「柔らかい」と「軟らかい」の違い|意味・使い分け・ひらがな表記の判断基準

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「柔らかい」と「軟らかい」の違い|意味・使い分け・ひらがな表記の判断基準

「やわらかい」という語は「柔らかい」または「軟らかい」と表記できます。いずれも常用漢字表に訓読みとして「やわ-らかい」が掲げられており、どちらを選んでも誤りではありません。

この記事では、これらの漢字の意味合いやイメージの違いについて、用例をあげて解説します。

[記事作成にあたっては、以下の書籍・辞書・サイトを参考にしています]

『広辞苑 第七版』(岩波書店)
『明鏡国語辞典 第二版』(大修館書店)
『デジタル大辞泉』(小学館)
『記者ハンドブック 第14版』(共同通信社)
『漢字の使い分けときあかし辞典』(円満字二郎、研究社)
『毎日ことばplus』https://salon.mainichi-kotoba.jp/archives/43965

1.「柔らかい」と「軟らかい」の使い分けは対義語で考える

「柔らかい」と「軟らかい」の意味の違いについては、それぞれの対義語を考えるとイメージしやすいです。

「柔らかい」は「剛」の反対で、しなやかさや弾力を表す

「柔」は「剛」の対義語として使われることが多く、「しなやか」「弾力性がある」といった意味を持ちます。「柔らかい布団」「体が柔らかい」というように物理的な「やわらかさ」を表すほか、「物腰が柔らかい」「春は日差しが柔らかい」などの比喩的な表現としても使われます。「柔よく剛を制す」「柔軟」「優柔」といった熟語からも、外部からの力を受け流すしなやかさのイメージが読み取れます。

「軟らかい」は「硬」の反対で、手ごたえのなさや崩れやすさを表す

一方、「軟」は「硬」の対義語として、「手ごたえがない」「崩れやすい」といったニュアンスで使われることが多いです。「地盤が軟らかい」と表記すると、しっかりしておらず崩れやすいことが表現できます。「軟弱」「軟禁」「軟着陸」などの熟語にも、硬さや強度を欠く状態というニュアンスが共通しています。また、こちらも比喩的な用法として、「軟らかい話」(=堅苦しくない話)などというように使われます。

2.「やわらかい肉」は「柔らかい」と「軟らかい」のどちらがよいか

以上が使い分けの原則ですが、これらの表記については使い分けが悩ましい場面が多々あります。たとえば「やわらかい肉」を漢字で表記する際、「柔らかい」と「軟らかい」のどちらが適切でしょう。「硬い肉」の対義語と考えると「軟らかい肉」になりますが、「柔らかい肉」のほうが食欲がそそられる感じがするのではないでしょうか。

毎日新聞の校閲センターが運営するサイト「毎日ことばplus」には、「柔らかい」と「軟らかい」についてのアンケート結果が掲載されています。「『柔らかい肉』と『軟らかい肉』。印象は変わりますか?」という質問に対し、8割近くの人が「『柔』の方がおいしそう」と答えたとのことです。

「軟」という字には「軟弱」「軟便」のように、必ずしも好印象とはいえない熟語が連想されることも、こうした受け取られ方の背景にあると考えられます。

3. 使い分けは文脈や伝えたいニュアンスで判断する

漢字を使い分ける目的は、「正しい日本語」に従うためではなく、伝えたいことを適切に表現するためです。「柔らかい」と「軟らかい」については、使い分けの原則は踏まえつつもそれにこだわりすぎず、文脈や表現したいニュアンスに合わせて選ぶのがよいでしょう。

上記の「毎日ことばplus」の記事でも、「アンケート結果の通り『柔の方がおいしそうに見えるからこちら』ぐらいの緩いスタンスでよかろうと思われます」と結論づけられています。

おわりに―迷う場合はひらがなで「やわらかい」と書く―

どうしても迷う場合は、無理に漢字を使わずひらがなで表記するのも一つの手段です。

共同通信社の『記者ハンドブック 第14版』でも、肉や果実のような食べ物については、調理前の素材としては「柔」、調理の結果としては「軟」としつつも、「どちらかはっきりしない場合も多いので、平仮名書きでよい」とされています。