![文章の見直しでミスを防ぐ実践的なやり方[目の慣れをリセットする]](https://kousei.club/wp-content/uploads/2025/02/How-to-effectively-review.jpg)
目 次
文章の見直しでミスを防ぐ実践的なやり方[目の慣れをリセットする]
校正の仕事では、同じ文章を何度も読み返すことがあります。文章の内容をより深く理解するために、二度三度読み直すのは不可欠なことです。
ただ、人の脳は、できるだけ負担を減らし効率的に情報を処理しようと働きます。たとえば、同じ文章や単語を繰り返し目にしていると、脳は「もう理解した」として処理し、注意やエネルギーを最小限に抑えるようになります。その結果、無意識に注意力や集中力の低下を招くことになります。
この状況を解決するのにもっとも効果的な方法は、適度に休憩を取ることです。文章から一旦離れて、しばらく時間を置くことで、脳がリフレッシュされ、文章を改めて新鮮な目で見ることができます。
とはいえ、実際の仕事では時間を十分に空けるのが難しいこともあります。
そんなときには、見慣れた文章に視覚的変化をつけ、脳に新しい情報であると認識させます。
この記事では、文章を新鮮な目で見られるようにする視覚的変化ついて紹介していきます。参考になるものがあればぜひ試してみください。
対策①:PCから紙へ(紙に印刷する)
● 印刷して画面から紙面へ
PC → 紙
PCの操作に長けた方でも、いざ校正する際には紙に印刷して確認することが多いかと思います。同じ文字でも紙に印刷することで、画面上の文字とは違った印象を受けます。この見え方の違いにより、目の慣れが軽減され、新鮮な視点を得ることができます。この方法は何気に実践されている方も非常に多く、見直しの対策としてよく言われるものの一つです。
また紙ならではのメリットもあります。
印刷された紙で文字を見ていく際、ペン先や指を使って直接その文字に触れながらなぞって確認していくことができます。その際に、何か気になることや間違いがあれば、すぐさま書き込むことができます。この直観的な行為はPCでは実現できない紙ならではの大きなメリットです。
煩わしさがないということは、文字への集中力を阻害させる要因を減らすことができるということです。
さらに、PCで作成している紙面サイズが大きければ、ディスプレイのサイズが制約となり100%表示では全体を確認できないことがあります。その反面、紙に印刷すれば全体を俯瞰することが容易です。
全体を把握して文章を読むのと、部分的に文章を読むのとでは、視点が大きく変わるので視覚的変化の効果を大きく受けられます。
対策②:PCとスマホ(デバイスを変える)
● 異なるデバイスで確認
PC → スマホ
Web記事であれば、PCで作成したものをスマホで表示することで、画面サイズや表示方法(文字の大きさ、改行位置など)が大きく変わるため、文章の見直しには効果的です。見え方が大きく変わるため、視覚的変化を加えるのに役立ちます。(※PCの画面からでも、【右クリック】→【検証】でスマホやタブレットサイズでの表示が可能です)
Googleドキュメントを使って文章作成をしているなら、PCとスマホ両方から簡単に同一ファイルへアクセスできます。実際に同じ内容の文章を異なるデバイスで見てみて、どういった視覚的変化があるか実感してみてください。
対策③:PC画面の反転表示
● 画面の文字を白黒反転させる
画面の背景色と文字色を反転させることで、見慣れた文章が全く違うように感じられます。これにより目の慣れに変化を与えることができます。白黒反転は、使うソフトやデバイスによって名称は異なり、ダークモードなどとも呼ばれます。
<Googleドキュメントでのやり方>
以下の画面は、PCで作成した『Wordファイル』をGoogleドライブに保存し、スマホの『Googleドキュメント』で『Wordファイル』開いたものです。
1. 通常は「ライトモード」で表示されます。
2. スマホ画面右上の三つの縦の点をクリックした状態です。
ここで【ダークモードで表示】を選択します。
3.「ダークモード」で表示された画面です。
4.「ライトモード」と「ダークモード」を並べてみると、同じ文章でもどれだけ印象が違うかわかると思います。この見え方の違いが、新鮮な目で見ることにつながります。
<Wordでの白黒反転のやり方>
以下は、PCでの『Wordファイル』の白黒反転表示のやり方です。
やり方:ファイル → オプション → 全般 → officeテーマから「黒」を選択 pic.twitter.com/VpHrrqJuts
— 校正視点 (@kurecity7370826) July 14, 2024
ダークモードの画面で、黒い背景に白い文字で見ることにより文字が目立って見えるという方もいます。普段からダークモードを使用している方も多いかもしれません。その場合はライトモードで見直すのがいいでしょう。
またダークモードでなくても、夜間モード(ナイトモード)にした場合でも画面の色調が変わるため、見え方に多少の変化を及ぼしてくれます。
対策④:PCや紙の大きさを変える
● 表示倍率を変える
<PC>
PCのブラウザならズームで10%縮小するだけでも見え方が大きく変わります。また縮小することで、見える範囲も広がるので効き目があります。
<紙>
紙での大きさの変更は、コピー機で縮小印刷をします。A3程度で出力された紙面であるなら効果が高いです。
A3なら87%に縮小することで、標準(100%)の視野よりも、さらに全体を捉えやすくなります。なお、紙面がカラーであるなら、カラーコピーした際に色が少し薄くなるので、濃度は濃いめに調整しておきましょう。
PCや紙の大きさを変えるポイントは、現状の大きさよりも縮小することです。拡大だと、見慣れたものよりも視野を広く取らなければいけないので負担が増してしまいます。
対策⑤:フォントを変える
● フォントを変える
フォントを変えると字形が変わるので、文字の印象もグッと変わります。
■ ゴシック
■ 明 朝
ゴシック系の文字を明朝系にすることで、文字の見え方だけでなく、とめ・はね・はらいが強調されます。上の『ダーシ』の文字の音引きに注目していただくとわかりやすいですが、音引きなどの横棒の違いも明確になります。
■ ゴシック
■ 明 朝
【出典:『ヴィトゲンシュタイン 世界が変わる言葉 エッセンシャル版』 (ディスカヴァー・トゥエンティワン)】
長文であれば文章の見た目を変化させる効果も大きいです。見慣れたフォントから全く異なるスタイルのフォントに変更することで、視覚的な違和感が生まれ、新しい情報として捉えやすくなります。
またダーシや句読点など、フォントを変えることで細部の誤りを見つけやすくなります。
【補足】リーディングモード(Chrome)を使用する
Chromeの「リーディングモード」を使用すれば、【対策④・⑤】の両方を簡単に試すことができます。
リーディングモードは、Webページを読みやすくするための機能です。これを使うと、広告や余分なデザイン要素が取り除かれ、テキストや画像などの情報だけが表示されます。フォントや文字の大きさ、背景色、行間、文字間なども変更できます。
<リーディングモードの使い方>
1. 画面右上の三つの縦の点をクリックし、【その他のツール】→【リーディングモード】へ進みます。
2. ブラウザのサイドに「リーディングモード」の画面が出てきます。現在見ているWebページの記事情報だけがシンプルに表示されます。
3. 次のように、背景色も画面の左右サイズも変更可能です。
対策⑥:外部からの影響を変える
● 作業場所・作業環境を変える
・場所
PCでも紙であっても、作業する場所を変えることで、視野に入る情報が違ってくるので慣れを緩和させてくれます。たとえば、机の色が変わるだけでも視覚的変化の影響を受けます。場所を変えることで、無意識に視野の端に捉えている情報に変化が生じます。視覚的変化は、周囲の環境にも大きく影響されます。
・デスクライト
作業スペースを変えられないという方も多いと思います。そういった場合は、紙に関してだけですが、デスクライトの明るさを調整するだけでも文字の見え方に影響があります。デスクライトの明るさを調整できるものは視覚的な刺激を加えるのに有効です。
これは実体験になりますが、普段校正をする際はややオレンジがかった温白色にしていますが、ちょっと集中力が落ちてきたというときや、素読みの2回目など少し見方を変えたいという場合には、昼光色にして作業をしています。
おわりに
校正の仕事は、高い集中力を求められます。しかし、長時間集中し続けるのは容易なことではなく、時間が経つにつれて注意力が散漫になってしまいます。
適度に休憩を取るのがいいとわかっていても、忙しいときにはできないこともあります。ただ、少しの工夫次第で、新鮮な目で文章を見直すことができます。
この「新鮮な目で見直す」というのもミスを見つける大事な対策の一つです。
ひと手間かかって面倒と思うかもしれませんが、トータルで見れば、より精度の高い校正作業が可能になります。既に実践されている方も多いと思いますが、参考になるものがあればぜひ一度お試しください。