目 次
英単語やカタカナ表記のルールは難しい[対策は優先順位と分類]
1. 見慣れた英単語ほど要注意
中学や高校で習う誰もが知っているような英単語。
社会人になったら辞書でわざわざ調べる人は少ないと思います。
簡単でよく見慣れた英単語ほどうっかりミスをしてしまうことが多いです。「こんな簡単なもの、間違うはずがない」という思い込みが、さらに間違いを見つけにくくさせてしまいます。
英単語でよくある間違いとしては、次の理由がほとんどです。
- 発音に惑わされてスペルを間違ってしまう
- スペルが似ていて混同してしまう
中には、知識として持っておかないと間違えてしまうというものもあります。
たとえば、
「spring」
「summer」
「autumn(英)= fall(米)」
「winter」
この四季を表す単語は「ファッション雑誌」「旅行雑誌」などでよく見かけます。
季節ごとのファッションアイテムや、観光シーズンの旅行紹介などの場面でよく使用されています。
「spring」や「summer」の間違いはあまり見かけませんが、「autumn」のスペルミスは非常に多いです。「winter」の間違いはたまにあるという程度です。
「autumn」は、スペルミスのバリエーションも多く、
「autum」「autam」「autamn」などの間違いがよく見られます。
発音に惑わされてスペルミスをしてしまう例です。
「winter」も、発音から「wintar」になっているケースがあります。
季節を表す英単語もそうですが、月の英単語も色々な媒体で見られます。頻出する英単語(季節や月、曜日など)は、すぐに確認できるよう一つにまとめてデスクに貼っておくと便利です。
■ その他(よく見る英単語の間違い例)
・カレンダー
Calender ⇒ Calendar
・デザイン
Desighn ⇒ Design
・アンドロイド
Andoroid ⇒ Android
・デジタル
degital ⇒ digital
・コピーライト
copylight ⇒ copyright etc.
2. 英語の月の短縮
カレンダーでは、英語の月名が省略されて入っていることがあります。
「 Jan. 」「 Feb. 」などは単語が省略されているので、それを意味するピリオドが必要です。ですが、5月は省略形でないため「 May. 」となることはありません。
5月以外にも6月や7月もそのまま表記することがあります。また、9月は省略のパターンが2つあります。
カレンダーは、どの媒体でも目にするものなので特に注意が必要です。
1月 | January | Jan. |
2月 | February | Feb. |
3月 | March | Mar. |
4月 | April | Apr. |
5月 | May | May(そのまま) |
6月 | June | Jun. or June(そのまま) |
7月 | July | Jul. or July(そのまま) |
8月 | August | Aug. |
9月 | September | Sep. or Sept.(4文字で省略) |
10月 | October | Oct. |
11月 | November | Nov. |
12月 | December | Dec. |
3. 英単語の使い分け・ジャンル毎でよくある間違い
英単語の使い分けは、スペルが間違っているわけではないので、校正者の目で見て文脈から判断するしかありません。Wordのスペルチェックでも見つけることができません。
▼ ファッション誌などでよく見られる間違い
単数 | 複数 | 単数所有格 | 複数所有格 |
lady | ladies | lady's | ladies' |
man | men | man's | men's |
woman | women | woman's | women's |
「ladies'」のアポストロフィーの位置に注意です。
レディーズウェアのスペルは「ladies' wear」が正になります。
「ladie's wear」になっている間違いが多いです。
・混同
hanger(洋服に使うハンガー) ⇔ hangar(格納庫)
wear(身につけている、着用している) ⇔ ware(製品)
・要注意の単語
「Jacquard(ジャカード)」… 生地の模様や柄の名称
1. Jacguard → Jacquard(スペルミス)
2. 読みは、「ジャガード」でなく「ジャカード」が適切
3. 手書きの赤字だと「q」を「g」と見間違えやすい
「Jacquard」は、スペルミス・読み間違い・赤字の入れ方の3つで間違えやすいので要注意です。
▼ 会社案内や会社概要でよく見られる間違い
・スペルミス
campany ⇒ company(カンパニー)
pablish ⇒ publish(パブリッシュ)
prodact ⇒ product(プロダクツ)
manegement ⇒ management(マネージメント)
・混同
corporation(会社) ⇔ cooperation(協力)
▼ その他
・発音が似ていて、よく使用される単語の混同
date(日付) ⇔ data(データ)
week(週) ⇔ weak(弱い)
wear(衣服) ⇔ ware(製品)
sheet(図面) ⇔ seat(座席) etc.
カタカナ表記のルールは難しい
カタカナ表記は非常に難しく、表記のバラつきもよく目にします。
たとえば、
・ウィンド ⇔ ウインド
・ウェア ⇔ ウエア
などのように、小さい字と普通の大きさの文字で表記ゆれを起こしていることがあります。
一昔前までは「シュミレーション」の表記が当たり前だったものが、今では「シミュレーション」が適切とされています。外来語は、使用された当初と表記が違っているものもあります。古い雑誌を見れば、今とは表記が違っているものも意外と多く見られます。
よくあるカタカナ表記の混在でも、
・デビュー ⇔ デヴュー
・バイオリン ⇔ ヴァイオリン
などの表記ゆれをよく目にするかと思います。
一般的に、
「ヴァ、ヴィ、ヴ、ヴェ、ヴォ、ヴュ」は、
「バ、ビ、ブ、ベ、ボ、ビュ」に置き換えます。
そのため、
・デヴュー ⇒ デビュー
・ヴァイオリン ⇒ バイオリン
「デビュー」「バイオリン」が表記としては相応しいものになります。
また、英単語から表記を判断することもあります。
「hybrid」なら「d」で終わっているので、
・ハイブリット でなく ハイブリッド が相応しい表記になります。
同様に「badminton」なら、
・バトミントン でなく バドミントン となります。
「Jacquard(織物)」の単語も、
「ジャガート」と「ジャカード」という表記が混在していることがあります。
これも英単語が「Jacquard」で「q」「d」なので、
・ジャガート でなく ジャカード が相応しいです。
以上のように、カタカナ表記の扱いは非常に難しいです。特に新しい外来語の表記は何を正解にしていいか基準がない場合もあります。ネットで検索して多くヒットするからといってそれが正しいとも限りません。
既存の外来語表記は、無難に共同通信社の『記者ハンドブック』を参考するのがよいと思います。カタカナ表記に関しては何かを軸にしておかないと基準がブレブレになってしまうため、参考になるものを一冊手元に持っておいたほうがよいです。
▼ 共同通信社
「記者ハンドブック 第13版 新聞用字用語集」
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▼ 日本エディタースクール出版部
「日本語表記ルールブック」
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「日本語表記ルールブック」の中に『外来語の表記』に関して5ページほどだけですが解説されています。
たとえば、グラビア ⇔ グラビヤ、イタリア ⇔ イタリヤ etc.
これから編集や校正の勉強をしていきたいという人は、日本語全般の表記に関して体系的にまとめられている「日本語表記ルールブック」のほうがわかりやすいかと思います。
▼ 外来語(カタカナ)表記ガイドライン
一般財団法人テクニカルコミュニケーター協会のHPでカタカナ表記のガイドライン[PDF:49頁]が無料で公開されています。なぜそのカタカナ表記にするのか英語の原語をもとに解説されています。カタカナ表記と英語の一覧も記載されています。
> 外来語(カタカナ)表記ガイドライン
理想と現実:効果的な勉強方法
理想的には「間違えそうな英単語を知っておく」「カタカナ表記の適切なものを覚える」ですが、無数にある英単語やカタカナ表記をすべて覚えるのは不可能です。
校正者としては、他にも覚えるべきことがたくさんあります。
そのため、まずやるべきこととしては、
英単語なら実際にスペルミスが起こった単語を蓄積していくことです。
実際に起こった間違いは、同じ環境であるなら次にも起こる可能性が非常に高いです。それらを少しずつ潰していくことが一番効率的なやり方です。
またカタカナ表記の場合は、自分の携わる媒体でよく使われるものをピックアップして表記を確認していくことです。
間違っても辞書に載っているからという理由で、使う可能性の低い単語まで覚えることはやめましょう。そこに使われる非効率な労力と時間のせいで、他のミスを誘発させてしまうかもしれません。