校正のパタパタ(あおり校正)のやり方[動画で解説]
校正技術の一つに、パタパタとよばれるものがあります。
これは、「あおり校正」「あおり検版」「めくり合わせ」「ペラペラ」などともよばれます。今では、この作業はデジタル検版に置き換わっていることも多いですが、校正者なら誰でも知っているものです。
※拡大するとわかりやすいと思います
この作業が、パタパタ(あおり校正)といわれるものです。
原稿とゲラを重ね合わせて、“パタパタ”と素早くめくり、何か不具合が起こっていないかを見つけます。見つけるというより、あぶり出すという感覚に近いかもしれません。
このパタパタという作業は、校正者だけがやっているイメージですが、他の職種でもやっている方は多いです。有名なところでは、紙幣の検査などでも行われている作業です。
▼ このパタパタの作業を間違い探しでたとえると。
通常、次のような間違い探しをするとき、左右の絵を交互に見比べながら間違いを探していくと思います。
【出典:新潟県庁HP『間違い探しで火災の危険を覚えよう!』より】
ですが、パタパタでは2つの絵を重ね合わせて間違いを探し出していきます。
次のようなイメージで間違いが見えます。
どちらがわかりやすいかは一目瞭然です。
半信半疑な方は、無料でダウンロードできる間違い探しで、是非一度パタパタを試してみてください。左右の絵を目視で見比べるのと、パタパタで比べるのとでは、どれぐらい時間と精度に差があるのかわかるはずです。
> 間違い探しの無料ページ ※Googleの検索画面に飛びます
1. パタパタの見方
パタパタの基本的な考え方は、修正された箇所以外がおかしくなっていないかを確認するものです。
たとえば、
オペレーターが間違った箇所を修正してしまったとか、赤字を直したせいで何かと何かが重なってしまったなどの不具合がないか確認します。
見方としては、一字一句見ていくというよりもブロック単位で見ていきます。やや俯瞰した感じで見るのがコツです。
誌面全体を見ないと気づけないような間違いもあるので、全体を俯瞰するイメージを常に持っておきます。
※部分部分を見てから、最後に全体を俯瞰しながらパタパタするというやり方でも大丈夫です。自分のやりやすい方法を見つけてください。
原稿とゲラ、重ねるときはどっちを上にするか?
原稿とゲラのどちらを上にするかに明確な決まりはありませんが、状況をみて変える必要があります。パタパタの性質上、上にするほうの紙は手に持って素早くめくるので何度も折れ曲がります。そのため、どうしても紙にシワができてしまいます。
後でスキャンを取る必要がある場合など、コピー機に流し込んだときに紙のシワのせいで紙詰まりが起こることもあります。そのような場合には、上下をどっちにするかあらかじめ決めておかなければいけません。
2. パタパタの準備
▼ 動画の解説で使用する原稿とゲラは以下からダウンロードできます。
・パタパタ用の原稿 > こちら
・パタパタ用のゲラ > こちら
1. まずは、原稿とゲラを通常の校正作業で確認します。
2. ゲラには、確認した部分にマーカーでチェックを付けておきます。
・チェックを付けたゲラ
チェックを付けることで、
・赤字の指示があって変更した箇所なのか
・意図せず変わってしまった箇所なのか
変更理由がすぐにわかります。
修正箇所が少なければ、どこを修正したかがすぐにわかりますが、複数箇所に修正があると覚えきれません。そのため、記憶に頼らずにちゃんと校正をした箇所にチェックを付けておきます。
3. その後、赤字で修正された箇所以外に不具合が起こっていないかを確認していきます。
ここでパタパタを使用します。
4. 原稿とゲラを重ね合わせるときはトンボを基準にします。
・原稿
・ゲラ
次の項目で紹介する動画では、左上のトンボを基準に原稿とゲラを合わせています。
3. パタパタ<動画で解説>
▼ 上段部分
上段は赤字がなく、赤字による影響もないのでブロック単位で見る感じでパタパタしています。
最初に2~3回ゆっくりパタパタとしているのは、原稿とゲラのトンボの位置合わせをしています。
▼ 中段部分
中段は赤字があり修正されているので、重点的にパタパタで見ていきます。
特に、今回は一行削除されているため、削除された分だけ全体が上へあがっているかの確認が必要です。
▼ 下段部分
下段には赤字がありませんが、中段の赤字により全体が上へあがっています。そのため、すべての要素が上へあがっているか確認します。
誌面の下側のパタパタがやりにくければ、手の持つ部分を変えたり角度を変えたりしてみて、自分がやりやすい位置を見つけてください。
どういう間違いが起こるか?
■ 正しい状態(GIF動画)
一行削除された場合、基本は削除された分だけ全体を上へあげる必要があります。
■ 間違っている状態(GIF動画)
この例では、一行削除されたにもかかわらず、その段落でしか調整されていません。そのため、2段目と3段目の間隔が空き過ぎになります。
こういう間違いは目視だけだとなかなか見つけにくいものですが、パタパタだと瞬時にわかります。
また、赤字が多かったりイラストや画像のレイアウト変更があったりしたときなどは、全体を目視で確認するのが大変なため、パタパタでの確認が効果的です。
効果的な練習方法
パタパタをしていて、自分がちゃんとできているのか不安という方は、前述した間違い探しで練習するのが効果的です。
無料のものをA4ぐらいに拡大コピーして、パタパタで間違い探しをするだけです。数回試せば、パタパタがちゃんとできているかどうかわかります。
間違い探しで練習するのは、
・間違いが必ずある
・答え合わせが自分ですぐできる
というメリットがあります。
目に見えて効果がわかるので、練習のモチベーションもあがります。
注意点としては、パタパタは視野が特定の部分に集中しやすいため、俯瞰するイメージを持ってやるのを忘れないようにすることです。