校正ミスをなくす

夜勤を通して学んだこと

今から十数年前。広告といえば紙媒体が中心で、出版業界にもまだ華やかさが残り、働き方改革やWebが台頭してくるなんて微塵も思わなかったころ。

当時は、校正といえば紙が主流で、校正の必要性も今以上に理解されていたので、校正者を数十人常駐させている会社も珍しくない時代でした。

下版間近になると今とは比べ物にならないぐらい忙しく、さらにそこに繁忙期が重なると、校正をやってもやっても終わりが見えないぐらい、山のように校正物がある状況です。

繁忙期は、残業からの徹夜が確定だったので、ほぼ夜勤に近い状態です。
夜勤専従だったら身体も慣れるのかもしれませんが、繁忙期だけの一時的なものなので身体が慣れることもありません。

夜勤のときは、いつも次のようなループです。

1. 校正する
2. 身体がだるくなる
3. 集中力が途切れる
4. 休憩をとる
5. コーヒーを飲む
6. 顔を洗う
7. 1に戻る


夜勤には、数名の校正メンバーがいて、皆がつらい環境の中での校正だったと思いますが、なぜかクレームに繋がるような大きなミスは起きませんでした。

原因は色々あると思いますが、その一つに、校正メンバーそれぞれが見落としをしないように、自分なりの予防管理をしていたからだと思います。

今風に言い換えれば、リスクマネジメントです。

・こまめに休憩をとったり、
・見直しの回数を増やしたり、
・いつもより校正のスピードをゆるめたり、

をしていた感じです。

「見落とす」という前提で、そこから逆算して、そうならないように無意識に行動していたんだと思います。
(まあ、当時はこんなことは一切考えていませんでしたが…。)


≪この夜勤を通して学んだこと≫

(1)校正の品質は、外部環境に左右されやすい
⇒ 個人の校正スキルが高くても、環境が悪ければその能力を発揮できないということ。

(2)自分(校正者)が思っている以上に、些細な体調の変化が集中力に影響してくる
⇒ 自分の目では確認できていると思っていても、頭が付いてきていないということです。そのせいで、見落としのリスクが高まることです。

校正の品質は、外部環境に左右される

校正の外部環境として気を付けておきたいことは、

・適切な作業スペースを確保する
・会話や電話などの音を軽減する
・無茶な時間内での校正の要求をしない
・曖昧な校正指示を出さない

といったことがあげられます。
いずれが欠けていても、校正者にとってはストレスになります。

環境づくりは、校正者個人ではなかなかできないものです。もし、校正をマネジメントするというなら、環境整備は真っ先に手を付けるべきところです。校正者のパフォーマンスを発揮させる土台です。

見落としに対しての捉え方も、個人の責任にするのでなく、その取り巻く環境も視野に入れて考えた方がよいです。その個人を取り巻く環境を考えれば、ミスを誘発する根本的な問題が見えてくるかもしれません。

何も環境を変えず、ミスを個人の責任にしてしまう状態では、また同じような間違いが繰り返される可能性が非常に高いです。

※場合にもよりますが、起こったミスを共有するだけでは、ミスへの対策が浅いこともあります。

校正の品質は、校正者の自覚に左右される

外部環境が整っていても、校正者本人の自覚が品質に大きく影響してくる場合もあります。

校正のスキルが高い低いとか、やる気の有無ではなく、体調の変化です。
体調が少しでもすぐれない(ちょっと頭が痛い、カゼ気味のとき)場合は、自分ではいつも通り校正ができていると思っていても、見落としは確実に多くなってきます。

マルチタスクの状態に近いです。
目で文章を追っていても、頭が追い付いてこない(処理しきれていない)状態です。

これは、校正者本人だけの問題でなく、本来なら管理する側が気づいてあげるべきことですが、校正者も自覚しておいた方がいいことです。

校正者には、真面目で頑張りがちな方が多いですが、自分のパフォーマンスを発揮できていない状態で頑張ったところで、万一見落としがあった場合、自分もつらいですし、校正を依頼している側にも迷惑をかけることになります。

あとから「あのときは、体調が悪かったんで…」という言い訳はできません。体調の悪いときは、必ず見落しがあると考えて対処した方がよいです。

当然、それでも仕事をせざるをえない状況は多いと思います。

そのときは、

・難易度の高くないもの/赤字の少ないものを優先してやる
・ダブルチェックをしてもらう(重要項目だけでも)
・作業項目を限定する(照合だけ、ダブルチェックだけなど)
・見直しの回数を増やす

などで対処した方がよいです。

スキル以上に大切なこと

校正のミスをなくすためには、「環境づくり」と「本人の自覚(管理者側も)」は大切です。
これは、スキル以上に大切になってくるかもしれません。

「どこでも、いつでも校正できる」という気持ちはあっても、現実的には厳しいです。仮にできたとしても、そこに品質が付いてこないと「校正をした」とは言えません。

長い目でみれば、信頼と仕事を失っていく原因になりかねません。

校正者の中には、わかっていても言いづらい立場の方も多いと思います。そのため、そこは校正を管理する側が察してあげるべきところでしょう。