校正をする本当の意味って何? 校正の仕事が持つ2つの役割

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校正をする本当の意味って何? 校正の仕事が持つ2つの役割

校正の仕事と言えば、誤字脱字、同音語の誤り、てにをは、表記揺れの確認など色々と思い浮かびますが、会社が変われば校正の作業内容も変わり、校正をする人によっても考え方ややり方が変わってきます。

一口に校正の仕事と言っても作業内容や手順を細かく見ていけば様々ですが、ただそこに「顧客」と「読者」が存在するならば役割はほぼ似てきます。

以下説明するにあたって、校正以外の職種まで含めると複雑になるので、シンプルに「顧客(クライアント、依頼者)」と「校正者」と「読者」の3つに絞って見ていきたいと思います。


※便宜上「校正者」としていますが、仕事で校正をする方なら誰にでも当てはまります。

校正の仕事における2つの役割

校正の仕事には次の2つの役割があります。

1. 顧客が伝えたい情報を正確でわかりやすいものにする(顧客目線
2. 顧客が伝えたい情報を読者にスムーズに伝わるようにする(読者目線

この「顧客目線」と「読者目線」の2つの視点から役割を詳しく見ていきます。

1.「顧客目線」での校正者の役割について

校正における顧客目線とは、顧客が伝えたい情報を正確でわかりやすいものにするということです。

顧客から支給される情報(原稿)の不備、間違いなどの個別の事象から、その間違いによって顧客にどのような影響があるのかを考えることが顧客目線につながります。

1-1. 文の情報が不足している・意味がわかりにくい

顧客から支給されたコピーの情報が不足していたり意味がわかりにくかったりする場合。
たとえば顧客から新製品のコピーとして次の文が支給されたとします。

『この新製品の重さはたったの3㎏です。』

新製品に関連する製品情報を知っている人なら、この文を読んだだけで3㎏の凄さがわかります。一方で「3㎏? だから何?」で終わってしまう人もいます。

このような場合は情報の不足が考えられます。対処法の一つとして、比較対象の文を補足すると3㎏の凄さがより伝わりやすくなります。

ただ、校正では勝手に文を加えることはできないので、比較対象の文などを入れる旨の疑問出しで対処することになります。

以下のように、比較対象の文が加われば3kgの凄さがより明確になります。

『他社製品が5㎏以上に対し、この新製品の重さはたったの3㎏です。』
『当社従来品◯◯(5kg)に比べ、この新製品の重さはたったの3㎏です。』

顧客から得られる情報だけでは、顧客の本当に伝えたいことが見えてこない場合があります。そのようなっときには校正者が客観的に文章を見て判断します。

このコピーで顧客が伝えたいことは、新製品が3kgだという単なる重さの情報でなく、これまでの製品よりも格段と軽量化されたということです。その部分をより詳しく説明することで顧客の情報をわかりやすくすることができます。

1-2. 事実関係に誤りがあった場合

事実関係が間違っていた場合は、顧客が伝えたい情報の正確性を欠くことになります。
たとえば「3kg」が「2㎏」になっていた場合。

『この新製品の重さはたったの2㎏です。』

事実関係の間違いは致命的なミスです。

読者の視点からすれば、
「嘘の情報で新製品をよく思わせようとした?」
「他にも間違った情報があるかも?」
など不信感が募ります。

一つの間違いによって文章全体の信憑性が損なわれることになりかねません。そのために文章の情報が正確であるか確認することは、校正の仕事において重要な役割になってきます。

1-3. 誤字脱字があった場合

誤字脱字は校正でもっとも多く見られる間違いです。単純に誤字脱字と捉えるだけでなく、本当の問題は誤字脱字によって顧客の情報のわかりやすさが損なわれることにあります。
たとえば、文末の「で」が抜けていた場合。

『この新製品の重さはたったの3㎏す。』

この場合、読者の意識が間違いのある箇所に行ってしまい、顧客が本来伝えたい情報が読者の頭の中にスムーズに入りません。

校正で間違いがあれば、そこだけにフォーカスされがちですが、大きな問題は別のところにあります。誤字脱字は、顧客の伝えたい情報をぼやかせる原因となります。

1-4. 文章の体裁などがおかしい場合

文章の一部を強調して目出たせることは表紙や見出しなどでよく見られます。
たとえば、強調範囲が間違っていた場合。

『この新製品の重さは、たったの3㎏です。』

この文を見た読者は、
「どうして『』まで強調されているのだろう?」
「『』の赤色は間違いじゃないの?」
など色々と疑問が起こるかもしれません。

読者に要らぬ詮索をさせることになるため、これも誤字脱字と同様、顧客の伝えたい情報が読者にスムーズに伝わらないことになります。

その他にも顧客と読者の情報伝達を阻害させる要因はいくつもあります。
・一つの文が長い
・修飾語が多い
・助詞の連続 (例:彼先に留まった紋白蝶)

これらに気を配るのも校正の役割の一つとなってきます。

以上の1-1から1-4までの例は校正でよく見かける間違いですが、これらの間違いには共通点があるとわかったと思います。

情報の補足、事実確認などは、顧客の伝えたい情報を正確に伝わりやすくするものになります。また誤字脱字、体裁の間違いなどをなくすことで、顧客の伝えたい情報を阻害する要因をなくすことができます。

情報伝達をする上では正確でわかりやすく、それを阻害する要因となるもの取り除く必要があります。そうすることで冒頭で述べた役割、「顧客が伝えたい情報を正確でわかりやすいものにする」を担えることができます。

2.「読者目線」での校正者の役割について

一方で、校正をする際は顧客だけを見ていればいいわけでもありません。これが冒頭で述べた2の役割、顧客が伝えたい情報を読者にスムーズに伝わるようにするです。

たとえば、読者層が子ども向けなら文章中に難しい漢字や語句、言い回しがあれば、読者層に合わせた表現に変える必要があります。ルビを振るなどの配慮も必要です。

また文章中に専門用語が使われている場合、一般の読者向けなら専門用語に対して補足の説明が必要になってきますが、読者層が特定の業界に向けたものなら専門用語に対して補足説明など不要な場合もあります。

さらに、社内報などは一企業の中で読まれるものなので、社内で周知の用語への補足は省略されます。たとえば、社内の勤怠管理システムの名称を「KKS」としているのなら、「来年度からKKSの一部が変わります。」という文があっても補足する旨をあえて指摘しないこともあります。

「来年度からKKSの一部が変わります。」
「来年度からKKS(社内管理システム)の一部が変わります。」
補足しても間違いではないですが、誰もが知っている用語への補足は文がくどくなります。

他にも、何かのセミナーやイベントごとで開催日が祝日にあたる場合。

3月20日(水)15:00~」と記載されていると、
これを見た読者は「平日か、行けないなぁ」となる可能性があります。

それに対して、
3月20日(水・祝)15:00~」と水曜日が祝日であることを明記しておけば、祝日と知らなかった読者に対しても集客が見込めます。

顧客の情報を一字一句正確に発信したとしても、読者にそれを受け取るだけの知識や理解度が不足していれば情報が伝わりません。「読者」と「顧客」の知識や理解度のギャップを埋めるのも校正の重要な仕事の一つです。

おわりに

校正の仕事は、情報を伝える側、受け取る側の情報伝達の橋渡し的な役割を持ち、ギャップがあればそれを埋め、情報を阻害する要因があるなら取り除きます。

校正の業務領域は職場によって変わるので、どこまで対応できるかは難しいかもしれませんが、「顧客目線」と「読者目線」は大切になってきます。

特に文章の素読みや校閲的な領域にまで踏み込みたい気持ちがあるなら、このような目線を持っておく必要があります。色々な視点を持つことは、よりよい文章にするのに欠かせない要素です。