「等」と「など」の使い分け[漢字表記?ひらがな表記?]
「等」の漢字は、「など」「とう」「ら」と読むことができます。漢字で書くこともあれば、ひらがなで「など」と記すこともあります。
通例として、法令文や公用文を始めとする正式な文書では、ひらがなの「など」は使用せず、漢字の「等」が使用されます。その際の読み方は「とう」になります。
・法令文や公用文 → 等(とう)
では、一般的な文章ではどの表記が適切か?
漢字の「等」も、ひらがなの「など」もよく見かけます。一つの文章内で両方の表記が使用されている場合もあります。
漢字とひらがな、どっちの表記がいいか、例題を交えて紹介していきたいと思います。
「等」と「など」の使い方
「等」も「など」も基本的な使い方は、同じようなものを並べて「似たようなものが他にもまだあります」と伝えたいときに使う語です。
・リンゴやイチゴ等の赤い果物
・リンゴやイチゴなどの赤い果物
ここで使用する「等」や「など」には、「リンゴやイチゴの他にも赤い果物がありますよ」という意味合いが含まれています。
この場合は、漢字でもひらがなでも問題ありません。
ただ、ひらがなの「など」は日常シーンにおいて別なニュアンスを含んで使用される場合があるので注意が必要です。
「など」に含まれる2つのニュアンス
1.人や物を軽んじる、否定的な意味合い → A
2.断定を避け、婉曲的に表現する意味合い → B
<Aの例>
「私など、どうせ何をやってもダメだ」
「金など欲しがるものか」
「私なんか」や「金なんか」のように、「なんか」と言い換えられる「など」になります。
<Bの例>
「せっかくですから、喫茶店に寄ってコーヒーなどいかがでしょう?」
「このタイミングで風邪などひいたらたまらない」
「コーヒーでもいかがでしょう?」や「風邪なんかひいたら」のように、「でも」や「なんか」と言い換えられることが多い「など」です。
以上のAやBの2つのニュアンスを念頭に置いて、「等」と「など」の使い分けを詳しく見ていきたいと思います。
「等」と「など」の使い分けの基準
次の3つの文には、いずれも「など」という語が含まれています。この中で1つだけ「等」に置き換えられるものがあります。
1.お前たちなど知らない! どこかへ行ってしまえ。
2.そこのカフェでお茶などいかがでしょう?
3.この森には、リスやキツツキなどたくさんの動物がいます。
1.お前たちなど知らない! どこかへ行ってしまえ。
この文の「など」には「お前たち」を否定して軽んじるニュアンスが含まれています。「など」の代わりに「なんか」と置き換え、「お前たちなんか知らない!」としても問題ありません。
Aに当てはまるため、「等」と置き換えるのは不自然です。
◯ お前たちなど知らない! どこかへ行ってしまえ。
✕ お前たち等知らない! どこかへ行ってしまえ。
2.そこのカフェでお茶などいかがでしょう?
ここでの「など」は、「お茶」に断定することを避け、婉曲的に表現するために使われています。「など」の代わりに「でも」と置き換え、「お茶でもいかがでしょう?」とすることができます。
Bに当てはまるため、1つ目と同じく「等」と置き換えるのは不自然です。
◯ そこのカフェでお茶などいかがでしょう?
✕ そこのカフェでお茶等いかがでしょう?
3.この森には、リスやキツツキなどたくさんの動物がいます。
この「など」は同じようなものを並べ、「リスやキツツキもいるし、他の似たような動物ももっといる」という意味で使われています。この「など」は「等」と置き換えられます。
◯ この森には、リスやキツツキなどたくさんの動物がいます。
◯ この森には、リスやキツツキ等たくさんの動物がいます。
1~3のパターンに当てはまらないケースもありますが、多くはこの考え方で解決することができます。
漢字にするか、ひらがなにするかで迷ったときは、まずAやBのニュアンスを思い出してみてください。
「等」と「など」の使い分けの練習
前述の例を踏まえて、次の文中の「など」で「等」に置き換えられるものはどれか考えてみてください。
Q
1.夏目漱石、芥川龍之介など、日本を代表する文豪。
2.もう少しでお昼ですね。一緒に食事などいかがですか?
3.あんな連中など知らない。
A
1.夏目漱石、芥川龍之介など、日本を代表する文豪。
この「など」は、純粋に同じようなものを並べるために使われています。「夏目漱石、芥川龍之介は日本を代表する文豪の一例だ。他にも菊池寛もいるし谷崎潤一郎もいる」というような意味になります。そのため、ここでの「など」は「等」と置き換えられます。
◯ 夏目漱石、芥川龍之介など、日本を代表する文豪。
◯ 夏目漱石、芥川龍之介等、日本を代表する文豪。
2.もう少しでお昼ですね。一緒に食事などいかがですか?
この「など」は、「食事」を婉曲的に表現するために使われています。「など」の代わりに「でも」と置き換え、「食事でもいかがでしょう?」としても問題ありません。使い分けのBに当てはまるため、「等」と置き換えるのは不自然です。
◯ もう少しでお昼ですね。一緒に食事などいかがですか?
✕ もう少しでお昼ですね。一緒に食事等いかがですか?
3.あんな連中など知らない。
この「など」には「あんな連中」を否定して軽んじるニュアンスが含まれています。「など」の代わりに「なんか」と置き換え、「あんな連中なんか知らない」としても問題ありません。使い分けのAに当てはまるため、2つ目と同じく、これも「等」と置き換えると不自然です。
◯ あんな連中など知らない。
✕ あんな連中等知らない。
「等」と「など」の意図的な混在
例外として「等」と「など」を、文の見た目の印象や、読んだときのリズム感から意図的に混在させることがあります。
<例>
『A社やB社、C社等のカタログ、パンフレットなどを扱う会社』
この場合「等」と「など」をどちらかに統一してしまうと、違和感が起こる文になってしまいます。
・どちらかに統一した文
『A社やB社、C社などのカタログ、パンフレットなどを扱う会社』
『A社やB社、C社等のカタログ、パンフレット等を扱う会社』
部分的に見れば使い方を間違っているわけではありませんが、文全体を読むとテンポが悪くなります。
「等」と「など」を意図的に使い分けをしている文もあるので、機械的にどちらかに統一すればよいというわけでもありません。
おわりに
以上のように、漢字とひらがなの使い分けで悩んだ際は、その言葉に含まれるニュアンスまで掘り下げてみるとわかりやすくなります。
1.漢字でもひらがなでも可
・「似たようなものが他にもまだある」という意味合いが含まれる
2.ひらがな表記が適切
・人や物を軽んじる、否定的な意味合いが含まれる(「なんか」で置き換え可)
・断定を避け、婉曲的に表現する意味合いが含まれる(「でも」「なんか」で置き換え可)
3.漢字表記が適切
・法令文や公用文 → 等(とう)