目 次
- 文章校正で覚えておきたい異字同訓の漢字の用法
- 漢字の使いわけ一覧
- 1. おさえる(押さえる・抑える)
- 2. かえる(代える・変える・替える・換える)
- 3. こえる(越える・超える)
- 4. はかる(計る・測る・図る)
- 5. おさまる(納まる・収まる)
- 6. あける(開ける・空ける)
- 7. あらわす(表す・現す・著す)
- 8. わたる(渡る・亘る)
- 9. もと(基・下・本・元)
- 10. かたい(堅い・硬い・固い)
- 11. きく(利く・効く)
- 12. つかう(使う・遣う)
- 13. つく(着く・付く)
- 14. つくる(作る・造る)
- 15. つとめる(務める・努める・勤める)
- 16. すすめる(薦める・勧める)
- 17. きく(聞く・聴く)
- 18. わかれる(分かれる・別れる)
- 19. かた(形・型)
- 20. あらい(粗い・荒い)
- 21. いたむ(傷む・痛む)
- 22. うつす(写す・映す)
- 23. まざる(交ざる・混ざる)
- 24. しずまる(鎮まる・静まる)
- 25. はく(穿く・履く)
- 26. よい(良い・善い・好い)
- 27. つつしむ(慎む・謹む)
- 28. ふえる(殖える・増える)
- 29. とまる(止まる・泊まる・留まる)
- おわりに
文章校正で覚えておきたい異字同訓の漢字の用法
異字同訓(いじどうくん)とは、次のような意味になります。
異なる漢字でありながら、意味の近い語が、訓で読む場合に同じになるもの。
【出典:小学館_デジタル大辞泉】
具体的には、「交ざる」と「混ざる」のようなものを言います。
「交ざる」は、区別がつくものに使い、「漢字と仮名の交じり文」のように用います。
「混ざる」は、区別がつかないものに使い、「酒に水が混ざる」と用います。
この異字同訓の難しいところは、
どの漢字を使えばいいか白黒つかない場面が多いことです。どっちを使用してもよい場面もあります。ひらがなにするほうが適切とされる場面もあります。
異字同訓をあげていけばキリがないので、この記事では以下の基準でピックアップしています。
- 使用頻度の高いもの
- よく混同されるもの
- 変換ミスが多いもの
No. | 読み | 異字同訓 |
1 | おさえる | 押さえる・抑える |
2 | かえる | 代える・変える・替える・換える |
3 | こえる | 越える・超える |
4 | はかる | 計る・測る・図る |
5 | おさまる | 納まる・収まる |
6 | あける | 開ける・空ける |
7 | あらわす | 表す・現す・著す |
8 | わたる | 渡る・亘る |
9 | もと | 基・下・本・元 |
10 | かたい | 堅い・硬い・固い |
11 | きく | 利く・効く |
12 | つかう | 使う・遣う |
13 | つく | 着く・付く |
14 | つくる | 作る・造る |
15 | つとめる | 務める・努める・勤める |
16 | すすめる | 薦める・勧める |
17 | きく | 聞く・聴く |
18 | わかれる | 分かれる・別れる |
19 | かた | 形・型 |
20 | あらい | 粗い・荒い |
21 | いたむ | 傷む・痛む |
22 | うつす | 写す・映す |
23 | まざる | 交ざる・混ざる |
24 | しずまる | 鎮まる・静まる |
25 | はく | 穿く・履く |
26 | よい | 良い・善い・好い |
27 | つつしむ | 慎む・謹む |
28 | ふえる | 殖える・増える |
29 | とまる | 止まる・泊まる・留まる |
理想は個々の意味を覚えることですが、すべての用法を明確に覚えるのは困難です。はっきりした意味を覚えるというよりも、まずはどれが間違えやすいかという最低限の知識だけ頭に入れておくことが賢明です。
そこから実務に必要とされる知識を肉付けしていくのが効果的な学習方法です。
まずは「これ、おかしいかも?」と思えることが大切です。
[記事作成にあたっては、以下の書籍・辞書・サイトを参考にしています]
・日本エディタースクール出版部「標準 校正必携」異字同訓の漢字の用法
・文化庁「訓練された異なる文字」の漢字の使用法
・Windows10/IME「標準統合辞書」Microsoft 日本語 IME
・用語検索サービス「コトバンク」
・漢字辞典オンライン
漢字の使いわけ一覧
1. おさえる(押さえる・抑える)
「押さえる」 → (物理的に)おさえる、確保
- 紙を押さえる
- 両手で帽子を押さえる
- 弱点を押さえる
- 要点を押さえる
- 証拠を押さえる
- 差し押さえる
「抑える」 → 抑制、抑止
- 物価上昇を抑える
- 要求を抑える
- 発言を抑える
- 怒りを抑える
- 涙を抑える
- 1点に抑える
2. かえる(代える・変える・替える・換える)
「代える」 → 代理、代表、交代
- あいさつに代えて
- 命に代えられない
「変える」 → 変化、変更
- 形を変える
- 予定を変える
- 位置を変える
「替える」 → AをやめてBにかえる
- 入れ替える
- 振り替える
- 商売を替える
「換える」 → AとBを交換
- 物を金に換える
- 名義を書き換える
- 車を乗り換える
3. こえる(越える・超える)
「越える」 → 〈場所・時間・点を〉通り過ぎる
- 山を越える
- 期限を越える
- 困難を乗り越える
- 年を越える
- 権限を越える
「超える」 → 〈数量・基準・限度を〉上回る
- 定員を超える
- 能力を超える
- 予想を超える
- 限度を超える
- 利害を超えた問題
- 1万円を超える
※一万円を超える額というのは、一万円を含みません。
4. はかる(計る・測る・図る)
「計る」 → 〈数・時間を〉計算、計画
- タイミングを計る
- 将来を計る
- 計り知れない恩恵
「測る」 → 〈長さ・面積を〉測定、測量
- 角度を測る
- 熱を測る
- 距離や面積を測る
「図る」 → 意図、工夫
- 合理化を図る
- 解決を図る
- 便宜を図る
5. おさまる(納まる・収まる)
「納まる」 → 納入、納付、落ち着く
- 写真に納まる
- 箱の中に納まる
- 元のさやに納まる
- 税を納める
- 注文の品を納める
「収まる」 → 収容、収拾
- 本棚に収まる
- 争いが収まる
- インフレが収まる
- 効果を収める
- 成功を収める
6. あける(開ける・空ける)
「開ける」 → ひらく
- 窓を開ける
- ふたを開ける
- 店を開ける
「空ける」 → からにする
- 家を空ける
- 中身を空ける
- 時間を空ける
7. あらわす(表す・現す・著す)
「表す」 → 表現
- 喜びを顔に表す
- 意思を表す
- 敬意を表す
- 言葉に表す
「現す」 → 出頭
- 頭角を現す
- 姿を現す
- 正体を現す
- 馬脚を現す
「著す」 → 〈書物を〉
- 西洋史を著す
8. わたる(渡る・亘る)
「渡る」 → 〔一般的〕移動
- 大陸へ渡る
- 全員に渡る
- 人手に渡る
- 晴れ渡る
- 橋を渡る
- 道路を渡る
「亘る」 → 〈範囲・期間に〉及ぶ
※「亘(る)」は常用外のため「わた(る)」にするのが一般的
- 細部にわた(亘)る
- 何時間にもわた(亘)る会議
- 半年にわた(亘)る工事
- 連日にわた(亘)って
- 再三にわた(亘)り
- あらゆる分野にわた(亘)る
9. もと(基・下・本・元)
「基」 → 基礎
- 資料を基にする
- 基づく
- 国の基を築く
「下」 → 下部、支配、影響下
- 白日の下
- 灯台下暗し
- 法の下に平等
- 教授の指導の下
- 一撃の下
「本」 → 根本
- 本をただせば
「元」
- 元からやり直す
- 元を取る
- 元に戻る
- 元も子もない
- 出版元
10. かたい(堅い・硬い・固い)
「堅い」
- 堅い材木
- 堅い商売
- 堅い守り
- 口が堅い
「硬い」
- 硬い石
- 硬い文章
- 硬い表現
- 表情が硬い
「固い」
- 固い信念
- 地盤が固い
- 団結が固い
- 頭が固い
11. きく(利く・効く)
「利く」 → 役に立つ、機能
- 機転が利く
- 鼻が利く
- 気が利く
「効く」 → 効き目がある、効果
- 薬が効く
- 宣伝が効く
- 風刺が効く
12. つかう(使う・遣う)
「使う」
- 機械を使う
- 人を使う
- 金を使う
- 頭を使う
- 横目を使う
「遣う」
- 気遣う
- 心遣い
- 小遣い稼ぎ
- 仮名遣い
13. つく(着く・付く)
「着く」 → 到着
- 東京に着く
- 席に着く
- 食卓に着く
- 手紙が着く
- 頭が天井に着く
- 仕事に手を着ける
- 衣服を身に着ける
「付く」 → 付加
- インクが付く
- 利息が付く
- 片が付く
- 気が付く
- 味方に付く
- 気を付ける
- 条件を付ける
14. つくる(作る・造る)
「作る」 → 〔小規模・無形〕
- 米を作る
- 人形を作る
- 小説を作る
- 規則を作る
「造る」 → 〔大規模・有形〕
- タンカーを造る
- 庭園を造る
- 酒を造る
15. つとめる(務める・努める・勤める)
「務める」 → 任務
- 委員長を務める
- 主役を務める
- 案内人を務める
「努める」 → 努力
- 問題の解決に努める
- 実現に努める
- 看病に努める
「勤める」 → 勤労
- 銀行に勤める
- 会社に勤めて20年
- 勤め人
16. すすめる(薦める・勧める)
「薦める」 → 推薦、推挙
- 良書を薦める
- 候補者として薦める
「勧める」 → 勧誘、奨励
- 入会を勧める
- 食事を勧める
17. きく(聞く・聴く)
「聞く」
- うわさを聞く
- 忠告を聞く
- 聞くには堪えない話
「聴く 」 → 身を入れてきく
- 名曲を聴く
- 国民の声を聴く
- 事情を聴く
18. わかれる(分かれる・別れる)
「分かれる」 → 分岐
- 意見が分かれる
- 道が分かれる
※一つのものが離れて、二つ以上になること
「別れる」 → 〈人と〉別離
- 親と別れて暮らす
- 友人と駅で別れる
※一緒になっていた人の間が、離れること
19. かた(形・型)
「形」 → 姿かたち、フォーム
- 柔道の形
- 跡形もなく
- 自由形
「型」 → 手本、パターン、タイプ
- 型にはまる
- 型を取る
- 型通り
- 血液型
20. あらい(粗い・荒い)
「粗い」 → 粗雑、大ざっぱ
- 網の目が粗い
- 仕事が粗い
- 肌のきめが粗い
「荒い」 → 勢いが激しい
- 荒い波風
- 気が荒い
- 金遣いが荒い
21. いたむ(傷む・痛む)
「傷む」 → 損傷、腐敗
- 風雨で家が傷む
- 傷んだ果物
- 根が傷む
「痛む」 → 痛苦
- 腰が痛む
- 傷が痛む
- 心が痛む
22. うつす(写す・映す)
「写す」 → 〈写真・文書・絵を〉
- 書類を写す
- 記念写真を写す
- 答案を写す
「映す」 → 映写、反映
- 映画を映す
- 鏡に姿を映す
23. まざる(交ざる・混ざる)
「交ざる」 → 〔区別がつく〕
- サバにアジが交ざる
「混ざる」 → 〔区別がつかない〕
- 水に絵の具が混ざる
- 雑音が混じる
24. しずまる(鎮まる・静まる)
「鎮まる」 → 〈乱れ・痛み・神が〉
- 内乱が鎮まる
- 歯痛が鎮まる
- 御霊が鎮まる
「静まる」 → 〈物音・気持ちが〉
- 心が静まる
- 嵐が静まる
- 波が静まる
25. はく(穿く・履く)
「穿く」 → 〈衣服を〉〈下半身に〉
※「穿く」は常用外のため「はく」にするのが一般的
- ズボンを穿(は)く
※ズボン、スカートなど腰から下を覆う衣服を身に着ける場合
「履く」 → 〈履き物を〉
- 靴を履く
※くつ、ゲタなど足先に着ける場合
26. よい(良い・善い・好い)
「良い」
- 品質が良い
- 成績が良い
- 手際が良い
「善い」 → 〔道徳的〕
- 善い人
- 善い行い
「好い」 → 好ましい
※「好い」は常用外のため「良い or よい」にするのが一般的
- 好(=良)い天気
- 人が好(=良)い
27. つつしむ(慎む・謹む)
「慎む」 → 抑制
- 言動を慎む
- 酒を慎む
- 身を慎む
「謹む」 → かしこまる
- 謹んで承る
- 謹んで祝意を表す
28. ふえる(殖える・増える)
「殖える」 → 利益、繁殖
- 利子が殖える
- 財産が殖える
- 豚が殖える
「増える」
- 人数が増える
- 水量が増える
- 収入が増える
29. とまる(止まる・泊まる・留まる)
「止まる」
- 成長が止まる
- 水道が止まる
- 笑いが止まらない
「泊まる」 → 宿泊、停泊
- ホテルに泊まる
- 船が港に泊まる
「留まる」 → 固定、印象に残る
- 目に留まる
- ボタンを留める
- お高く留まる
おわりに
異字同訓の間違いを減らすのは、文章校正の段階でなく、文章を入力する段階でなくすほうが簡単です。
誤入力をなくすコツは、ひとまとまりの文で変換することです。昔と比べ今では、文章の変換精度もかなり高くなっています。(※Windowsでの感想です)
そのため文を短く区切って入力するのではなく、異字同訓も含んで文を変換することです。
たとえば、[24]で紹介した「内乱が鎮まる」を入力する場合、
「ないらんが」と「しずまる」の2つにわけて個別で変換するのではなく、
「ないらんがしずまる」のひとまとまりで変換します。
「静まる」と「鎮まる」の使い分けがわからなくても、前述している用例の80%以上は、この方法で正しく変換されます。
また『体が言うことを聞かない』という表現などに対しても、細かく区切って変換するのではなく文単位で変換するほうが誤りを防ぐことができます。