編集者やデザイナーにおすすめの校正記号のまとめ[最適な使い方紹介]

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編集者やデザイナーにおすすめの校正記号のまとめ[最適な使い方紹介]

「この場合って、どの校正記号を使ったらいいんだろう……?」
校正を本業としない方にとっては、校正記号の使い方で迷うことも多いと思います。

迷うのも当然で、校正記号表を見てもすべての間違いに対して、校正記号の使い方が解説されているわけではありません。

形状や使い方が似ている校正記号も複数あります。一つの間違いに対して、使用できる校正記号は一つとは限りません。場面によっては複数の校正記号を使用できることもあります。

校正記号と常に向き合う校正者同士ですら、使い方にばらつきがあります。

そこで、次のような方に適した校正記号の使い方を紹介したいと思います。

  • 編集者やデザイナーなど
  • 校正記号をがっつり使わない
  • 最低限だけでいい
  • 簡単なものにしてほしい
  • 応用できればうれしい

基本は校正記号表の本則から逸脱しないようにしています。校正記号表にガチガチに縛れている会社でなければどこでも通じる使い方です。

相手に伝わる校正指示を心掛ける

校正指示の目的は、どこをどうするかを相手に伝えることです。

1.どこを?   ⇒ 修正範囲を明確にする
2.どうするか? ⇒ 修正結果を明確にする
3.相手に伝える ⇒ 赤字が見やすい・指示内容がわかりやすい

この3つが揃っていないといけません。
逆に、この3つが揃っていれば、極論どんな校正指示も間違いとはいえません。

 次の例は、実際に原稿で見たことのある赤字です。

(A)(B)の赤字ともクライアントからの指示です。どちらも最終段階の修正指示です。A4サイズの判型の誌面内に次の赤字だけが入っているという状態です。

(A)句点を入れる指示
校正記号の句点

(B)改行する指示
校正記号

(A)と(B)のどちらが正しい校正記号かといわれれば(A)です。赤字だけ見れば問題ないです。
(B)は改行の校正記号を縦棒( | )にしています。校正記号のテストがあるなら(B)は不正解です。

ただ、(A)は、どこをどうするまではいいですが、相手に伝えるという視点が抜けています。誌面内に、ポツンと小さな赤字を書いただけでは見落とされる可能性があります。見落とされる=相手に伝わらない、ということになります。

一方、(B)は、改行指示が縦棒ですが修正箇所は明確です。指示内容もわかります。赤字を引出し線で余白まで引出しているため相手の目にも留まります。「どこをどうするかを相手に伝える」の条件を満たしています。

(B)の赤字の入れ方は校正記号表には載っていませんが、校正指示の本来の目的を達成しています。

POINT

(A)を伝わる指示に変えるなら、(B)のようにあえて引出し線を使って目立たせるか、赤字を鉛筆で大きく丸囲みして『ここにも指示がありますよ』ということを知らせておくことです。

・赤字を鉛筆で丸囲みする例
校正記号の入れ方
※誌面情報はダミーです。

編集者やデザイナーなどにおススメの校正記号の使い方

[目次]

 1:丸暗記で覚える校正記号×6つ
 2:組み合わせで覚える校正記号(引出し線+3つの赤字)
 3:記号・符号類の指示は一つの形に統一

1:丸暗記で覚える校正記号×6つ

1つめ:引出し線

・挿入(追加)の引出し線

校正記号
本来挿入指示は挿入したい文字を2股の線で挟みますが、正直そこは重要ではなく、それよりも引出し線の先端に「」を付けて、挿入位置を明確にしておくことです。

・訂正の引出し線

校正記号
訂正したい範囲を囲みます。範囲を囲む際に、周りの文字に被らないようにします。丸でなくても四角でも大丈夫です。

2つめ:アケル・ツメル

・アケル

 校正記号

・ツメル

 校正記号

3つめ:削除

削除指示は、「トルツメ」と「トルアキ」の2つだけ覚えておけば大丈夫です。
削除指示は他にもあるように思えますが、
--------------------------
トルツメトル
トルアキトルママ
--------------------------
なので2つしかありません。

「トルツメ」と「トルアキ」のほうが、「ツメ」と「アキ」が対比の関係にあるので覚えやすいです。

・トルツメ

校正記号

・トルアキ

校正記号

4つめ:改行と改行の取り消し(追い込む)

・改行(行頭を一字下げる)

校正記号
改行の校正記号だけで、改行して一字下げの意味を持ちますが、知らない人も多いので文字も加えます。

・改行(行頭を一字下げない)

校正記号

・改行の取り消し(追い込む)

校正記号
オイコム」でなくても、「追い込む」「改行トル」「前の文に送ル」などに置き換えても大丈夫です。

5つめ:入れ替え

・隣接した文字

校正記号
記号の向きは、逆S字でもS字でも両方大丈夫です。

・離れた文字

校正記号

6つめ:文字の移動

・左右への文字移動

 校正記号の字下げ

・上下への文字移動

 校正記号の上下移動

移動の指示は、どこまで移動するかの指示線(赤線部)が重要になってきます。手書きだと位置が曖昧になることも多いです。そのため、移動させたい量を指示しておく必要があります。

校正記号の字下げ

たとえば、
右へ1文字分移動させたい場合は、「移動の校正記号」+「移動量」で指示します。

校正記号の字下げ

文字数の指示として、2倍や3倍、2倍角や3倍角などの表現がありますが、1字や2字、1文字や2文字のほうが伝わりやすいです。※例では漢数字ですが、算用数字でも大丈夫です。

POINT

行頭の一字下げでも移動の指示を使いますが、記号の前半部分だけになります。

校正記号

2:組み合わせで覚える校正記号(引出し線+3つの赤字)

前述した1の「丸暗記で覚える校正記号」以外は、ほぼ以下の指示で代用できます。

・1つめ: 引出し線  +  ○○ にスル
・2つめ: 引出し線  +  ○○ トル
・3つめ: 引出し線  +  ○○ 入レル

1つめ:○○ にスル

基本の形が「引出し線  +  ○○ にスル」となるものです。

引出し線で引き出し、○○の部分に指示を入れるだけです。
※「スル」はひらがなでも大丈夫ですが、カタカナのほうが校正指示として認識されやすいです。

【赤字例】

校正記号

校正記号

校正記号

校正記号

校正記号

校正記号

校正記号

校正記号

校正記号

校正記号

校正記号

etc.

2つめ:○○ トル

基本の形が「引出し線  +  ○○ トル」となるものです。

【赤字例】

校正記号

校正記号

校正記号

etc.

3つめ:○○ 入レル

基本の形が「引出し線  +  ○○ 入れる」となるものです。

【赤字例】

校正記号
etc.

POINT

・赤字を取り消す

赤字を取り消したい場合は「イキ」を使います。ただ「イキ」の指示は、校正者でも誤使用が多いです。万一、修正側にイキとする箇所を誤解されてしまうと大きな間違いにつながります。

そのため、書いた赤字に打ち消し線を入れて、鉛筆で次のように補足しておきます。

校正記号

3:記号・符号類の指示は一つの形に統一

記号類には、ダーシ、ハイフン、音引きなど似たものがたくさんあります。

何が何と似ているかを覚えるよりも、名称を常に補足しておくほうが簡単で誤解されることもありません。

読点を入れる

校正記号
赤字の下に名称を補足します。「(読点)」の名称は赤字でもいいですが、鉛筆書きに統一しておくほうが便利です。赤字が多くなった場合に、補足の指示を鉛筆書きにしておけば、赤字がごちゃごちゃせず見やすくなります。

句点を入れる

校正記号

コロンを入れる

校正記号

全角スラッシュを入れる

校正記号
全角スラッシュしか使用しないのなら「スラッシュ」の文字だけで大丈夫です。全角スラッシュと半角スラッシュが誌面内に混在しているなら、区別して入れる必要があります。

半角中黒を入れる

校正記号
スラッシュと同様です。全角半角が混在しているなら、全角半角も指示します。

カッコを入れる

校正記号
複数のカッコを使用しているなら、名称を「パーレン」「山カッコ」などそれぞれの個別の名称で指示するとわかりやすいです。

ダーシを入れる

校正記号
ダーシは、全角・半角・2倍(=2文字分)と長さの違いがあるので、必要なら指示を入れます。

ハイフンを入れる

校正記号
ダーシやハイフン、音引きなどの横棒類には、必ず名称を補足しておくことです。そうすれば、相手に誤解されることはありません。

おわりに

校正記号の使用で大切なことは、校正記号表のルールを踏まえながらも相手に伝わりやすい指示を工夫していくことです。

「この校正記号だけで伝わるかな……」
「どの校正記号を使ったらいいかな……」
と迷うぐらないなら、校正記号でなく文で指示したほうがいいです。

文で表現するのも難しい場合は、修正結果を図で書いても大丈夫です。仕上がりイメージを書いてあげるとよりわかりやすくなり親切です。

赤字を入れる本人は、その校正記号を知っていても、赤字を見る相手が知らないこともあります。校正記号にこだわりすぎると、かえって誤解を招くことがあります。