ミスをしない校正のコツ[7つのポイント]

information

ミスをしない校正のコツ[7つのポイント]

一口に「校正」と言っても、その中にはさまざまな作業が含まれます。チェックすべきポイントが多数あるため、慣れないうちはどこから手をつければいいのか戸惑うことも多いかと思います。

また、正確さと素早さの両方が求められるため、時間配分がうまく行かず、気ばかり焦ってしまうこともあるかもしれません。

そうした悩みをお持ちの方に向けて、この記事では今すぐ実践できる校正のコツを7つ紹介します。

簡単に流れを表せば次のようになります。

・作業内容を把握する
・作業を順に一つずつ確認していく
・確認した箇所にはチェックをつける

どれもごく当たり前のことですが、どれかがおろそかになっても品質に影響してきます。またムダに時間を費やすことにもなりかねません。

この記事のポイントをご覧になって、校正未経験者の方は作業の参考に、経験者の方はご自身の作業内容の振り返りにお役立てください。

1. 作業内容をリストアップする

同じ「校正」の依頼であっても、具体的な作業内容は案件によって異なります。誤字脱字等の日本語チェックのみの案件もあれば、ファクトチェックが必要な案件もあります。

図版を含む案件であれば、図と本文の整合性、図版番号が通っているかなどの確認が必要ですし、組版前の原稿の状態での校正なら、体裁のチェックは不要になります。

校正を始める際は、まずその案件に必要な作業を具体的にリストアップしましょう。初めに「素読み」「ファクトチェック」のように大まかな項目を立て、その中の細かい項目として「誤字脱字」「整合性」「固有名詞」「年号」などをあげていくとやりやすいです。一覧にすることで作業の全体が可視化でき、時間配分の目安としても役に立ちます。

校正をする機会が多いなら、その都度一からリストアップするのは煩雑なため、リストのテンプレートを作っておくのがおすすめです。それをベースに、案件に応じて項目を足したり減らしたりすると、効率的に作業内容を把握できます。一例を次に示します。

1. 素読み誤字脱字、日本語の文法、成語・慣用表現、表記統一、整合性
2. ファクトチェック固有名詞、年号、社会の動き
3. 赤字突き合わせ赤字が反映されているか、赤字の前後のつながり
4. 図版本文中での位置、本文との整合性、キャプションの体裁、キャプションの図版との対応、図版番号
5. 章タイトル体裁、本文との対応、章番号
6. 見出し類体裁、本文との対応、見出し番号
7. 柱体裁、章タイトル等との対応
8. ノンブル体裁、番号が通っているか

校正者だけでなく編集者などであっても、頻繁に校正をする場合は一度このようなテンプレートを作っておくと便利です。

2. 一度にチェックするのはひとつの要素のみにする

作業内容をリストアップしたらそれに沿って校正を始めますが、基本的に一度にチェックするのはひとつの要素のみとします。複数の要素を同時にチェックしようとすると、どれも中途半端になって漏れが生じやすくなるためです。

上のテンプレートを例にとれば、章タイトルの体裁を確認する際は体裁だけに集中し、本文との対応や章番号が通っているかは見ないようにします。

体裁の確認を終えてから、本文との対応、章番号が通っているかをそれぞれ別々に確かめていきます。

ただし、素読みとファクトチェックについては、作業を完全に切り分ける必要はありません。事件の名称とそれが起きた年号はあわせて確認する必要があるなど、それぞれの項目が関連しあっているためです。

3. 文字を1文字ずつ追う

校正と普通の読書の大きな違いは、文字の捉え方の単位です。

たとえば「今日は校正のコツをいくつかご紹介します。」という文について、普通に読む場合は「今日は/校正の/コツを/いくつか/ご紹介します。」とフレーズごとに意味を捉えるでしょう。

この読み方には、文字が間違っていても脳内で補完して読めてしまうという弱点があります。上記の文が「今日は校正のコツをいつくかご照会します。」となっていても、全体として意味を捉えると理解できてしまうのです。日常生活の中であればこのように脳内補完しても不都合はありませんが、校正においては見落としにつながってしまいます。

こうした現象を避けるため、校正する際は「今/日/は/校/正/の/コ/ツ/を/い/く/つ/か/ご/紹/介/し/ま/す/。」というように文字単位に区切って読むのが基本です。このように細かく区切ることで、「いくつか」が「いつくか」と入れ替わっていたり、「紹介」が「照会」と同音異義語になっていたりすることに気づきやすくなります。

1文字ずつ確実に追うには、鉛筆やペンの先で文字を押さえたり塗りつぶしたりしながら読むとよいでしょう。校正者の中には、1行ずつ定規を当てながら読む人もいます。こうすることで読んでいる行だけに意識が集中し、精度の向上につながります。

【関連記事】

4. 辞書を引く

社会人になると辞書を引く習慣がなくなる人も多いですが、校正作業には辞書が必須です。自分の日本語感覚や記憶だけに頼って校正せず、こまめに辞書を引いて確認するようにしましょう。

また、辞書は複数引くことをおすすめします。

たとえば、「レジ袋はいりますか?」「大丈夫です」というように拒否の意味を表す「大丈夫」の用法について、『広辞苑』(第七版、岩波書店)には記載がありませんが、『明鏡国語辞典』(第三版、大修館書店)には新しい用法として載っています。

ひとつの辞書に載っていないからといって、その用法や表記が誤っているとは限りません。複数の辞書を比較し、ゲラ全体の傾向も踏まえたうえで、用法などが妥当かどうか総合的に判断しましょう。

5. 印をつける・メモを取る

校正する際は漫然と読み進めるのではなく、適宜印をつけたりメモを取ったりしておきましょう。後で見直す際の手がかりになるのはもちろん、自分の手を動かすことで記憶に残りやすくなり、校正の精度向上も期待できます。

印やメモを残しておくとよいポイントの例を以下にあげます。

1. 表記がばらつきそうな語
2. 数字
3.「後述する」「第○章で述べる」など、読んでいる箇所より後の部分に関する記述

1. 表記がばらつきそうな語には、「行う/行なう」のように送り仮名のつけ方が複数ある語、「とき/時」などの閉じ開きが使い分けられる語、「コンピュータ/コンピューター」といった複数の表記があるカタカナ語などがあります。

2. 数字に注意が必要なのは、算用数字・漢数字といった表記のばらつきが起きやすいことに加え、整合性に関わってくる可能性もあるためです。「~つのコツ」のような表現と実際の数が合致しているか、「○日後」「○年間」といった表現が本文中の記述と合っているかなどを漏れなく確認できるよう、数字が出てきた際には印をつけておきましょう。

3.「後述する」などの表現については、全体を読んだ後でなければ適切か判断できません。一通り読み終えた後にあらためてチェックするのを忘れないよう、マーキングしておくとよいです。

6. チェックマークをつける

チェック漏れを防ぐため、確認した部分にはチェックマークをつけるとよいです。マークのつけ方は会社や校正者によって多少異なりますが、該当する語の右肩にレ点をつける場合が多いようです。

ファクトチェックできた部分、章や図版等の番号が通っていることを確認した部分などにはその都度チェックマークをつけることで、自分の見落とし防止にもなりますし、後工程の人にも確認済みであることが伝わります。

なお、ノンブルや柱を確認した際のチェックマークは、該当ページすべてにつけると煩雑になるため、初出のみにつければよいでしょう。

7. 時間を置いて再読する

校正を一通り終えたら、時間を置いてからもう一度読んでみましょう。時間を空けて新鮮な目で読み直すことで、新たな問題点が見えてきたり、逆に疑問が解決したりする場合があります。

環境的に可能であれば、普段作業をしているデスクとは違う場所で読んでみる、フォントや縦書き・横書きといった体裁を変えてみるなども有効です。

おわりに

以上、すぐに実践できる校正のコツを7つ紹介しました。

参考にできることがあれば、ご自身の校正作業に取り入れながら自分なりのやり方やペースを確立していき、効率化や品質の向上につなげていってください。