校正と編集の意味と違い:基本的な役割と目的
「校正」と「編集」、ともに文章をより良いものにするという大きな目的は共通していますが、仕事においての役割や取り組み方が違ってきます。
出版社、編集プロダクション、それら以外の会社でも、校正と編集の仕事にはさまざまな役割や職域があります。
実際の業務では、校正と編集で仕事の領域が重なる部分もあり、両方の役割を兼任する方も少なくありません。そのために両者の領域がどうしても曖昧になりがちです。
各現場によって校正と編集の意味も異なるので、すべてに当てはまるわけではありませんが大きなイメージで捉えると次のようになります。
「校正」は、文字単位まで見るのに対し
「編集」は、文字の集合(誌面全体)を見ます。
ただ編集者でも文字単位まで見る方もいるでしょうし、校正者でも誌面全体を見る方もいます。
実務レベルでは解釈は一つではありませんが、辞書の意味を中心として一般的にイメージされる校正と編集の違いや役割、目的について、以下詳しく紹介していきたいと思います。
1. 校正の意味と役割
校正とは、文章中の誤字脱字、文法的な誤り、表現の不備、用語の間違い、表記ゆれ、書式の誤りなど、さまざまな観点からミスを指摘し正しい日本語へと導いていく作業になります。一文字の誤字脱字がないように注意を払わないといけません。
校正には、文章の正確性を確保し、読み手に誤解を与えないようにする役割があります。細部にわたって文を丁寧に確認し、場合によっては文章の信憑性を確保するため情報元まで辿ります。
このように校正は、文章の正確性、日本語として適切か、その出版物の品質を文字単位まで担保する役割を担っています。
2. 編集の意味と役割
編集は、文章全体の構成や内容、表現方法、言葉づかい、文体の統一、読みやすさなどを指示することを主な作業とします。企画や原稿の主旨を捉え、内容を理解し、情報の整理や伝え方を考え、読者の理解を深められるように最適な表現方法を選択します。文章全体の方向性を改善する役割があります。
仮に同じ内容の主旨の文章であっても、書籍と雑誌では、本の持つイメージや読者層を考慮して表現方法を変える必要があります。編集では、そのような違いを理解し、読者に適したものに方向づける役割が求められます。
読者だけでなく、著者やクライアントの声を聞き、改善策を提案し出版物をより良くすることもあります。校正と比べればより総合的な役割を担うのが特徴です。
編集について辞書では次のように説明されています。
編集 …
いろいろな材料を集め、一定の方針に従って整理し、書籍・雑誌・新聞などをつくること。企画・原稿の依頼と入手・原稿内容検討・原稿整理・原稿指定を含む。普通、校正は含まない。 【出典:編集校正小辞典_ダヴィッド社】
辞書によって役割や目的の幅は微妙に異なりますが、ベースとなる作業内容はおおよそ同じです。
3. 校正と編集の簡単なまとめ
以上の説明を踏まえて「校正」と「編集」の違いを簡単にまとめると次のようになります。
「校正」は、文章の誤りを訂正することに重点をおき、文単位だけでなく、一文字一文字にわたって確認を行います。文章の整合性、日本語として正しい表現になっているか、内容が正確であるかを確認します。
「編集」は、文章全体の内容を改善することに焦点を当て、文章の読みやすさや質を高めることを目指します。広範囲な視点で、誌面構成や表現などを見ていきます。読者の理解の助けとなり、時には著者の意向も確保するといった役割を有しています。
正確な内容、正しい日本語表記、それらが読者に適しているかには「校正」と「編集」の両方の技術が必要になってきます。
ただ媒体によって、校正と編集の重要性が異なることもあります。
たとえば、学術論文や法律などの文章では、専門的な用語やルールに厳密に従う必要があります。正確性が極めて重要なため、校正が重視されます。一方、小説や記事などは、表現や読者層が重視されるため、編集の作業がより重要になる場合があります。
おわりに
校正と編集は、どちらも文章の品質・読みやすさが作業内容としてイメージされます。「読みやすい文章にすること」「誤りを指摘すること」、この部分だけみれば校正と編集は似ています。
しかし、それぞれが違う役割を担っています。最終的な目的は同じでも、アプローチの仕方が異なります。
編集が文章の内容や表現を方向づけ、校正が文章の不備を正すことで、全体の質を高める機能を果たしています。