「固い」「硬い」「堅い」の漢字の使い分け[練習問題で学ぶ]

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「固い」「硬い」「堅い」の漢字の使い分け[練習問題で学ぶ]

「かたい」という言葉には複数の漢字表記があります。この記事では、その中でも迷いやすい「固い」「硬い」「堅い」の使い分けについて解説します。

[記事作成にあたっては、以下の書籍・辞書・サイトを参考にしています]

・明鏡国語辞典(第二版)_大修館書店
・新明解国語辞典(第七版)_三省堂
・広辞苑(第七版)_岩波書店
・デジタル大辞泉_小学館
・漢字の使い分け ときあかし辞典_研究社
・記者ハンドブック(第14版)_共同通信社 など

1. 固いの意味と使い方

 「固い」「硬い」「堅い」の漢字の使い分け

「固い」「硬い」「堅い」のうち、最も広く使える表記は「固い」です。

「固い」は、「肉が固くて噛み切れない」のように物理的に「かたい」ことにも、「チームの結束が固い」のように抽象的な場合にも使うことができます。

「緩い」の対義語と考えるとイメージしやすいでしょう。

迷ったときは「固い」を使えば間違いにはならないことが多いですが、「硬い」「堅い」を使うことで、表現したいニュアンスがより明確になるケースもあります。

2. 硬いの意味と使い方

 「固い」「硬い」「堅い」の漢字の使い分け

「硬い」は「軟らかい」の対義語として、物の状態や人の態度を表す場合に使われることが多い表記です。

「硬」という字が石偏の漢字であることからもわかるように、本来は「石がかたい」ことを表します。「ダイヤモンドは最もかたい鉱物である」のような場合は、「硬い」とするのがよいでしょう。

また、石は力を加えてもほとんど変化しないことから、「硬い」は「柔軟性がない」場合にも使われます。「緊張して表情が硬い」などがこの用法の例です。

3. 堅いの意味と使い方

 「固い」「硬い」「堅い」の漢字の使い分け

「堅い」は人や物の性質に対して使われることが多い表記で、特に「丈夫である」「信頼できる」という意味を表す際に好まれます。

たとえば「口がかたい」という表現には「固い」「堅い」のいずれの漢字も使えますが、「口が堅い」とすると「信頼できる」という印象が強まります。

さらに転じて、「堅い」は「真面目である」という意味にも使われます。「堅苦しい」「堅物」などの語に「堅」の字が使われていることを考えると、使い分けのイメージがしやすくなるでしょう。

「固い・硬い・堅い」の使い分けの練習問題

以上の説明を踏まえて、次の例文中の「かたい」を漢字で表記する場合、それぞれ「固い」「硬い」「堅い」のいずれが適切か考えてみてください。なお、複数の表記が使用可能なものもあります。

Q
1. 瓶のふたがかたくて開けられない。

2. かたい内容の本の校閲が得意だ。

3. 大根にまだ火が通っていなくてかたい

4. 校正者になるという決意がかたい

5. 石のようにかたいせんべい。

6. 校正する際、公式ではないサイトをファクトチェックに使うのはかたく禁じられている。

7. 文章を書き慣れていないため、文体がかたくぎこちない。

8. がたい商売をする。

<解説>

1. 瓶のふたがかたくて開けられない。

1つ目の例文の「かたい」は「緩い」の対義語と解釈できるので、「固い」とするのが適切です。消去法で考えて、鉱物に関する表現ではなく、「信頼できる」という意味合いでもないので、「硬い」「堅い」のいずれもそぐわないと判断することもできます。

A  瓶のふたが固くて開けられない。

2. かたい内容の本の校閲が得意だ。
3. 大根にまだ火が通っていなくてかたい

2つ目の例文の「かたい」は「真面目である」という意味合いで使われているので、「堅い」と表記します。食べ物の焼き加減や茹で加減を表す「かたい」については、文脈を考慮する必要があります。

基本的には「固い」とすれば間違いにはなりませんが、3つ目の例文のように「柔らかくなるべきなのに変化できていない」場合は、「硬い」と表記することでそのニュアンスを明確にすることができます。なお、「かたく茹でた卵」のような場合は「変化した結果、かたくなった」と考えられるので、「硬い」の表記は使わないほうがよいでしょう。

A  堅い内容の本の校閲が得意だ。
A  大根にまだ火が通っていなくて硬い

4. 校正者になるという決意がかたい

4つ目の例文のように「意思が揺るがない」ことを表す場合は、「固い」または「堅い」と表記されます。

A  校正者になるという決意が固い(堅い)

5. 石のようにかたいせんべい。

5つ目の例文中の「かたい」は、「固い」「硬い」のいずれの表記も可能です。通常は「固い」としますが、「硬い」とすると、「石のように」という意味合いがより強調されます。伝えたいイメージによって表記を使い分けるとよいでしょう。

ただし、「かた焼きせんべい」という語の場合は「焼き」とされるなど、原則とは異なる表記が慣用的に使われることもあります。迷った際は辞書を引いてみることをおすすめします。

A  石のように固い(硬い)せんべい。

6. 校正する際、公式ではないサイトをファクトチェックに使うのはかたく禁じられている。

6つ目の例文のように「絶対に許さない」ことを表す場合は「固い」が使われます。「固くお断りします」といった表現もこのケースに当てはまります。

A  校正する際、公式ではないサイトをファクトチェックに使うのは禁じられている。

7. 文章を書き慣れていないため、文体がかたくぎこちない。

7つ目の例文中の「かたい」は「柔軟性がない」という意味で使われているので、「硬い」とするのが適切です。

A  文章を書き慣れていないため、文体がぎこちない。

8. がたい商売をする。

8つ目の例文については「堅い」と表記します。「手堅い」でひとつの単語であり、「手固い」「手硬い」とは書きません。

「義理堅い」なども同様です。このように用字が慣用的に決まっている場合もあるので、特にひとまとまりの単語や慣用句と思われる場合は、まず辞書を引くとよいでしょう。

A  堅い商売をする。

おわりに

この記事で解説したように、「固い」「硬い」「堅い」は適切な表記がひとつに限定されない場合もあり、使い分けに迷いやすい漢字です。

上記の原則を踏まえたうえで、どのような意味合いを表現したいのかも考えて表記を選ぶようにしましょう。

また、記事内でも説明したように、原則とは異なる表記が慣用として定着しているケースもあります。迷ったときは辞書を引くくせをつけておくと、文章を書く上で役に立ちます。