「良い」「好い」「善い」の漢字の使い分け[例題解説]

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「良い」「好い」「善い」の漢字の使い分け[例題解説]

「よい」「いい」という語を漢字で表記する場合、「良い」「好い」「善い」といった複数の表記が考えられます。

また、意味合いによっては漢字を使わず、ひらがなで「よい」「いい」とするのが適切なケースもあります。この記事では、これらの表記の使い分けについて解説します。

[記事作成にあたっては、以下の書籍・辞書・サイトを参考にしています]

・漢字の使い分け ときあかし辞典_研究社
・記者ハンドブック(第14版)_共同通信社

1. 良い・好い・善いの使い分けの基準

以下の例文のうち、表記が適切でないものはどれか考えてみてください。

Q
1.  品質が良い
2.  人助けは善いことだ。
3.  天気が善い
4.  気立ての好い人。
5.  週末は好く買い物に行く。

A
表記が適切でない例文は、3つ目5つ目です。以下、順番に見ていきます。

1.  品質が良い
2.  人助けは善いことだ。
3.  天気が善い
4.  気立ての好い人。
5.  週末は好く買い物に行く。

「良い」「好い」「善い」の中で、最も広く使用できるのは「良い」です。

上の例文の1つ目のように、「すぐれている」ことを意味する場合は「良い」の字が適しています。ほかにも、「仲が良い」のように「うまくいっている」ことを表す場合、「旅行をするのに良い季節」のように「ふさわしい、適している」ことを表す場合など、幅広く使用できます。

」という漢字は、「善意」「慈善」などの熟語に使われることからもわかるように、「人間的に立派である、道義的に正しい」といった意味を持ちます。

このことを踏まえると、上の例文の2つ目については、「人助け」は「人間的に立派」であるので「善い」という表記が適切だと判断できます。

一方、3つ目の文の「天気」に対しては、「善い」の表記はそぐわないことがわかるでしょう。

」の字は「すき、このむ」とも読む通り、興味・満足・喜びなどの主観的な意味合いを持ちます。4つ目の例文は、「好い」と表記することで、その「気立て」を好ましく思っているという主観的な評価を表しています。

ちなみにこの文は「気立ての良い人」と表記することもできますが、その場合はやや客観的な評価を表します。

5つ目の例文の「好く」は適切な表記ではありません。このように、頻度が高いことを表す「よく」は、一般的にひらがなで表記されます。このほか、「肉をよく焼く」のように程度が十分な様子を表す「よく」や、「終わったら帰ってもよい」のように許容・許可を表す「よい」なども、ひらがな表記が一般的です。

※頻度/程度が十分な様子/許可・許容  →  よく or よい(ひらがな表記)

2. 良い・好い・善いの使い分けの練習問題

ここまでの説明を踏まえて、以下の例文について考えてみてください。表記が適切でないものはどれでしょうか。

Q.
1.  その日なら都合が良い
2. 
良い成績を収める。
3. 
病気が善くなる。
4. 
好く調べて答える。
5. 
手が空いたら休憩してよい
6. 
良い方策がないか考える。

A.
1.  その日なら都合が良い
2. 
良い成績を収める。
3.  病気が善くなる。
4. 
好く調べて答える。
5. 
手が空いたら休憩してよい
6. 
良い方策がないか考える。

表記が適切でないのは、3つ目4つ目の例文です。

1つ目の例文のように「ふさわしい、適している」という意味では、「良い」の表記が適切です。

2つ目の文は「成績がすぐれている」ことを表すため、「良い」が適切な表記です。ただし、単に「すぐれている」というだけでなく、その「成績」が好ましいものだという主観的な評価を表現したい場合は、「好い」と書くこともできます。

3つ目の文中の「善く」は前述の通り、「道義的に正しい」場合に使われる表記です。病気が快復することについては、「良くなる」と表記するのがよいでしょう。

4つ目の例文の「よく」は程度が十分な様子を表すので、ひらがなで表記するのが一般的です。5つ目の文中の許可を表す「よい」も、同様にひらがな表記とされます。

6つ目の「良い」は、「すぐれている」「ふさわしい」という意味を表す表記として適切です。なお、「善い方策がないか考える」とすると、「道義的に正しい方策であるかどうか」を問題にしていることを明示できます。

おわりに

以上が使い分けの原則ですが、実際に文章を書いていると、どの表記が適切か迷う場面もあるでしょう。ひらがなで「よい」とすれば間違いにはならないので、判断がつかない場合には無理に漢字表記しないほうが無難です。

『記者ハンドブック第14版』(共同通信社)でも、使い分けに迷う場合はひらがな書きとされています。

まとめ

良い →「すぐれている」ことを表す際に使用。「うまくいっている」「ふさわしい、適している」ことを表す場合などにも使用。

好い →「すき、このむ」とも読む通り、主観的な興味・満足・喜びなどを表す場合に使用。

善い →「善意」「慈善」などからもわかるように、「人間的に立派である、道義的に正しい」といった意味を表す場合に使用。

ひらがな表記(よく or よい)→  頻度/程度が十分な様子/許可・許容などを表す場合に使用。

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(一般社団法人共同通信社)

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