場合

注釈でよくあるミス防止対策
解説」
・「※2」が取られることにより、同じ表内の「※3 ※4 ※5」を「※2 ※3 ※4」に繰り上げないといけません。
・表下の注釈文「※2 ○○○」も不要になるので取る必要があります。それに合わせて、注釈文の「※3 ※4 ※5」も、それぞれ「※2 ※3 ※4」に繰り上げます。



【結果】
注釈でよくあるミス防止対策

■ 注記号が削除された場合の注意点

3つ以上注記号がある場合

注記号が削除された場合、以降の数字は一つ繰り上がります。

注釈でよくあるミス防止対策


2つしか注記号がない場合

注記号が削除されても数字を繰り上げることはしません。

「※1」を削除した場合

注釈でよくあるミス防止対策

「※2」を削除した場合

注釈でよくあるミス防止対策

2つの注釈のうちどちらか一つがなくなれば数字は不要です。仮に、一つしか注釈がないのに「※1」となっていると他にも続きの注釈があるように思われます。

数字を付けても間違いとは言えませんが、他にも数字が続くことを読み手に想像させてしまうのため数字はない方が無難です。

3:注釈文をトル

注釈文にだけトルの赤字が入っている場合

これも考え方は前の項目と同じです。基本は、注記号と注釈文をつねにセットで追うことです。

注釈でよくあるミス防止対策
解説」
・注釈文の「※3 ○○○」が取られることにより、以降の注釈文「※4 ※5」を「※3 ※4」に繰り上げます。
・表内の「※3」の注記号も不要になるので取ります。注記号の「※4 ※5」も「※3 ※4」に繰り上げます。



【結果】
注釈でよくあるミス防止対策

4:注記号を含む部分が削除される

注記号を含む部分が削除される

注記号は小さいため、削除範囲にあっても気づかないことがよくあります。

注釈でよくあるミス防止対策
解説」
・表内の「※4」を含む行が取られることにより、表内の注記号「※5」を「※4」に繰り上げます。
・表下の注釈文「※4 ○○○」も不要になるので取ります。それに合わせて、注釈文の「※5」を「※4」に繰り上げます。



【結果】
注釈でよくあるミス防止対策


ここまでの「2」~「4」の項目は、赤字が入る位置や内容は違っていても、校正が見るポイントはすべて同じ例になります。

注釈は、注記号と注釈文がセットになっていることが多いので、たとえ赤字が一つでも色々な箇所に影響してきます。そのため、どこまで修正範囲が及ぶかを考えて赤字を入れなければいけません。

理想は、赤字を入れる側が変更箇所すべてに指示を入れてくれることですが、そうでないことも多いです。注記号は小さいので、赤字を入れる側も見落としやすくなります。

5:注記号を含む部分の入れ替え

注記号を含む部分が入れ替えられる


注釈でよくあるミス防止対策
解説」
・表内の注記号「※2」と「※4」が入れ替わったので、「※2→※4」「※4→※2」にします。
・表下の注釈文「※2 ○○○」と「※4 ○○○」の文だけを入れ替えます。



【結果】
注釈でよくあるミス防止対策
注釈文の文だけを入れ替えるのは赤字を少なくするためです。赤字を少なくすることで、人の手(修正作業)が介在するのを減らすことができます。それにより、修正ミスも防ぐことができます。

6:注記号が複数箇所ある

注記号が複数箇所ある

注記号が複数入る場合は多いです。前述したInRedの例2の文でも2つ入っていました。

・注記号が複数ある例

注釈でよくあるミス防止対策
注記号が複数入っている場合に起こりやすい間違いがあります。

「※3」の注釈が不要になった場合の赤字

注釈でよくあるミス防止対策
注記号が複数あると気づかれないことが多いです。単に気づいていないということでなく、注記号は一つだけと勘違いしているケースもあります。

7:注記号の順番が違う

注記号の出現順と数字が連続していない。

この表では「※4」の位置がおかしいです。

注釈でよくあるミス防止対策  

横軸(赤線)で見れば「※1→※2→※4→※3」となり、数字が連続していません。
縦軸(青線)で見ても「※1→※4」となります。
注釈でよくあるミス防止対策
基本、表組なら赤線の方向で見て判断します。そのため「※3」と「※4」を入れ替えるのが適切です。

注記号が多くなったり、繰り返し修正が行われた場合によくある間違いです。

8:表全体にかかる注釈文

表全体にかかる注釈文

注釈でよくあるミス防止対策
これまでの「1」~「7」の項目は、個別の情報に対応した注釈でしたが、ここでの注釈は表全体にかかるものです。表に対して、5つの注釈(補足説明)があるということです。

以下の表のように数字を入れないパターンもよく見られます。数字を入れるか入れないかは自由ですが、表が複数あるなら基準を統一しておかないといけません。

注釈でよくあるミス防止対策

おわりに

ここでは注釈だけに絞って見てきたので簡単だったと思います。ただ、実際の校正では、注釈だけでなく他の箇所にも気を配らないといけません。

やり方のコツとしては、すべての項目を一気に見るのではなくて作業を分解して校正して行くことです。たとえば、素読みをしてから、次に注釈の対応だけを確認するといった感じです。すべての項目を見てからでも、再度注釈の対応だけをあとで確認する方法もいいと思います。

パターン化された間違いはそこに絞って見ていく方が効果的です。