「混ざる」と「交ざる」の違いと使い分け[練習問題で学ぶ]
「まざる」という語を漢字で表記する場合、主に「混ざる」または「交ざる」という字が用いられます。同じような意味のため使い分けで迷うことも多いと思います。
この記事では「混ざる」「交ざる」の意味の違いや使い分けについて、具体的な文例をあげて解説します。
[記事作成にあたっては、以下の書籍・辞書・サイトを参考にしています]
・明鏡国語辞典 第三版_大修館書店
・デジタル大辞泉_小学館
・日本国語大辞典_小学館
・広辞苑 第七版_岩波書店
・新明解国語辞典 第七版_三省堂
・漢字の使い分けときあかし辞典
「混ざる」と「交ざる」の意味と違い
「まざる」を漢字表記する際は、基本的には「混ざる」とすれば間違いにはなりませんが、意味合いによっては「交ざる」を使うことでニュアンスを明確に表現できます。
▼ 国語辞典を参照すると、「混ざる」「交ざる」の使い分けに関しては次のように説明されています。
✔ 明鏡国語辞典 第三版(大修館書店)
【交】はとけ合わないまじり方に、
【混】はとけあったまじり方に使う
✔ デジタル大辞泉(小学館)
「互いにとけあって元の物が判別できない」場合は【混】
「元の物が判別できる」場合は【交】
これらの説明から、元の形が残っていない場合は「混ざる」、残っている場合は「交ざる」と表記できると考えられます。
・区別がつかない → 混ざる
・区別がつく → 交ざる
■混ざる
『紫は、青と赤が混ざった色です。』
→ この場合、どこまでが青色でどこからが赤色か区別がつきません。そのため「混ざる」の表記が適切となります。
■交ざる
『犬の中に、猫が交ざっている。』
→ この場合は、犬と猫の区別がつくので「交ざる」と表記します。
ただし、『日本国語大辞典』(小学館)、『広辞苑 第七版』(岩波書店)、『新明解国語辞典 第七版』(三省堂)などの辞典には、使い分けについての言及はありません。
「混ざる」「交ざる」の使い分けは絶対的なルールというよりは、「表現したいニュアンスによって使い分けることもできる」と捉えるのがよいでしょう。
「混ざる」と「交ざる」の使い分けの練習問題
前述の説明を踏まえて、以下の例文中の「まざる」は、「混ざる」と「交ざる」のどちらの表記が適切か考えてみてください。
問題
Q
1. 黄色の絵の具と青の絵の具がまざると緑色になる。
2. 日本語は、漢字・ひらがな・カタカナがまざっているので難しい。
3. 東京に出てきてずいぶん経つが、昔からの友人と話すときには地元の方言がまざる。
4. たくさんのスパイスがまざった複雑な味。
5. 水と油はまざりにくい。
6. 小学生ながら、大人にまざって互角のプレイを見せる。
解説
Q 1. 黄色の絵の具と青の絵の具がまざると緑色になる。
1つ目の例文では、「黄色の絵の具」と「青の絵の具」は溶け合って判別できない状態になっているので、「混ざる」とするのが適切です。
A 黄色の絵の具と青の絵の具が混ざると緑色になる。
Q 2. 日本語は、漢字・ひらがな・カタカナがまざっているので難しい。
2つ目の例文については、日本語の文章中の「漢字」「ひらがな」「カタカナ」はそれぞれ明確に区別することができるので、「交ざる」と表記するのがよいでしょう。
A 日本語は、漢字・ひらがな・カタカナが交ざっているので難しい。
Q 3. 東京に出てきてずいぶん経つが、昔からの友人と話すときには地元の方言がまざる。
3つ目の例文では、「方言」と標準語を織りまぜて話していると考えられます。発言の中で「方言」の部分と標準語の部分は聞き分けられると思われるので、「交ざる」と表記できます。
A 東京に出てきてずいぶん経つが、昔からの友人と話すときには地元の方言が交ざる。
Q 4. たくさんのスパイスがまざった複雑な味。
4つ目の例文については、それぞれの「スパイス」の「味」は判別できない状態だと思われるので、「交ざる」とは表記しづらいです。「混ざる」の使用が適切と言えます。
A たくさんのスパイスが混ざった複雑な味。
Q 5. 水と油はまざりにくい。
5つ目の例文の「水と油」はいずれも液状であり、「まざる」と溶け合って判別できなくなります。つまり、「交ざる」ではなく「混ざる」が適切だと考えられます。
A 水と油は混ざりにくい。
Q 6. 小学生ながら、大人にまざって互角のプレイを見せる。
6つ目の例文の「まざる」は、表現したい意味合いによって「混ざる」「交ざる」のいずれも使用できます。
通常は、大人の中に小学生が「まざって」いれば見分けることができるので、元の形が残っているものとして「交ざる」と表記します。ただし、大人の中に小学生が溶け込んで「プレイ」しているという一体感を表したい場合は、「混ざる」とすることも可能です。
A 意味合いによって両方可
小学生ながら、大人に交ざって互角のプレイを見せる。
or
小学生ながら、大人に混ざって互角のプレイを見せる。
おわりに
以上、「混ざる」と「交ざる」の使い分けについて解説してきました。「まざる」という語には、他にも「雑ざる」と表記することができます。
「雑」という字は、「乱雑」「雑然」などという語からも推測できるように「“整っていない”というニュアンスが強い」ため、「異物が入って質が下がる」という意味合いを表すことができます(円満字二郎『漢字の使い分けときあかし辞典』研究社より)。
たとえば「米に砂が雑ざっている」といった場合です。ただし、「雑ざる」は常用漢字表にはない特殊な読みなので、場合によってはルビ(ふりがな)をつけるといった配慮をしましょう。