原稿やゲラに赤字を入れるなら知っておきたいNGな赤入れ・OKな赤入れ[正しい校正記号の使い方]

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原稿やゲラに赤字を入れるなら知っておきたいNGな赤入れ・OKな赤入れ[正しい校正記号の使い方]

校正指示とは、文章のチェックをしている際に、修正を必要とする箇所に赤入れや鉛筆で疑問点を申し送りすることです。

ときに赤入れの際には校正記号が使われますが、校正記号はよく起こる誤りに対して指示出しを効率的にするため、体系的にまとめられたものです。よく誤解されがちな、校正指示=校正記号ではありません。校正指示の一つの手段として、校正記号があるという位置づけです。

 

校正記号だけで、すべての校正指示がカバーできるほど校正記号は万能ではありません。

校正指示の一番の目的は、指示を見る相手や修正する相手に、自分の書いた指示の内容を明確に伝えることです。

どのような指示を入れたとしても、その指示の意図が相手に正しく伝わることが前提となります。相手に伝わってはじめて指示として成立します。相手に意図が伝わらなければ指示とは言えません。これは校正に限らずどんな職業でも言えることです。

・NGな赤入れ

赤入れの際、大前提として「目立たない」「判別できない」「誤読させる」ような文字は厳禁です。

1. 字が小さい
2. 字が乱雑
3. 略字/くずし文字

以上の3つは基本中の基本ですが、他にも達筆すぎたり続け字であったりした場合も読みづらいので注意が必要です。

自分では見慣れた文字でも、相手の目にどう映るかはわかりません。また忙しいときにはいつも通り文字を書いていたとしても、誤字脱字が起こりやすいものです。赤入れの際は、自分の書いた指示をもう一度読み返すぐらいの余裕をいつも持っておきましょう。

他にも赤字が薄い、かすれているなど使うペンにも気をつけましょう。ペン先が太いと文字が潰れて判読できないことがあります。(一般には、ペン先0.4㎜~0.5㎜ぐらいが使いやすいとされています。)

仮に自分が指示した赤字を見落とされた場合、真っ先に他者に批判を向けるのではなく、まずは「自分の赤入れは相手に伝わるように書けていたか?」と自分自身に問いましょう。

1. 目立たない校正指示

校正指示は簡潔であることが望ましいですが、これは前提として相手に伝わる場合だけです。常に簡潔にすべきというわけではありません。状況に応じて、柔軟に対応していく必要があります。

校正指示は、修正すべき箇所に赤字を入れるだけでなく、それが相手に伝わる指示であるという視点が備わっていないといけません。

1. 間違いがある → 適切な赤入れをする
これで校正指示は終わりでなく、

2. 間違いがある → 適切な赤入れをする+相手に伝わる指示であるかを考える
という流れで行います。

① 目立たない校正指示

校正指示が小さい(句点を入れる指示の例)

校正指示の書き方

句点を入れる校正記号としては正しいものですが、誌面の一部にポツンと赤字がある状態では目立たないため相手に伝わるという視点が抜けています。この赤入れでは、赤字を見落とすリスクが高まります。

修正側(オペレータなど)にとっては、修正ページが何十ページもある場合、1ページだけにこのような赤字があれば、見落とす可能性も上がります。

意外ですが、このような赤入れをする人は非常に多いです。相手に伝わる視点が欠けているというよりも、校正指示とは簡潔に書くべきものだと思い込んでいる人が多いのではないかと思います。さらにこの原因を深堀りすると、原稿に赤入れをする側は往々にして発注側、すなわちクライアントが多いです。受注側の出版社・印刷会社にとっては、このような赤入れが悪いと思っていても、立場上言えない/言いづらいといった状況があるのではないかと推測します。それゆえ、このような赤入れがずっとなくならないのではと考えます。

<適切な赤入れ>

目立たない箇所に赤入れするには、次のような対処法があります。

1. あえて引出し線を使って目立たせる。 

校正指示の書き方

2. 鉛筆で大きく丸をする。

校正指示の書き方
鉛筆でなく赤ペンで丸をしたほうがいいと思うかもしれませんが、補助的な指示は鉛筆で書くのが適切です。赤字と補助の指示が明確に区別がつき、誌面の見やすさも増します。

② 目立たない校正指示

似たような目立たない指示として、二重線で表す削除指示があります。 

校正指示の書き方

線だけで表す削除指示も目立たないので適切な指示とは言えませんが、使う人は非常に多いです。対処法としては、前述したように鉛筆で大きく丸をするか、次のように引出し線を使い指示を入れます。校正記号では、文字を取って詰める場合「トルツメ」とします。

校正指示の書き方

トルツメ」の校正記号がわからない人も自分の言葉で相手に伝わるように書きましょう。「トルツメ」でなくても、「削除」「取る」「ここ削除してください」などと書いても伝わります。相手に伝わることを重視しましょう。校正記号は二の次です。

また相手に伝わるという点で重要なのは、削除範囲がどこからどこまでかを縦線で明確に区切ることです。赤字を入れることに集中するあまり、削除範囲が曖昧になることがあります。

校正指示の書き方

左側の縦線が文字の中央に掛かっていて曖昧になっています。ここで、『削除後の文の前後を読めばどこを削除すべきかわかるだろう』と考える人もいるかもしれませんが、校正指示は相手に判断をゆだねるものではありません。相手に考えさせる指示を入れた時点で、その校正指示は間違っています。

なお、削除範囲は縦線でなくても丸で囲んでも大丈夫です。 

校正指示の書き方

POINT

挿入や削除、訂正指示は、範囲を明確にしましょう。

1. 挿入指示は、どこに入れるのかを明確にする。
2. 削除や訂正は、どこからどこまでを修正するのかを明確にする。

2. 離れた位置への赤入れ

誌面内の赤字が離れた位置にある場合に注意すべきポイントです。

離れた位置への赤入れ

校正指示の書き方

誌面を机の上に置いたとき死角になりやすい、下側の赤字が特に見落とされやすくなります。この例でいうと、下側の「トルツメ」が見落とされやすい傾向にあります。

この場合も赤字を鉛筆で大きく丸をして対処しますが、下側の赤字にだけ丸を入れてしまうと、今度は上の赤字が目立たなくなります。そのため両方に丸を入れておくのが賢明です。

校正指示の書き方

離れた位置への赤入れ

誌面の一部分に赤字が集中していると、赤字を見る側はその部分にだけ目線が行きます。そのため離れた位置にある赤字が見落とされやすくなります。

一部に赤字が集中していて、そこから離れている位置に赤入れする場合は、高確率で見落とされると思っておきましょう。 

校正指示の書き方 

<適切な赤入れ>

この場合も鉛筆で丸をするのが最適です。目立つのであれば、引出し線を長めにして赤入れしても大丈夫です。

校正指示の書き方

3. 赤字が密集している

原稿もしくはゲラを何度も見直しているうちに、追加の赤字が増えてしまい、特定の部分に赤字が密集してしまうことがあります。また複数人で回覧して赤字を入れる場合もこのようなことが起こりがちです。この場合も、赤字のどれかが見落とされる可能性が高くなります。

赤字が密集している

<適切な赤入れ>

赤字が多くなるような場合は、ペンの色を変えて入れる方法があります。密集している部分に赤字を入れる場合は、あらかじめ色を変えて入れるという選択肢を頭に入れておきましょう。

※校正指示では、赤字以外では青字で書くのが推奨されています。

なお、赤字を書くスペースがない場合は、余白のスペースを利用します。限られたスペースに無理に小さく書く必要はありません。次のように「Ⓐにスルと指示を入れて、余白のスペースに訂正内容を書き入れます。

4. 誤解を招く赤入れを避ける

赤入れをする際には、赤字を見る相手に誤解を招く恐れがある指示は避けましょう。自分では何も考えずに入れた赤字が、相手を困らせる原因になるかもしれません。

自分でわかりづらいと思ったら、相手はそれ以上にわかりづらいと思っておくことです。相手を悩ます=相手の時間を奪うような赤入れは避けましょう。

誤解を招く赤入れ

同じ文に複数赤字が入る場合

それぞれの赤字の入れ方は正しいですが、全体としてわかりづらくなるダメな赤入れの例です。 

<適切な赤入れ>

こういう場合は、近くの空きスペースに最終的な仕上がりを書いておきましょう。※補足の指示は鉛筆が望ましいです。

校正指示の書き方

誤解を招く赤入れ

小さい文字への赤入れ

小さい文字に赤入れする際のNG例です。赤入れの仕方が悪いと、修正範囲がわかりにくくなります。

特に「金額」や「品番」などの数字・アルファベット、他にも画像やイラストにつくキャプションなどの小さくなりがちな文字に対しては注意しましょう。

<数字に赤入れする>

次の赤字の入れ方は一見しただけでは、どこに入れるのかわかりづらいです。目を凝らしてやっとわかる感じです。わかりづらいと感じる場合は、積極的に補足の指示を入れましょう。

  

この例では「(8と3の間)」と補足しておけば、どこに挿入すべきか一目でわかります。

また、8の数字が一つしかなく他の場所と混同する恐れがないので「(8の後ろ)」と補足しても大丈夫です。

<アルファベットに赤字を入れる>

数字のときと同様、どこを削除するのかを一目見てわかるように指示します。

校正指示の書き方

他にも 「Bをトルツメ」としてもわかりやすいです。

基本的に赤入れの際は、小さい文字に限らず、わかりづらいかもと思ったら補足の指示を入れておきましょう。

誤解を招く赤入れ

一つの赤字に2つの指示

次の赤字は、一文に2つの指示が入っています。

この場合、赤字を見る側は、赤字の最初のほうだけパッと見て判断することがあります。特にオペレータのような職種は、いかに早く修正作業を行うかが肝であるため、そのような見誤りを起こしやすいです。

<適切な赤入れ>

1. あえて2行にわけ、2つの指示に対して目が行くようにする。

2. 文を2つにわける。

校正指示の書き方

誤解を招く赤入れ

複数の引出し線を使う場合

次のように同じ赤字が複数箇所に入る場合、引出し線を使ってまとめて指示するのは便利です。個別に指示を入れるよりも誌面がすっきりするのでよく見られる赤字の入れ方ですが、短所もあります。  

校正指示の書き方

この赤入れでは、目立たないほうの赤字が見落とされる恐れがあります。

校正指示の書き方

<適切な赤入れ>

1. 修正の個数を入れる。

校正指示の書き方

2. あえて引出し線を使う。

校正指示の書き方

3. 同じ修正指示が多い場合。

複数の箇所に同じ指示が入るなら、目立つ色(マーカーなど)で一括で指示を出します。個数も明記しておくとよりわかりやすいです。

校正指示の書き方

5. 補足しないと伝わらない赤入れ

校正指示は、『これでわかるだろう』という気持ちで入れるものではありません。他者の理解力に依存する赤字は、他者にストレスをかけるだけなので厳禁です。

① 補足しないと伝わらない赤入れ

読点(、)などの小さい文字

読点の判別がつかない赤字は非常に多いです。

句点(。)は文脈から必要とされる位置が判断できますが、読点は書き手の個性なので、どこに打ってもおかしくありません。読みやすさを考慮しなければ、読点を過剰に打ってもほとんど打たなくても間違いではありません。ある意味あってもなくてもいいものです。そこが厄介になってきます。

赤入れをした本人は、単にペン先が誌面に触れた跡というだけで何も気にしないかもしれませんが、赤字を見る側にしたら非常に気になります。その跡が、読点の指示なのかどうかで悩みます。

NGな赤入れ

校正指示の書き方

この書き方では、意図して読点を入れたのかどうか判断がつきません。ペン先が誌面に触れたとも解釈できます。

<適切な赤入れ>

1. 校正記号を使う。

校正指示の書き方

2. 強調して書く(大きく太めにあきらかに意図をもって書いたことが伝わるように)。

校正指示の書き方

② 補足しないと伝わらない赤入れ

空きスペースは明確に指示する

半角と全角のアキの違いは、明確に指示しないと伝わりません。自分では半角アキで書いたつもりでも、全角アキと解釈されるかもしれません。逆も同様です。

・アキなし
  校正指示の書き方

・全角アキ
  校正指示の書き方

・半角アキ
  校正指示の書き方

<適切な赤入れ>

校正記号では、(四角の記号)が全角スペースを表します。その半分が半角スペースを表しますが、形状で判断するよりも「全角」「半角」などの文字を補足しておきましょう。

            

③ 補足しないと伝わらない赤入れ

小さい文字は意図的に小さく書く

次のような「通常の大きさの文字」と「小さい文字」で、文字の形が同じもの(大きさだけが違うもの)は見間違いを招く恐れがあるので注意すべきです。

・ひらがな (例)あ ぁ
・カタカナ (例)カ ヵ
・濁点と半濁点 (例)バ パ
・アルファベットの大文字と小文字 (例)P p

濁点と半濁点

「濁 点」… 日本語で濁音を表すときに文字の右上に付く符号

  

「半濁点」… 日本語で半濁音を表すときに文字の右上に付く符号

 

この濁点と半濁点の見間違いはよく起こります。符号自体が小さいせいです。半濁点が付くものは「は行」のみなので、濁点と半濁点の両方が付くものは必然と「は行」のみとなります。ゆえに、「は行」の濁点や半濁点を書く際は注意しておきましょう。

・見間違えやすい濁点と半濁点(は行のみ)

   

 

見間違えを防ぐには、濁点や半濁点の部分をやや大きめに強調して書いておくことです。

特にカタカナは表記揺れが多く、専門用語のカタカナなどは通常の辞書にも載っておらず、普段耳にすることもないため誤解されやすいので注意しておきましょう。

アルファベットの大文字と小文字

大文字と小文字でアルファベットの形状が違うもの、「Q」と「」のようなものは見間違えることはありませんが、「P」と「」のような形状が同じものは見間違えることが多いです。

・見間違えが起こりやすい(大文字と小文字の形状が同じ)
 校正指示の書き方

・見間違いが起こらない(大文字と小文字の形状が違う)
 校正指示の書き方

見間違いを防ぐためには該当部分を強調して書くようにしますが、他の方法としては次の校正記号を補足しておくことです。

校正指示の書き方

校正指示の書き方

おわりに

校正指示は、必ずしも簡潔がいいとは限りません。たとえ指示が長くなったとしても相手に正しく伝えることを第一にします。言葉で伝わりづらければ、図で書いて指示しても構いません。

指示を見る相手のことを配慮し、赤字が目立たない・判読されない・誤解されるといったことがないように気を配ります。

忙しいときや疲れているときは、指示が乱れがちになることを自覚し、自分の入れた赤字に不備がないか読み返してみることです。自分では当然わかっていることでも、相手の立場になれば補足しないと伝わらないことも多いです。

適切な赤入れにより、相手を悩ませる余計な時間を生むことなく、些細なミスも防げます。仕事をスムーズに進行させるためにも、関与者のことを常に考えて適切な校正指示を出しましょう。