「じ・ぢ」と「ず・づ」の使い分け方法

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「じ・ぢ」と「ず・づ」の使い分け方法

「地面」は「じめん」、「鼻血」は「はなぢ」

どちらも小学生が国語の授業で習う内容ですが、「じ」と「ぢ」、「ず」と「づ」は、大人でも書くときに迷うことがあるものです。

 

基本は、さ行の「じ」と「ず」を使用しますが、た行の「ぢ」や「づ」の使用が相応しいという特例もあります。ただ、基本や特例に当てはまらない例外やグレーゾーンも多くあります。

言葉の使い方は時代とともに変わるものなので、現在では「ぢ」「づ」が使用されている語でも、いずれは「じ」「ず」の使用が当然となることも考えられます。

そのため使い分けをすべて覚えるというよりは、基本的な使い分けを押さえておき、迷ったときにはその都度辞書や書籍で調べるというのがベストな方法です。

[記事作成にあたっては、以下の書籍・辞書・サイトを参考にしています]

 ・日本エディタースクール出版部_ 校正必携
 ・日本エディタースクール出版部_ 校正実務講座テキスト[上巻]
 ・文化庁HP_ 現代仮名遣い
 ・goo辞書_ 公式サイト

「じ」と「ぢ」、「ず」と「づ」の使い分けの仕方は、日本語表記の曖昧さを解消するために1986年に公布の「現代仮名遣い」で決められています。「現代仮名遣い」は、文化庁のホームページで公開されているので、興味のある方はぜひ覗いてみてください。

1. 基本は「じ」「ず」を使うのが原則

まず押さえておきたいのは、原則(第1)として「じ」「ず」だけを使うことになっています。特例(第2)として、「ぢ」「づ」を使う場合もあるということです。

次のようなイメージで覚えると頭の中が整理しやすいです。

1. 基本 ⇒『』『』を使用

2. 特例 ⇒『』『』の使用も可
     ① 同音連呼の場合
     ② 二語連合の場合

3. 特例に当てはまらない例外がある

4.⇔ 』『⇔ 』どちらでも使用可能なグレーゾーンがある

2.「ぢ」「づ」を使う特例① 同音連呼

同音連呼

特例の1つ目は、「同音の連呼」によって生じた「ぢ」と「づ」です。

日本語には、「ちち」「つつ」など一つの言葉の中で同音が連続するとき、「ちぢ」「つづ」というように後ろの語に濁点をつけて、発音しやすくする慣習があります。

このような場合は、連続性を重視して「ちぢむ」と書きます。「ちじむ」とは書きません。

 ちち ⇒ ちぢ 
 ちち ⇒ ちじ 

 つつ ⇒ つづ 
 つつ ⇒ つず 

同音連呼によって生じた「ぢ」「づ」の例

  ちぢむ(縮む)
  つづみ(鼓)
  つづら
  つづく(続く)
  つづる(綴る)
  つづめる(約める)

■ 例外

同音連呼で「ぢ」「づ」を使わないのは次の2語になります。

  いちじく(無花果)
  いちじるしい(著しい)

いずれも同音の連呼ですが、もともと歴史的仮名遣いで「じ」だったため、特例にあたらないとされています。

3.「ぢ」「づ」を使う特例② 二語連合

二語連合

特例の2つ目は、二語の連合によって生じた「ぢ」と「づ」です。

日本語では二語が組み合わさった「複合語」で、後ろの語の最初の音が「ち」「つ」の場合には、濁点をつけて発音しやすくすることがあります。

次のような法則です。

 ◯◯ + ◯ ⇒ ◯◯ +

 ◯◯ + ◯ ⇒ ◯◯ +

このような場合は、元の語との対応を示すために「ぢ」「づ」を用います。「はなぢ(鼻血)」と書き、「はなじ」とは書きません。

 はな +  ⇒ はな + ぢ 

 はな +  ⇒ はな + じ 

二語連合によって生じた「ぢ」「づ」の例

  はなぢ(鼻血)
  にいづま(新妻)
  いれぢえ(入れ知恵)
  まぢか(間近)
  こぢんまり
  みかづき(三日月)
  たづな(手綱)
  こづつみ(小包)
  かたづく(片付く)
  もとづく(基づく)
  つくづく
  そこぢから(底力)
  ちゃのみぢゃわん(茶飲み茶わん)
  ちかぢか(近々)
  ちりぢり(散り散り)
  たけづつ(竹筒)
  ひづめ(蹄)
  ひげづら(髭面)
  おこづかい(お小遣い)
  あいそづかし(愛想尽かし)
  わしづかみ(鷲掴み)
  こころづくし(心尽し)
  てづくり(手作り)
  ことづて(言伝)
  はこづめ(箱詰め)
  はたらきづめ(働き詰め)
  みちづれ(道連れ)
  こづく(小突く)
  どくづく(毒づく)
  うらづける(裏付ける)
  ゆきづまる(行き詰まる)
  ねばりづよい(粘り強い)
  つねづね(常々)
  つれづれ(徒然)

■ 例外

二語連合では、基本「ぢ」「づ」を使いますが、現代語の意識で二語に分解しにくいものは「じ」「ず」を使うことになります。

たとえば、「新妻」は「新」と「妻」で、二語を分解した上で眺めても、「新妻」本来の意味がなんとなくわかります。

 新 : 妻 ⇒ 意味がわかる

 にい + ま 

 にい + ま 

ただ「稲妻」のように分解すると意味が取れなくなるものあります。

「稲」と「妻」に分解すると、「稲妻(空中電気の放電によって生じる電光)」本来の意味はつかめません。「稲」と「妻」が合体して初めて意味が伝わる言葉です。

 稲 : 妻 ⇒ 意味がわからない

このように、分解すると意味が取れなくなる言葉やそもそも分解が難しい言葉は、「じ」と「ず」を使って書くのが原則となっています。

 いな + ま 

 いな + ま 

ただ、ここにさらに例外があります。

実際には「いなづま」「せかいぢゅう」という表記も目にします。それもOKとするのが、二語連続「ぢ」「づ」のグレーゾーンの部分です。

この辺りが、「じ ⇔ ぢ」「ず ⇔ づ」の使い分けを混同させる原因かもしれません。

基本は「じ」「ず」、でも「ぢ」「づ」も許容の言葉

  いなずま(稲妻)
  せかいじゅう(世界中)
  かたず(固唾)
  きずな(絆)
  さかずき(杯)
  うなずく(頷く)
  つまずく(躓く)
  ぬかずく(額突く)
  ひざまずく(跪く)
  くんずほぐれつ(組んず解れつ)
  さしずめ(差し詰め)
  なかんずく
  うでずく(腕ずく)
  ひとりずつ(一人ずつ)
  ゆうずう(融通)
  ほおずき(鬼灯)
  みみずく
  おとずれる(訪れる)
  かしずく(傅く)
  あせみずく(汗水漬く)
  でずっぱり(出突っ張り)
  くろずくめ(黒ずくめ)

4. 同音連呼・二語連合のどちらにもあたらない

「じ」「ず」表記だけが認められている漢字があります。

「じ(地)」と「ず(図)」は、同音連呼・二語連合のどちらにもあたらないとして、「じ」「ず」で書くことだけが認められています。

「じ(地)」は「ち(地)」が濁音化したものでなく、「ぢ(地)」が「じ(地)」に変化したものと考えます。

「じ(地)」は、「ち(地)」が濁音化したもの 

「じ(地)」は、「ぢ(地)」が変化したもの  

「じ(地)」と「ず(図)」の例

  じめん(地面)
  ぬのじ(布地)
  ずが(図画)
  りゃくず(略図)

これらの言葉の中の「じ」「ず」は、漢字の音読みがもともと濁っているものと考えるので、「じ」「ず」と書きます。

この例外は、
地は『じ』、図は『ず』と覚えてしまうほうが簡単です。

おわりに

「じ」と「ぢ」、「ず」と「づ」の使い分けは、例外も多くややこしいと感じる方も多いかもしれません。

使い分けで迷ったときには、日本エディタースクールの『校正必携』や『校正実務講座テキスト』などの書籍を参考にすると解決します。

使用上の原則やその特例について詳しく解説されています。言葉の例もたくさん取りあげているので、「じ・ず」「ぢ・づ」以外の知識の整理にも役立ちます。

他にも『記者ハンドブック(第13版)』では、この記事で紹介した例以外にも、さまざまな言葉が掲載されています。正しい表記を学びたいときの手助けとなるはずです。

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