文章を読みやすくするために校正者が考えること[例文解説]

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文章を読みやすくするための校正者が考えること[例文解説]

校正の作業においては、文章表現に対して指摘を出すことがあります。たとえば主語と述語のねじれを正す、指示語が表す対象を明確にする、読点の位置を変えるなどです。これにはいくつかの目的がありますが、そのひとつが「文章を読みやすくする」ことです。

文章が読みにくいと内容を理解しづらく、書き手の言いたいことを伝えるうえで妨げになります。書き手の意図がスムーズに読者に伝わるようにサポートするのが、校正の重要な役割です。

ただし、「なんとなく読みにくいので読みやすくしてください」というような指摘の出し方では、書き手側はどのように修正すればいいのかわかりません。校正者の個人的な感想のように受け取られてしまう可能性もあります。読みにくさの原因になっているポイントを、論理的・具体的に指摘することが必要です。

この記事では、文章が読みにくくなる主な原因と、それを解消して読みやすくする指摘の出し方を解説します。

「読みやすい文章」とは

そもそも、「読みやすい文章」とはどのような文章でしょうか。次の2つの文を読んで、どちらが「読みやすい」と感じるか考えてみてください。

<例文①>

辞書にはそれぞれ特徴があり、ひとつの辞書に載っていないからと言ってその表現が誤りだとは限らないため、表現について指摘を出す際によいのは、複数の辞書を引いて確認するのがよいですし、言葉は変化していくものなので、参照するのはできれば最新の版の辞書が新たに従来は一般的ではなかった意味や言い回しが新しく収録されている場合もあるのでおすすめです。

<例文②>

表現について指摘を出す際には、複数の辞書を引いて確認するのがよいです。辞書にはそれぞれ特徴があり、ひとつの辞書に載っていないからと言ってその表現が誤りだとは限らないためです。参照するのはできれば最新の版の辞書がおすすめです。言葉は変化していくものなので、従来は一般的ではなかった意味や言い回しが、最新の版には新たに収録されている場合もあるからです。

例文②のほうが読みやすく感じられたと思います。例文①は、何度か読み直さなければ内容が理解できなかったのではないでしょうか。

読みやすい文章とは、例文②のように「読んで引っかかるところがなく、一読で意味が理解できる」文章です。例文①のように読みにくい文章になる原因はいくつかあります。次に、その原因とそれに対する校正の指摘の出し方を説明します。

文章が読みにくくなる原因と、それに対する指摘の出し方

以下の3つにいて例文を交えてみていきたいと思います。

 1. 文が長すぎる
 2. 主語と述語がねじれている
 3. 修飾語が多い

1. 文が長すぎる

一般的に、1文が長すぎると読みにくくなります。文章の書き方のルールとして「一文一義」(ひとつの文に入れる内容はひとつにする)などとも言われるように、複数の内容を1文に盛り込むのは避けたほうが無難です。

例文は内容としては同じですが、はすべてをひとつの文にまとめているのに対し、は内容ごとに文を区切ったことで4つの文に分かれています。のように1文の中に内容が盛り込まれすぎている場合は、のように文を分ける指摘を出すと読みやすい文章に近づきます。

<例文②>

表現について指摘を出す際には、複数の辞書を引いて確認するのがよいです辞書にはそれぞれ特徴があり、ひとつの辞書に載っていないからと言ってその表現が誤りだとは限らないためです参照するのはできれば最新の版の辞書がおすすめです言葉は変化していくものなので、従来は一般的ではなかった意味や言い回しが、最新の版には新たに収録されている場合もあるからです

2. 主語と述語がねじれている

例文①の前半の文構造を見ると「指摘を出す際によいのは~確認するのがよいです」となっており、主語と述語が対応していません。主語と述語は文の根幹となる部分であり、ねじれているとその文全体の意味が把握しづらくなるので、校正者として確実に指摘を出しておきたいポイントです。校正をする際は、1文ごとに主語と述語のみを抜き出して確認するくせをつけておくと、主述のねじれに気づきやすくなります。

<例文①>

辞書にはそれぞれ特徴があり、ひとつの辞書に載っていないからと言ってその表現が誤りだとは限らないため、表現について指摘を出す際によいのは、複数の辞書を引いて確認するのがよいですし、言葉は変化していくものなので、参照するのはできれば最新の版の辞書が新たに従来は一般的ではなかった意味や言い回しが新しく収録されている場合もあるのでおすすめです。

3. 修飾語が多い

例文①の後半の「言葉は変化していくものなので~おすすめです」の部分から主語と述語のみを抜き出すと、「最新の版の辞書がおすすめです」となります。その他の部分は、主語と述語を修飾する言葉です。

<例文①>

辞書にはそれぞれ特徴があり、ひとつの辞書に載っていないからと言ってその表現が誤りだとは限らないため、表現について指摘を出す際によいのは、複数の辞書を引いて確認するのがよいですし、言葉は変化していくものなので、参照するのはできれば最新の版の辞書新たに従来は一般的ではなかった意味や言い回しが新しく収録されている場合もあるのでおすすめです

物事を説明する際に修飾語は欠かせませんが、多すぎると冗長になるだけでなく、主語と述語が埋もれてしまって文意が伝わりにくくなる恐れもあります。まず、重複する表現がある場合はひとつに絞る、あるいは書き換える指摘を出しましょう。

例文①の後半を例に取れば、以下の2点を指摘する必要があります。

<改善点>

「新たに」と「新しく」が意味のうえで重複しているので、どちらかを削除する
「~ので」が2回連続しているのでどちらかを削除する、あるいは違う表現にする

また、例文①の後半は全体的に修飾語が多い点も問題です。主語「最新の版の辞書」と述語「おすすめです」の間に「新たに従来は一般的ではなかった意味や言い回しが新しく収録されている場合もあるので」とたくさんの修飾語が入っているため、一読ではこの文の内容がつかみにくくなっています。

ただし校正者としては、上で触れたような修飾語が重複しているケースを除き、勝手に表現を削ることはできません。元の文をなるべく尊重しつつ、修飾語の順番を整理する・読点を入れる・文を分けるといった提案をします。

以上を改善した一例が、例文②の後半部分です。

<例文①>

言葉は変化していくものなので、参照するのはできれば最新の版の辞書が新たに従来は一般的ではなかった意味や言い回しが新しく収録されている場合もあるのでおすすめです。

 ↓

<例文②>

参照するのはできれば最新の版の辞書がおすすめです。言葉は変化していくものなので、従来は一般的ではなかった意味や言い回しが最新の版には新たに収録されている場合もあるからです。

主語と述語の対応がわかりやすくなるように2文に分けたうえで、表現の重複の解消・語の順番の整理をし、読点を加えています。

おわりに

校正をしていて文章に引っかかりを覚えたときには、引っかかった理由があるはずです。「なんとなく読みにくい」というように感覚で片づけてしまわず、違和感の原因を分析してそれを解消する指摘を出すように心がけることで、ゲラの文章をよりよくできるのはもちろん、校正者としてのスキルアップにもつながります。