「努める」と「務める」と「勤める」の意味と違い[例文で使い分け解説]

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「努める」と「務める」と「勤める」の意味と違い[例文で使い分け解説]

 「つとめる」という語を漢字表記する場合、主に「努める」「務める」「勤める」の3つの漢字が使われます。「勤務」という熟語もあるように、近い意味で使われることもあるので、使い分けに迷うケースもあるかもしれません。この記事ではこれらの漢字の使い分けについて、具体的な例文を挙げながら解説します。

[記事作成にあたっては、以下の書籍・辞書・サイトを参考にしています]

・『デジタル大辞泉』(小学館)
・『明鏡国語辞典』(大修館書店)
・『広辞苑』(岩波書店)

1.「努める」と「務める」と「勤める」の意味と違い

「つとめる」の使い分けは、それぞれの漢字を含む熟語をイメージすると判断しやすいです。

努める = 努力
務める = 任務
勤める = 通勤、勤行

<努めるの意味>

「努力して物事を行う」という意味の場合は「努める」と表記します。「業績向上に努める」「努めて冷静さを保つ」などというように使われます。「努力する」と言い換えることができるときは「努める」だと考えるとよいでしょう。

<務める意味

「務める」は「任務や役割を引き受ける」という意味で使われます。「社長を務める」「主役を務める」のように役職や肩書、役割などに接続する場合は「務める」だと覚えておきましょう。

<勤める意味

「勤める」は、「会社に勤める」「看護師として病院に勤める」というように、「職員として働く」場合に使われます。このように「(場所)につとめる」という形のときは、「その場所に通勤する」ことをイメージすると「勤める」だと判断しやすいです。そのほか、頻度は低いですが、「仏事を行う」ことを指す「つとめる」にも「勤める」の字を使います。「勤行(ごんぎょう)」(仏道修行をすること、時間を決めて仏前で読経や礼拝をすること)という熟語を覚えておくと手がかりになります。

2.「努める」と「務める」と「勤める」の問題

前述の説明を踏まえて、以下の文中の「つとめる」を漢字で表記する場合、それぞれ「努める」「務める」「勤める」のうちのどれがふさわしいか考えてみてください。

問題①

Q
1. 新卒で入社した企業につとめ続けている。
2. 目標を達成できるようつとめる
3. 教師として地元の学校につとめる
4. 新しい社長として、経営再建につとめる
5. 担当者が休みのため、急遽代理をつとめる
6. プロジェクトチームのリーダーをつとめる
7. 難しい計画だが、実現に精一杯つとめる
8. 友人の結婚式で受付係をつとめる

解説

Q 1. 新卒で入社した企業につとめ続けている。

1つ目の例文中の「つとめる」は「職員として働く」意なので、「勤める」と表記します。「企業に通勤する」ことをイメージすると判断しやすいでしょう。

新卒で入社した企業に勤め続けている。

Q 2. 目標を達成できるようつとめる

2つ目の例文中の「つとめる」は「目標を達成できるよう努力する」と言い換えることができるので、「努める」が適切です。

目標を達成できるよう努める

Q 3. 教師として地元の学校につとめる

3つ目の例文は「学校に通勤する」ので「勤める」と判断できます。なお、「地元の学校で教師をつとめる」という表現であれば、「教師という役割を引き受ける」意なので「務める」となります。

教師として地元の学校に勤める

Q 4. 新しい社長として、経営再建につとめる

4つ目の例文は2つ目と同様に「経営再建に努力する」と言い換えられるので、「努める」とします。

新しい社長として、経営再建に努める

Q 5. 担当者が休みのため、急遽代理をつとめる
Q 6. プロジェクトチームのリーダーをつとめる

5つ目の例文の「代理」は役割なので、「務める」が使われます。6つ目の例文も同様に、「リーダー」という役割を「務める」となります。

担当者が休みのため、急遽代理を務める
プロジェクトチームのリーダーを務める

Q 7. 難しい計画だが、実現に精一杯つとめる

7つ目の例文は、2つ目・4つ目の例文と同じく「実現に精一杯努力する」と言い換えられるので、「努める」が適切な表記です。

難しい計画だが、実現に精一杯努める

Q 8. 友人の結婚式で受付係をつとめる

8つ目の例文は「受付係」という役割に接続しているので「務める」となります。

友人の結婚式で受付係を務める

同様に、以下の例文についても「努める」「務める」「勤める」のどれが適切か考えてみてください。

問題②

Q
1. 重苦しい雰囲気を和らげようと、つとめて明るく振る舞う。
2. 法事をつとめる
3. 昔から秘書をつとめてきた彼は、社長の性格を熟知している。
4. 秘書として採用されたので、社長の性格を把握しようとつとめる
5. 長年つとめた会社を辞める。
6. 長年つとめた社長を辞める。
7. 良好な関係を築こうとつとめる
8. 主役をつとめることになり、緊張している。

解説

Q 1. 重苦しい雰囲気を和らげようと、つとめて明るく振る舞う。

1つ目の例文のように「無理に(=努力して)行う」場合は「努める」を使います。

重苦しい雰囲気を和らげようと、努めて明るく振る舞う。

Q 2. 法事をつとめる

2つ目の例文の「つとめる」は「仏事を行う」ことなので、「勤める」と表記します。

法事を勤める

Q 3. 昔から秘書をつとめてきた彼は、社長の性格を熟知している。

3つ目の例文では「秘書」という肩書・役割に接続しているので、表記は「務める」となります。

昔から秘書を務めてきた彼は、社長の性格を熟知している。

Q 4. 秘書として採用されたので、社長の性格を把握しようとつとめる

4つ目の例文は「社長の性格を把握しようと努力する」と言い換えられるので、「努める」がよいでしょう。

秘書として採用されたので、社長の性格を把握しようと努める

Q 5. 長年つとめた会社を辞める。
Q 6. 長年つとめた社長を辞める。

5つ目の例文では「つとめた」のは「会社」なので、「勤める」を使います。6つ目の例文は5つ目と似ていますが、「つとめた」のは「社長」という役職なので、こちらは「務める」が適切です。

長年勤めた会社を辞める。
長年務めた社長を辞める。

Q 7. 良好な関係を築こうとつとめる

7つ目の例文中の「つとめる」は「努力する」と言い換えられるので、「努める」とします。

良好な関係を築こうと努める

Q 8. 主役をつとめることになり、緊張している。

8つ目の例文の「主役」は役割なので、「務める」を使います。

主役を務めることになり、緊張している。

おわりに

以上、「努める」「務める」「勤める」の使い分けについて解説しました。

漢字の使い分けは、たとえば「固い」と「硬い」のように、「どちらを使っても間違いではない」というグレーゾーンが広いものもあります。

しかし「つとめる」に関しては、どちらでもいいという場面は少なく、使い分けのルールが比較的はっきりしています。その分、一度理解してしまえば迷うことも少なくなるはずなので、この記事を読んでルールを身につけるように「つとめて」ください。