収めると納めるの意味と違い[使い分けで迷ったときに]

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収めると納めるの意味と違い[使い分けで迷ったときに]

「おさめる」と聞くと、「収める」や「納める」、他にも「修める」「治める」などが真っ先に思い浮かぶかもしれません。

「修める」と「治める」については、「修」の漢字は「修行」、「治」は「治安・統治」などから意味が連想しやすく比較的使い分けが容易です。

ただ「収める」と「納める」の二つについては迷うことが多いと思います。特にビジネスシーンでは両方ともよく使用される言葉なので、適切な使い分けを知っておくと便利です。

[記事作成にあたっては、以下の書籍・辞書・サイトを参考にしています]

・漢字の使い分け ときあかし辞典_研究社
・新明解国語辞典 第八版_三省堂

1.「収める」と「納める」は使い分けができる?

前提として、どちらを使っても間違いでない場合があります。完全に使い分けられるものではありません。

「収める」と「納める」はともに『物事を終わらせる/終止符を打つ/決着をつける』という意味があり、互いの領域が交差する部分があるため、両方の使用が大丈夫な場面があります。

 

たとえば、
「この出来事は、自分の胸におさめておこう」という場合、

「この出来事は、自分の胸に収めておこう」
「この出来事は、自分の胸に納めておこう」

どちらでも使えます。

こういったときは、辞書の例文を参考にするか、表記のガイドラインのようなものがあればそれに従うとよいでしょう。

もしくは、ひらがなで表記するという選択肢もあります。

 

漢字がわからないから、ひらがな表記にするというよりも、その漢字が持つニュアンスで読み手に些細な誤解を与えないようにするために、あえて「ひらがな表記」にするという感じです。

どちらとも解釈できるような場合、もしくは文をフラットな印象にしたいなら、漢字にこだわらず、ひらがなで「おさめる」としておくのも一つの方法です。

以下、「収める」と「納める」のそれぞれの意味から、両者の使い分けの基準を見ていきたいと思います。

2.「収める」の意味と例文

 「収める」と「納める」の使い分け

収める」には次のような意味があります。

その物を本来あるべき場所(ふさわしい場所)に入れて望ましい状態にする。
 例文:書類を棚に収める/懐に収める/矛を収める/胸に収めておく

②望ましい状態のものとして手に入れる。
 例文:勝利を収める/成功を収める/薬が効果を収める

端的にいうと、物を収納する場合手に入れる場合ある状況や問題を解決する場合に使われます。他にも、物事を受け入れる・まとめる・終わらせるという意味があります。「収める」が持つ意味は広く、広範囲で使用されます。

イメージとして、「情報収集」「収納」「収拾」ような熟語を思い浮かべると覚えやすいです。

使い分けのポイントとして、「収める」を使用する場合、
自分もしくは自分達だけで、その行為が完結することが多いです。

3.「納める」の意味と例文

「収める」と「納める」の使い分け

納める」には次の意味があります。

・決められた期限に、決められただけのものを渡す。
 例文:税金(月謝)を納める/製品を月末までに納める

言い換えると、ある物を決められた場所や人に渡すことになります。さらに、ある物事を完了して提出すること、お金や物品を支払うことなどとも解釈できます。「収める」と同様に、物事を終わらせる、決着をつけるという意味も持ちます。

イメージとして、「納品」「納税」ような熟語を思い浮かべると覚えやすいです。

使い分けのポイントとして、「納める」を使用する場合、
自分もしくは自分達だけで、その行為が完結しないことが多いです。
なぜなら、納めるには、場所・人などの対象が必要になるからです。

 収めると納めるの違い

4.「収める」と「納める」の違い

前述しましたが、収めると納めるの使い分け基準の一つとして、次のように考えることができます。

収める … 自分(自分達)だけで、その行為が完結する
納める … 自分(自分達)だけで、その行為が完結しない

収める
自分一人で完結する行為、たとえば書類を棚に収める胸に収めるなどは、自分が主体となり自分一人でその行為を完結することができます。

納める
納めるは、自分が場所や人に何かを納めるため「対象」が存在します。
たとえば、
税金を納めるには、対象が国となり、
品物を納めるには、対象が得意先や客になります。

上記の2つの意味の違いを考慮して「書類を収める」と「書類を納める」の意味を考えてみたいと思います。

「書類を収める」は、
書類を自分で収めるということになり、書類を収納するという意味になります。

「書類を納める」は、
書類を誰かに納めるということになり、書類を誰かに提出するという意味になります。

対象があるかないかで判断できる場合もあります。

5.「収める」の例文【おさらい

 

自分もしくは自分達で解決するというイメージをもって次の例文も読むと、「収める」の持つ意味合いがより明確になるはずです。

 • 問題を収める。
 • 感情を収める。
 • 書類をファイルに収める。
 • 荷物をスーツケースに収める。
 • タンスの中に服を収める。
 • 重要な書類は、この金庫に収めておいてください。
 • 残りの食材を冷蔵庫に収める。
 • 収録が終わったので機材を収める。
 • 会議の内容を、議事録に収めておきました。
 • 集めた情報をパソコンの所定のフォルダに収める。

6.「納める」の例文【おさらい

同様に、納める対象がいることを意識して次の例文を読んでみてください。「納める」の意味合いがはっきりとわかるはずです。

 • 税金を納める。
 • 受験料を納める。
 • 納品物をお客様に納める。
 • 納税申告を国税局に納める。
 • 保険料を納める。
 • 月々の返済金を納める。
 • 今月の家賃を納めるために、銀行に行きました。
 • 税金の納期限はもうすぐです。忘れずに納めてください。

おわりに

以上、収めると納めるの違いと使い分けについて解説しました。

収めると納めるは、どちらを使用しても問題ない場面がありますが、状況や文脈に合わせて使いわけが必要なときがあります。

特にビジネス文書やメールでは、正確で明確な表現が求められることも多いため、適切な使い分けが大切になってきます。