トンボと塗り足し(ドブ)の重要性[校正で確認すべきポイント]

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トンボと塗り足し(ドブ)の重要性[校正で確認すべきポイント]

「トンボ」と「塗り足し」。紙媒体の校正者なら一度は聞いたことがあると思います。

校正作業として「塗り足し」を確認するかどうかは、会社によってまちまちです。媒体によっては、校正時に「トンボ」自体を校正ゲラに出さないということもあります。

そのため、校正者でもトンボや塗り足しを知らないという方がいても不思議ではありません。

ただ、実作業で「トンボ」や「塗り足し」の知識を必要としなくても、紙媒体に携わる身なら知っておいて損することはありません。(※塗り足しは、「ドブ」ともいわれます)

1:ゲラの各部の名称

ゲラの各部の名称

校正ゲラの塗り足し

4隅にあるものが「トンボ」です。各トンボの中央にある十字の形状のものは「センタートンボ」と呼ばれます。これらは、印刷において位置合わせの基準となる重要な役割を果たしています。
(※トンボの名称の由来は、形状が昆虫のトンボと似ているためです)

塗り足し」は、黄色のアミの部分にあたります。基本、塗り足しの幅は3mmとされています。

この塗り足しの内側の赤線が、仕上がり線(=断ち切り線・裁ち切り線)です。この仕上がり線を基準に断裁されます。

校正者にとってトンボは、塗り足しを確認するときに必要なものです。トンボがないと塗り足しも確認できなくなります。※トンボは、めくり合わせ(パタパタ)の基準点にもなります。

【参考】
・トンボ付き用紙のダウンロード ⇒ こちら
※サイズ:A4、塗り足し:3mm

 

2:塗り足しの説明

1.画像が配置された校正ゲラ

校正ゲラの塗り足し
 塗り足し部分まで、ちゃんと画像が入っています。

2.仕上がり線を赤枠で表すと次のようになります。

校正ゲラの塗り足し
 この仕上がり線に合わせて、紙が断裁されます。

3.仕上がり線に合わせて断裁されたものです。

校正ゲラの塗り足し
 塗り足し部分が断裁されたため、ひと回り小さくなっています。

この工程になぜ塗り足しが必要なのかは「断裁」が関係してきます。

3:断裁時のズレ

断裁は、常に仕上がり線上で正確にされるというわけではありません。

1.イラスト(赤枠)のように、専用の大きな刃で何枚も重ねられた紙が断裁されます。

校正ゲラの塗り足し

【出典:日本エディタースクール出版部「本の知識」】

その際に、紙の性質や厚みなど様々な要因が重なり、刃と仕上がり線の位置にズレが生じてきます。
この断裁時にズレが生じてしまうため、塗り足しが設定されています。

2.断裁時のズレ

中央の赤線が、仕上がり線です。
ズレは、外側にズレるとは限りません。内側にズレることもあります。

校正ゲラの塗り足し

4:断裁ズレによる不具合1

断裁時のズレで、 どういう不具合が起こるか?

わかりやすくするため、塗り足し部分をグレーにします。
校正ゲラの塗り足し

画像が入った状態
校正ゲラの塗り足し
 塗り足し部分には、画像がない状態です。

このとき、誌面左側に断裁ズレが起こったら

断裁されたもの
校正ゲラの塗り足し
 左側に、塗り足し部分(グレー)が見えてしまっています。

左側部分の拡大

このように断裁は、きっちりと仕上がり線上でされないことがあります。断裁位置が外側にズレると、余計なものが入り込んでしまい、仕上がりイメージに大きな影響を与えることがあります。このズレは、断裁の過程で防ぎようのないものです。

そのため、ズレたときを想定して誌面を少し大きく作っておきます。そこで、塗り足しという領域が生まれたわけです。

次のように塗り足しまで画像が入っていると、仕上がり線からズレて断裁されても、余計なものが入り込むことがありません。

校正ゲラの塗り足し

5:断裁ズレによる不具合2

前述の「4」の項目のように、画像が校正ゲラいっぱいに広がっているものは、塗り足しがあるかないかがわかりやすいです。ですが、塗り足しが必要なのは画像だけではありません。

塗り足しがあるもの
校正ゲラの塗り足し

塗り足しがないもの(左側)
校正ゲラの塗り足し
右側と下側は塗り足しのある状態です。

現状、赤枠で仕上がり線を入れているため、塗り足しがないのがすぐわかります。ですが、仕上がり線がない状態ではパッと見ただけだとほとんどわかりません。意識しておかないと確実に見落とします。

塗り足しがないもの(左側) ※仕上がり線なし
校正ゲラの塗り足し
 用紙サイズが大きくなってくると、さらにわかりづらくなってきます。

このとき、断裁ズレが起こったら

断裁されたもの
校正ゲラの塗り足し
 左側に塗り足し部分が見えてしまっています。

左側部分の拡大
校正ゲラの塗り足し

次のように塗り足しがある状態にしておけば、断裁ズレが起こっても大丈夫です。

校正ゲラの塗り足し

6:断裁ズレによる不具合3

仕上がり線の近くにある文字
校正ゲラの塗り足し
これも前述したものと同様、仕上がり線を入れているのでわかりやすいですが、仕上がり線がない状態では何も違和感が起こりません。

仕上がり線がないもの
校正ゲラの塗り足し

このとき、断裁ズレが起こったら

断裁されたもの
校正ゲラの塗り足し
 内側に断裁ズレが起こったため、文字が欠けてしまっています。

左側部分の拡大
校正ゲラの塗り足し

このように、仕上がり線近くにある文字には注意が必要です。

文字だけでなく、欠けてはいけない図表などが仕上がり線近くにあれば、内側に寄せる赤字を入れる必要があります。

おわりに

塗り足しがない原因は、うっかり入れ忘れたということで起こることが多いです。また、印刷の知識不足で塗り足しが必要だと理解してないことから起こる場合もあります。

この塗り足しがないと、印刷現場に迷惑をかけることがあります。少しでも後工程に負荷がかからないように、塗り足しのないものを早い段階で潰しておきましょう。

【補足】
塗り足しは有る無しだけではなく、塗り足しが不足しているということもあるので注意しましょう。

 校正ゲラの塗り足し

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