実践的な校正記号の使い方:数字への赤入れ[小さい文字へ赤字を入れるとき]

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校正記号:数字への赤入れ[小さい文字へ赤字を入れるとき]

この記事では、数字に赤入れをするときに知っておきたい、見間違いを防ぐ効果的な入れ方を紹介します。

記事内では数字を中心とした校正指示を紹介していますが、数字だけでなく小さい文字への赤字の入れ方にも役立つと思いますのでぜひ参考にしてみてください。

数字の間違いが厄介なところ

数字の間違いで厄介なところは、漢字やひらがなと違って、一目見ただけでは間違いがどこにあるかわからないことです。

たとえば、漢字やひらがなでは、
校正・校閲」が「厚生・校閲」に、
あいうえお」が「あいううお」となっていればおかしいとわかります。

一方、数字の場合には、
2025年5月25日」が「2025年5月26日」となっていても、どこがおかしいかわかりません。修正指示と違った数字が入っていてもそのままの状態で成立してしまいます。

また数字は、漢字やひらがなと比べると文字自体が小さい(横幅)のも面倒なところです。

漢  字:犬犬犬犬犬犬犬犬犬犬
ひらがな
:あいうえおかきくけこ
数  字:0123456789

さらに表紙裏、背表紙、奥付など文字サイズが小さくなりがちな箇所にも数字は多く使用されます。年月日、郵便番号、住所、電話番号、メールアドレスなどの数字は一層小さく見えます。

小さい数字は、校正において色々とミスを引き起こす原因となります。ミスを防ぐためにも、間違いが起こらないような赤字の入れ方が大切になってきます。

1. 数字を訂正するときの校正指示

以下、数字の訂正をする際に最適な赤字の入れ方を考えていきます。

※この記事での小さい字とは8~9級(5.5~6ポイント)ぐらいの大きさを想定しています。

<パターンA>

数字への赤入れ 

訂正したい箇所に斜線を引き赤字を入れる指示です。この指示は通常の大きさの文字に対しては問題ありませんが、小さい数字に対しては斜線だけでは範囲があいまいになりがちです。

次のように斜線が隣の数字にまでかかってしまう恐れがあります。ミスを引き起こす原因となります。

[NG] 

<パターンB>

訂正指示に消し線を引くやり方です。ただ、これもパターンAと同様に、小さい字への場合は慎重に書かないと隣接する数字に消し線がかかる恐れがあります。

[NG]  数字への赤入れ

<パターンC>

消し線の両端に縦棒で修正範囲を指示する入れ方です。横線だけとは違い範囲が明確になりますが、小さい字で1字に対してこの赤字では、引き出し線の先がごちゃごちゃして見づらくなります。

このパターンは1字の場合はよくないですが、2から3字以上には有効です。

[OK] 

<パターンD>

訂正したい文字を丸で囲むやり方です。小さい数字への赤字は、どこを修正するかが一番重要になってきます。この入れ方であれば修正したい箇所を丸で囲むことにより訂正範囲を明確にすることができます。

<小さい数字に対してはどの指示が適切か?>

前述のパターンADを並べて比較すれば、同じ訂正指示でも見え方が違うことがわかります。

<パターンA>   数字への赤入れ

<パターンB>   数字への赤入れ

<パターンC>   数字への赤入れ

パターンD   数字への赤入れ

4つを比べれば、パターンDが一番訂正範囲が明確で、訂正すべき数字も"3"だとはっきり認識できます。「どこ」を訂正すべきかがより明確にわかるので、特にこだわりがないようであればパターンDの選択がおすすめです。

2. 数字を挿入するときの校正指示

挿入の赤字は、訂正に比べるとパターンが限られています。小さい字に対しての挿入は、どこに入れるのかを明確にする必要があります。そこで引き出し線の先に「」を入れて挿入先を強調します。

<パターンA>

挿入指示では、入れたい文字(ここでは「8」)を二股線で挟むのが基本です。

挿入」と「訂正」の引出し線の違い

  ・挿入     ・訂正  
   

<パターンB>

挿入位置をより強調する方法もあります。小さい字に対しては有効は方法です。

 数字への赤入れ

<POINT>

挿入指示は、基本として文字を二股線で挟みますが、二股線のせいで文字が見にくいようであれば、二股線を簡易的に書くなどで対処します。

  

3. 数字への赤入れで間違いを防ぐ[実践編]

ここからは前述の訂正と挿入指示の応用です。小さい字に対してより実践的な使い方を紹介していきます。

通常の訂正指示

大きい字の場合にはこの指示で問題ありませんが、小さい字の場合にはもう少し工夫が必要です。

訂正先では数字の3が連続しています。数字の場合、同じものが連続することは頻繁にあります。この場合、字が小さいと訂正箇所を間違えるというミスが起こりやすくなります。

この例では後ろの3が誤って修正される恐れがあります。

<起こりうる間違い>

このような間違いを防ぐために、小さい字への赤入れの際は補足の指示をあわせて書き入れるようにします。(※補足の指示は赤字と区別がつきやすいように鉛筆で書くのが基本です)

補足の指示でミスを防ぐ

補足の指示の入れ方に決まりはありませんが、ここでは位置を明確にするために前後の数字を加えた修正結果を示しています。さらに訂正箇所を波線で強調しています。少し手間かもしれませんが、間違いを防ぐには効果的な方法です。

また非常に間違えが起こりやすいのが連続する数字の一部を訂正する場合です。

数字への赤入れ

文字の大小に関係なく、この場合は補足の指示は必須です。指示の書き方は、「4つ目の3を8に変更」というように丁寧に書いても大丈夫です。連続する数字への訂正に対しては必ず補足を入れておきましょう。

日付への赤字の入れ方

日付の数字も小さく表示されることがあります。「年」と違って、「月」や「日」の数字は変更されることが多いので赤入れの際は注意しましょう。

2桁の日にちのうち1桁にだけ赤字を入れる際にも補足の指示を入れておかないと間違いが起こりやすくなります。

<起こりうる間違い>

補足の指示でミスを防ぐ

1字だけに赤字を入れる場合は修正結果を補足で入れます。

ただ誌面内に赤字が数か所程度ならこのような補足でも大丈夫ですが、多くなると補足の指示を書くだけでも大変になってきます。そのときは指示の入れ方を変える必要があります。

赤字が複数に及ぶなら、2桁に訂正の赤字を入れ訂正箇所を波線で強調します。鉛筆で補足の指示を入れるよりも誌面がすっきりして見やすくなります。

4. 数字を入れ替えるときの校正指示

前後の位置を入れ替える場合は次の記号を使います。

 校正記号の入れ替え  校正記号の入れ替え

 

ただし、入れ替えの校正記号を小さな字へ使用すると目立たないため、赤字自体が見落とされる恐れがあります。

入れ替えの記号を使いたいなら、引出し線で目立つように指示しておきましょう。

もしくは通常の訂正指示を使います。

5. 数字とアルファベットの見間違い

数字と似たアルファベットがいくつかあります。

「0」と「O(オー)
「1」と「I (アイ)」、「 l(小文字のエル)
「2」と「Z」

書き方によっては、
「5」と「S」も同じように見えます。

数字とアルファベットの混同を防ぐために、ここでも補足の指示が必要になってきます。

ただし、日本語と数字しか使わない文章であると修正側が知っているなら特に補足はなくても大丈夫です。

一方、英数字が混在するようなもの(品番やメールアドレスなど)には補足の指示を必ず入れます。

他にも補足の指示の書き方はあります。

補足の指示の書き方に厳密なルールはありませんが、一番のポイントは第三者への伝わりやすさ・見やすさを考慮することです。赤字を見る相手が校正記号をあまり知らない人であれば、より詳しく指示してあげると親切です。

また複数人で手分けして校正作業を行う場合は、他の校正者と指示の入れ方を統一しておきます。チームで校正をする際は、校正指示に一貫性を持たせるのが基本です。

<POINT>

補足の指示は数字だけでなく、アルファベットなどにも入れます。

※アルファベットのオーの大文字を入れる指示

※上と同様(補足の指示をわかりやすくしたもの)

おわりに

以上、数字に対しての適切な赤入れを紹介しました。

大前提として、数字の赤字は丁寧に大きめに書く必要があります。その数字の特徴を表す部分を強調して書くようにします。補足の指示を入れておけば大丈夫ではなく、字の書き方にも配慮しましょう。

 
※丸部分を強調して書くようにします。

漢字やひらがなの場合、字が乱雑で読めないものが出てきたらまず何だろうと考えますが、数字の場合は、0~9のどれかに当てはまるのでパッと見た印象で判断しがちです。さらに一度そう見えてしまったものは、何の疑いもなく強い確信に変わります。

一旦そうと判断してしまうとそれにしか見えなくなってしまう思い込みの恐いところです。誤解を与えないようにするためにも、字は丁寧にはっきり書くということを常に意識しておきましょう。