![こんな依頼は嫌だ!校正者がやりづらい仕事とは?[依頼方法の改善のヒントに]](https://kousei.club/wp-content/uploads/2025/01/Hard-work-with-proofreading.jpg)
目 次
こんな依頼は嫌だ!校正者がやりづらい仕事とは?
同じ「校正」の案件であっても、それぞれに内容や事情が異なります。書籍なのかウェブコンテンツなのか、日本語的なチェックだけなのか事実確認も含むのか、作業期間が長いか短いか、クライアントが出版社なのか編集プロダクションなのかなど、さまざまなパターンがあります。当然ながら、すべてスムーズに進められるとは限らず、やりづらさを感じる案件も出てきます。
この記事では、校正者としてやりづらいと感じる案件について、いくつか例をあげて解説します。依頼方法を改善する際のヒントにしてみてください。
1. 作業内容が曖昧
特に校正の依頼経験が少ないクライアントの場合、「校正をお願いします」とだけ依頼されることがありますが、校正者はそれだけの情報では作業を始められません。
一言で「校正」と言っても、誤字脱字などの日本語的なチェック、事実確認(ファクトチェック)、原稿の確認、再校以降の場合は赤字照合など、さまざまな作業が含まれるためです。
作業内容が曖昧な場合、クライアントが求めている作業内容をヒアリングするところから始めなければならないため、校正者側にとっては負担となります。校正を依頼する際には、求める作業内容を事前に整理し、できる限り具体的に伝えてもらえると、校正をスムーズに進めることができます。
2. スケジュールが変更になった際に連絡がない
進行の具合によって、校正スケジュールが依頼時と変わることはままあります。それ自体は校正者も理解していますが、スケジュール変更があったにもかかわらず、その連絡がないと非常に困ります。
校正者は予告された日程に合わせて予定を調整しているので、大幅にスケジュールがずれると他の案件と作業時期が重なるなどして、依頼そのものを断らざるを得なくなるケースもあります。
スケジュール変更が早い段階でわかれば、他の案件の調整などで対応できることもあります。そのため、ずれることが判明した時点で、できるだけ速やかに連絡をもらえると非常に助かります。
ただ、実情としては、校正開始予定日になっても音沙汰がない、あるいは連絡なしに早々とゲラが送られてくるといったケースも少なくありません。このような事態は、校正者のスケジュールを混乱させ、他の案件にも影響を及ぼす原因となるので避けてほしいものです。
3. 依頼時の申し送りに漏れがある
情報の伝達漏れによって、余計な手間が増える場合があります。
たとえば、媒体での表記ルールがあらかじめ定められているのにそれを伝えられていないというケースです。本来であればそのルールにあわせて指摘を出せばよいのに、ルールがあることを知らされていなければ、全体の表記傾向を調べ、多出にそろえる指摘を出すという手間がかかります。さらにゲラでの多出傾向がルールと逆であると、出した指摘もすべて無駄になってしまいます。
クライアント側としても、不要な指摘が入っている上に本来やってほしかった作業ができていないことになり、お互いにとって非効率です。こうした事態を避けるため、校正前に決まっている事項があるなら、漏れなく申し送りをしていただきたいものです。
4. 実作業の負担感とクライアントの想定が一致していない
校正の各作業にどの程度の時間や労力がかかるのかは、実際に校正をした経験がなければ見当がつきにくいものです。クライアントが校正経験のない編集者などの場合、作業時間や負担の想定について、クライアント側と校正者側で食い違うことがあります。
たとえば地図の校正がそうです。図中の文字情報はそれほど多くないので、すぐ校正が終わりそうに見えるかもしれません。しかし実際には以下のように、文字情報以外にも確認すべきポイントが多数あります。
【地図上の情報】
・地名の表記や位置
・国境線や県境線
・河川の流路や海岸線 など
【体裁】
・マークの統一が取れているか(首都は二重丸、その他は一重丸 など)
・文字のフォントや大きさの統一が取れているか(国名は太字、都市名は細字 など)
・線の統一が取れているか(国境線は実線、州境の線は点線 など) など
加えて、作業を始める前の段階として、その地図の校正に使えそうな資料を探し出すだけでも相当な時間がかかることがあります。
しかし、実際に校正作業をしたことがなければ、こうしたことに思い至るのは難しいです。結果として、クライアントの想定よりも時間がかかり、揉め事の原因になることもあります。
おわりに
以上、校正者の立場でやりづらいと感じる案件の例をあげました。校正者の方であれば、「あるある」と共感できるものもあったのではないでしょうか。
ただ、こうしたやりづらい案件であっても、クライアント側にも悪気があるわけではないはずです。多忙で連絡が滞っているのか、あるいは校正の依頼をすることに不慣れで必要な情報を把握しきれていないのかなど、校正者としては先方の事情も考慮しながらやり取りをするのがよいでしょう。