校正のチェック方法を変えてミス削減[マーカーの効果的な使い方]

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校正ミスを減らすチェックの仕方[塗りつぶしチェックでミスを防ぐ]

ミスを防ぐ方法は、何よりも心構えが大切ですが、それ以外にも誰でも簡単に防ぐ方法があります。それは、チェックの仕方です。チェックの仕方を変えるだけでも、かなりのケアレスミスを減らすことができます。

校正でのチェックの仕方としては、
原稿やゲラに「レ点」でチェックを入れたり、確認した箇所を「マーカー」や「ダーマトグラフ」で塗りつぶしたりします。
> ダーマトグラフ【Wikipedia】

塗りつぶし=消し込み

「塗りつぶし」は「消し込み」ともいわれますが意味は同じです。
※消し込みは、元は別の業界の用語ですが、その作業の性質が似ているため、塗りつぶしと同義で用いられています。

「マーカー」や「ダーマト」で、確認した箇所を塗りつぶしていくことで、確認していない箇所が浮き彫りになっていきます。

このメリットは、一目で確認したか確認していないかがわかることです。
そのため、校正終了後のセルフチェックに有効です。

また、第三者にも気づいてもらえるメリットがあります。制作者同士で、チェック方法を共有しておくと、仮にチェックがモレていた場合でも、「ここ確認しましたか?」と気づいてもらえることがあります。

人のやることには、必ずミスが起こります。そこに、第三者の目線が加わることは非常に大きなメリットです。さらに、そのチェックが校正をしたという証拠として残るので一石二鳥です。

1. 塗りつぶしチェック 実例

校正の依頼者から、
『デザイン要素は無視で、文字情報の流し込み確認だけをして欲しい』と指示を受けた場合の実例です。

そのため依頼内容は、校正作業になります。校閲ではありません。
※実例は、マーカーでの塗りつぶしですが、ダーマトでも同様の作業です。

テキスト原稿のPDF > ダウンロード
ゲラのPDF > ダウンロード

校正前(テキスト原稿とゲラ)

次のテキスト原稿をもとに作成したゲラがあるとします。

テキスト原稿

 

 ゲラ


【出典元:個人情報委員会‐個人情報保護法ハンドブック】

校正後(テキスト原稿とゲラ)

前述のテキスト原稿とゲラを使用して、塗りつぶしチェックをしたものが次になります。

テキスト原稿(校正後)

 ゲラ(校正後)

「テキスト原稿」では、確認した箇所に対してレ点でチェックを入れています。
「ゲラ」では、確認した箇所を青色のマーカーで塗りつぶしています。
(※原稿は、可能なら最低限のチェックで抑えるのが望ましいです。)

ピンクオレンジマーカーを使うほうがより目立っていいと思うかもしれませんが、長時間作業をするなら、発色がいい色はチカチカして目が疲れるので向いていません。

また、ここでは青色のマーカーを使っていますが、ゲラが青ベースなら青色のマーカーは目立たなくなるので、緑マーカーなどを使用します。

2. 塗りつぶしチェック 解説

ゲラ(校正後)


長文の箇所の①は、線を引くように塗りつぶしています。一方、②は、Z(ゼット)で塗りつぶしています。どちらの方法でも問題ないですが、実際の作業ではどちらかに統一しておきます。


②と③は、一つの文ですが、段落ごとに確認して塗りつぶしていきます。テキストデータを流し込んだ時に、改行の設定が取れたり、文頭の一字下げ設定が取れたりすることがあります。そのため、一段落ごとに区切って確認していきます。


テキスト原稿から拾える文字情報はすべて塗りつぶしていきます。ノンブルも同様です。特に、ページ周りは、視野から外れがちなため見落としが多くなります。

※ノンブルの入れ間違いは多いです。ダブっていたりすることもよくあります。また、制作物が右開き・左開きかで、ノンブルの位置も変わるので、事前に制作物の仕様は確認しておきましょう。

3. その他の注意点

今回の作業は、テキストの流し込み確認のため、すべての文字を一文字一文字入念に確認することは、起こるミスの可能性から考えても必要ありません。文頭文末の数文字だけ、一文字一文字キッチリ見て、後はサーッと目でなぞる感じで確認する作業になります。

ですが、流し込まれたときに文字の設定が取れる恐れのある「上付き・下付きの文字」、文字化けするかもしれない「マル付き数字」などには注意が必要です。

テキスト原稿(校正後)

テキスト原稿をよく見ると、赤枠部分が太字で強調されています。そのため、ゲラでもその部分が強調されている必要があります。今回、ゲラのその部分は赤文字で強調されているので問題ありません。

仮に、テキスト原稿が太字なのに、ゲラで何も強調されていないのであれば指摘の対象になります。太字は見つけやすいですが、斜体や部分的にフォントを変えている場合もあるので、文字の体裁にも注意しつつテキスト原稿と確認していく必要があります。

4. 原稿とゲラの塗りモレ確認

最後に、原稿とゲラの塗りモレ確認をしていきます。
ちゃんと全部にマーカーがついているかどうかです。

テキスト原稿(校正後)

テキスト原稿を確認すると、全部にチェックがついているので問題ないです。

ゲラ(校正後)

ゲラを確認すると、『 POINT! 』がマーカーで塗りつぶされていません。

マーカーで塗りつぶされていないということは、次の3つのことが考えられます。

 1.確認はしたけど、マーカーをつけ忘れた
 2.確認自体がモレていた
 3.確認できなかった(その部分の情報がテキスト原稿になかった)

そこで、テキスト原稿に戻って確認します。
テキスト原稿には『POINT!』の文字情報がありません。
原稿の不備であったことがわかります。確認できなかったものは、疑問出しで対処します。

これは、おそらく作成者が付け足したのではないかと推測できます。実際の現場では、よくあることです。この程度の文字量なら、スペルチェックをしてから疑問出しをするのがよいです。

『テキスト原稿になし。入っていてOK?(スペルは確認済み)』というような疑問出しです。

ただし、長文がごっそり抜けているようなら、手配された原稿が間違っているかもしれません。校正をもう一度やり直すことになるかもしれないので、依頼者に直接聞く必要があります。

5. チェックで気を付けておくこと

マーカのチェックで気を付けておきたいことは、次の3つです。

 1.チェックは誰が見ても一目でわかるものにする
 2.相互確認できるよう皆で共有しておく
 3.チェック方法を複雑化しない

おわりに

校正依頼者から『原稿へのチェックはNG、ゲラにも赤字と疑問以外は何も書かないで欲しい』といわれた場合は、コピーを取ったもので校正して、赤字や疑問を転記するのがベストです。

ピーを取るのは手間だと思いますが、何もチェックを付けずに確認作業をするのは、見落としのリスクを高くするばかりです。万一の際には、コピーを取る以上の労力とコストが掛かってくる恐れがあるかもしれません。