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イタリックとボールド/大文字と小文字の校正記号を使う前に心掛けること
校正するにあたって、校正者でも校正が本業でない方でも、まずは校正記号を覚えようとするものです。ただ校正記号の中には、使用頻度の高いものもあればそうでないものもあります。
初めのうちは使用頻度なんてわかりませんが、仕事をしていると段々とわかるようになります。同じような意味を持つ校正記号もあれば、現在では形骸化されていてほぼ使用されない校正記号もあります。
そのため赤字を入れる際は、誰が見ても伝わる校正記号を選択する必要がでてきます。
▼ 校正記号の使い方を詳しく知りたい方は、以下の記事を参照ください。
> 校正記号:イタリック体(斜体)と立体(ローマン体)の使い方
> 校正記号:太字(ボールド)にする・太字を普通の文字に戻す
> 校正記号:大文字・小文字[小文字を大文字にする・大文字を小文字にする]
校正記号表に縛られないように
校正作業は、校正者だけがするものではありません。編集、進行管理、デザイナー、オペレーター、営業、広報、クライアントなど、その媒体に携わる人、すべてが何らかの形で校正をしています。
中には校正記号に詳しくない方も多くいます。知らないのも当然で、他の職種の方は、校正以外にも覚える業務が山のようにあるからです。校正記号だけが特別で、全員覚えておくべきものだともいえません。
印刷物に携わっている校正者が、基本的な印刷知識やDTPのことを知らないのと同様です。
特にクライアントの場合は、校正記号で指示を入れずに、文で指示を入れてくることも多いです。そのほうがむしろ曖昧な校正記号を使われるより、わかりやすくて有難い場合もあります。
校正記号の使用にあたっては、単に校正記号表に載っているからという理由で使用するのではなく、伝わりづらいもの・わかりにくいものの使用は避けたほうが安全です。
━ その理由として ━
・間違いのリスクが大きい(書き間違い、読み間違い、解読間違い)
・校正記号をすべて理解している人は、校正者の中でも少ない
・自分(赤字を入れる側)が知っているから、相手(赤字を見る側)が知っているとは限らない
・そもそも校正者以外は、校正記号に興味がない
校正記号は訂正指示を相手に伝える一つの手段なだけです。相手に伝わらなければ、何も意味をなさない単なる記号でしかありません。
校正記号で指示するよりも、文にしたほうが訂正内容が伝わりやすいことも多いです。
まぎらわしい校正記号1:イタリックとボールド
▼ イタリックに訂正する校正記号
・訂正したい部分に下線を入れます。
▼ ボールドに訂正する校正記号
・訂正したい部分に波線を入れます。
イタリックやボールドにしたい場合、以上のような校正記号を使用します。
ですが、これらの使用は2つの理由でおすすめしません。
1. イタリックとボールドにする校正記号は、どちらもフォントの体裁の指示のため同じカテゴリーのものとして、下線と波線のように似た指示にしたのだと思います。ただ、これが逆に混同する原因になります。似たような指示では「どっちだったかな……」という迷う可能性が高くなります。
2. 単に文字の下に下線と波線を入れるだけでは、目立ちにくく修正する側が見落としてしまう恐れがあります。この理由がおすすめしない一番大きな理由です。
日本語に、イタリック体(斜めにした専用の文字)はありません。厳密にいえば、オブリーク体(斜めに傾けた文字)とするのが適切です。
イタリックは欧文フォントに対して使う指示です。だからといって、すべての欧文フォントにイタリック体があるわけでもありません。
ただ一般的には、斜めにした文字=イタリック体と広く浸透しているので、赤字を入れる際は「イタリック」で問題ありません。
まぎらわしい校正記号2:大文字と小文字
▼ 大文字に訂正する校正記号
・訂正したい部分に三本線を入れます。
▼ 小文字に訂正する校正記号
・訂正したい部分に「丸付きの小」で指示します。
・おすすめしない理由
イタリックとボールドの校正記号とは違い、似た記号でないため混同することはないと思います。ですが、前述(2)の理由により、大文字の校正記号が目立たず、他の赤字の中に埋もれる可能性があります。見落としのリスクが高まります。
伝わる校正記号:イタリック・ボールド・大文字・小文字
赤字を見る相手が校正記号に詳しいとは限りません。そのため、誰が見てもわかるような指示を選択する必要があります。
▼ イタリック・ボールドにする赤字
▼ 大文字にする赤字
小文字の校正記号に合わせて、この指示がわかりやすいと思います。さらにわかりやすくするなら、次のように直接文字で指示するほうが誰にでも伝わるのでおすすめします。
▼ 大文字と小文字にする赤字