
長体と平体に隠された罠を見つける、校正校閲がすごい
「長体」と「平体」、全く聞いたことがないという方もいるかもしれませんが、DTPオペレータなどの方は、おそらく皆さんご存じだと思います。
長体と平体とを同列に並べましたが、長体はよく見かけますが平体はあまり見る機会がないです。
長体は、校正していると色々な媒体で見られます。長体を知らないという方も気づいていないだけで見ていることはきっとあるはずです。
この長体や平体に関する校正記号はないので、誰かに教えてもらわないと、ずっとわからないままの状態になってしまいます。
そんな長体と平体を、今回掘り下げていきたいと思います。
長体と平体の意味
▼ 通常の文字
一般的に「正体(せいたい)」と言われます。真四角なのでわかりやすいです。この正体を基準に、長体と平体は成り立っています。
1.長体
100%が正体です。
正体の文字を、長細くすることが長体です。ここでは、80%・50%・30%が長体の文字になります。
言い方としては「長体(率)50%」などと言ったりします。
上の長体率30%のように、極端に長体をかけすぎると文字が細くなりすぎ可読性が損なわれますので、かけすぎには注意です。
2.平体
基本的には、長体と同じ考え方です。
正体の文字を、平(たいら)にすることが平体です。
言い方としては「平体(率)50%」などと言ったりします。これも、長体同様、文字が平たくなりすぎると可読性が損なわれるので限度があります。
どういうときに長体を使用するか?
▼ 長体をかける例
(1)
この(1)の文では「さしすせそ」の区切りが悪くなっています。そこで、2行目の「せそ」を前行に送り込みたいと思います。
※このグレーの枠線のテキストボックスの幅を変えずに収めたい場合です。
(2)
【結果】
(2)の「送り込む」の指示だけだと、上のような仕上がりになってくることがあります。
修正する側が、グレーのテキストボックスを広げて文字を収めてくる場合です。
ただ、ここではグレーのテキストボックスを広げずに収めたいわけです。
こんなときこそ、長体の出番です。
(3)
長体をかけることを明示してあげれば、修正も(2)のような結果にならずにすみます。
【結果】
これで、「さしすせそ」までが一行に収まり区切りがよくなりました。
…でも、よく見てください。何かおかしくありませんか?
1行目と2行目の長体率が違うため文字の大きさが違うように見えます。
見た目が不格好です。これだと、クライアントに突っ込まれる場合もあります。なので、まだ赤字が不足しています。
(4)
1行目と2行目の長体率を揃えて、体裁を整えてあげます。
【結果】
これで、1行目も2行目も長体率が揃い、見た目もキレイです。
ここでは、順を追って説明しましたが、
校正は、最初に「送り込む」だけの赤字を入れるだけではなく、仕上がりもイメージして上の過程の全ての赤字を一つにして入れます。
まとめると、
「送り込む」+「長体をかける」+「他の文にも長体をかけて文全体の見栄えをよくする」、この3つを想定して(2)の段階で全ての赤字を入れるわけです。
単純に「送り込む」だけの指示で、全てわかってくれるオペレータもいますが、念には念を入れて仕上がりを想定して赤字を入れます。
奥の深い長体と平体
上記(4)の結果に「トル」の赤字が入った場合。
【結果】
このようになります。
赤字通りに修正されています。
…ですが、なにか違和感があります。
長体がかかったママです。
そもそも長体というのは、文字が収まらないから、長体をかけて収めているわけです。スペースがあり、正体で収まるようであれば、今度は長体を取ってあげなくてはいけません。
ちなみに、クライアントはあまり気付かない場合がありますが、編集やデザイナーの中では、長体を嫌う人もいます。ですので、文章量が減りスペースに余裕が生まれた場合は、長体を取ってあげましょう。
【結果】
おわりに
このように、何てことのない赤字一つから、色々推測するのが校正の仕事です。
平対に関しても基本は長体と同じ考え方ですので、自分が携わる媒体で平体を見ることが多いというのであれば注意してください。