約物一覧解説[基本的な記号・符号の意味と読み方と使い方]
この記事では、文章内で使用される基本的な記号・符号の意味や使い方を紹介しています。
記号・符号類は、文章や語句の意味を明確にし文脈を正しく表現するために使用されます。出版・印刷では、文字や数字以外の記号・符号の総称を「約物」とするのが一般的です。
※どこまでを約物とするかは解釈がわかれます。
▼ 記号・符号の分類
記号・符号の分類の仕方にはいくつかありますが、概ね以下のように分類できます。
1. くぎり符
文章・語句の区切りを明らかにするもの。
ex.句読点・コンマ・ピリオドなど
2. くくり符
文章・語句の前後をくくるもの。必ず前後一組として使用する。
ex.パーレン・かぎ括弧・隅付き括弧など
3. つなぎ符
語と語、音節と音節をつないで関係づけるもの。
ex.二分ダーシ・ハイフン・波ダーシなど
4. 省略符
文字または語句を省略したことを示すもの。
ex.三点リーダーなど
5. 表音符
漢字・仮名などの送り記号。
ex.音引き(長音符)など
6. 抑揚符
感嘆符・疑問符など
「記号」は広く、言語・文字・各種のしるし・身振りなどを含む。「文」は漢字であると同時に、地図では学校を示す記号である。「符号」は、文字を除き、図形・音声・光・電波などのしるしについて使うことが多い。
記号と符号の相違にはあいまいな面もある。目印として付けた〇は符号だが、地図上の〇は記号である。一般的に、ある体系の中でのしるしは記号だが、「モールス符号」「正(負)の符号」のような例外もある。
【出典:小学館_デジタル大辞泉】
記号・符号の分類
以下、分類ごとに記号・符号の基本的なものを紹介していきます。
記号・符号の分類の仕方は曖昧な部分もあるため、「校正記号の使い方(日本エディタースクール出版部)」に倣って分類していきます。
次の分類になります。
1. くぎり記号
2. かっこ類
3. つなぎ符号
4. しるし物
5. アクセント
[記事作成にあたっては、以下の書籍・辞書・サイトを参考にしています]
・編集校正小辞典_ダヴィッド社
・日本エディタースクール出版部_校正記号の使い方
・日本エディタースクール出版部_日本語表記ルールブック
・小学館_デジタル大辞泉
・JAGAT_約物の種類
・Wikipedia_約物・アクセント符号・ダイアクリティカルマーク
1. くぎり記号
句点・マル
文の切れ目に打つ記号。文の終端を意味する。
読点(とうてん)・テン
文の意味の切れ目に打つ記号。並列の語句の区切りにも使用される。
ピリオド・フルストップ
横組・欧文での句点に相当する。文の終端を意味する。欧文略記の省略符、小数点などにも使用される。
コンマ・カンマ
横組・欧文での読点に相当する。複数のものを列挙するとき、数字の位取り(千単位の区切り)にも使用される。
中黒・中点・中ポツ
並列の語句の区切り、外国の固有名詞で2語以上からできている場合(姓名の区切りなど)に、その間に使う。「、」で区切るよりも全体が一つの塊である意味合いが強くなる。
コロン
文の意味の切れ目の表示。引用や例示する前などにも用いられ、前の部分で述べたことをさらに詳しく説明する場合や、対話文で発言者と発言内容を区切る場合などに使用される。時刻の表示に使用されることも多い。
セミコロン
文の意味の切れ目の表示。二つの対等な意味をもち、かつ連続していない文の中間に使う。日本語の文章内ではほとんど使用されることがない。基本は、コロンと同じ扱いだが、切れ目の比重はコロンのほうが大きい。
アポストロフィ
文字や数字の省略する場合や、欧文の所有格などで使用される。
疑問符・クエスチョンマーク・はてなマーク・耳垂れ
疑問や質問の気持ちををハッキリ出そうとする文の最後に使用する。疑問の意味を増幅させるために、疑問符を二つ「⁇」用いることもある。
感嘆符・エクスクラメーションマーク・びっくりマーク・雨垂れ
驚き・命令・呼びなどの気持ちをハッキリ出そうとする文の最後に使用する。より大きな驚きを示して感嘆符二つ「‼」が用いられることもある。
・疑問符と感嘆符を組み合わせたものに、感嘆符疑問符「⁉」・疑問符感嘆符「⁈」などがある。これらは、驚きと疑問を同時に表す場合に使用される。
斜線・スラッシュ
2. かっこ類
かぎ・かぎ括弧
会話・強調・注意を引きたい語句、引用文をくくるのに使用される。書名、雑誌名などをくくるのにも使用される。
二重かぎ・二重かぎ括弧
書名・雑誌名、また「 」の中にさらにカッコを入れたいときに使用される。
クォーテーションマーク・一重引用符・シングルクォーテーションマーク
横組・欧文で「 」に替わるものとして使用される。日本語のかぎ括弧とほぼ同じ扱い。
ダブルクォーテーションマーク・二重引用符
横組・欧文で『 』に替わるものとして使用される。日本語の二重かぎ括弧とほぼ同じ扱い。
パーレン・括弧・丸括弧・小括弧
語句などの補足説明・小見出しの番号などに使用される。出版・印刷では、パーレンと呼ばれることが多い。
隅付き括弧・すみつきパーレン
亀甲(キッコウ)・亀甲括弧
引用文中に引用者の補足説明をつける場合に使用される。欧文では、ブラケットを使用する。
ブラケット・角括弧・大括弧
数式や化学式ではキッコウを使用せず、ブラケットを使用する。
ブレース・波括弧・中括弧
山がた・山括弧・山パーレン
強調したい語句をくくる場合・引用文をくくるのに使用される。
半角が正しい。不等号(<>)とよく混同されるので注意。
二重山がた・二重山括弧
ちょんちょん
強調したい語句をくくるのに使用される。
▼ かっこ類について
括弧の使用に関しては、一般的とされる使用方法は存在しても、特に厳密なルールが存在しているわけではありません。何を使用すべきかは、企業や媒体のルールに準じます。
一つの誌面内で使用方法がバラつくのはNGですが、特にルールがなければどのカッコを使用しても特に問題ありません。
ただし学術書、数式・化学式などでは、カッコを使用する順番や、引用にはどのかっこを使用するかルール決めされているので注意が必要です。
また括弧の初めを「起こしの括弧」、あとの括弧を「受けの括弧」と呼び分けます。受けの括弧は「閉じの括弧」とも呼ばれます。
3. つなぎ符号
ハイフン・連字符
欧文の文節を示したり、単語の連結に使用される。行末で単語を分割して次行へ続けるときに前行末につけることもある(ハイフネーション)。
二分ダーシ
横組で数や時間などの範囲を示す場合に使用される。
全角ダーシ・ダッシュ
数、時間や月日の範囲を示す場合・場所の経過を示す場合に使用される。
2倍ダーシ
パーレンと同じように文中に語句や文を差し挟むときに使用される。また、文字や語句の省略にも使用。
波形・波ダーシ
数、時間や月日の範囲を示す場合に使用される。また、文字・語句の省略にも使用。
三点リーダー
言い切らない文の最後に使用される。主に会話文の中で、「沈黙」や「絶句」などの言葉の「間」を表現する。三点リーダーは、基本二つ並べて使用する。
二点リーダー
圏点・傍点
強調したい語句に使用される。縦組では文字の右、横組では文字の上に付けて強調を表す。
▼ つなぎ符号について
つなぎ符号の中で、特に横棒で表すものは類似したものが多いので見分けるのが困難です。
たとえば、ハイフン・二分ダーシ・マイナス・全角ダーシ・漢数字のいち・音引きなどです。これらは、フォントによっては全く同じに見える場合もあります。一定速度で文章を読みながら、それらの違いまで判別するのはほぼ不可能に近いです。
混同しやすいものに対しては、ある程度の見分け方を覚えておく必要がありますが、現在ではデータさえあれば容易に判別できます。そのため「こういうものが混同しやすいんだな」というレベルで覚えておけば大丈夫です。
4. しるし物
プライム・ワンダッシュ
角度や経緯度などの分・導関数の表示・フィートに使用される。英数字の右肩に付ける記号で数学などで用いられる(AとA′など)。
ダブルプライム・ツーダッシュ
角度や経緯度などの秒・導関数の表示・インチに使用される。
米印
文章中に書ききれない注釈などを、段落の外などで付け加えるときに使用される。
アスタリスク・スター・ 星印
省略、選択肢など表すときに使用される。
ダブルアステ
アステリズム
丸印・白丸
黒丸
二重丸
黒三角
白三角
白四角・四角
上矢印
くだけた文章では、文末に用いて気分の高揚を表すことがある。
下矢印
くだけた文章では、文末に用いて気分の消沈を表すことがある。
左矢印
右矢印
両矢印
白ぬき太矢・白矢
ダガー・短剣符
ダブルダガー・二重短剣符
セクション・章標・節記号
パラグラフ・段標・段落記号
ナンバー・番号符・番号記号・井桁
数字の前に置かれて番号であることを示す。英語のナンバー(No.)と同じ扱い。シャープ記号(♯)とは別ものなので注意。
アンパサンド・アンド
丸中数字
白ぬき数字
5. アクセント
アキュート・アクサン・揚音符
グレーブ・抑音符
サーカムフレックス・抑揚音符・ハット
ウムラウト・分音符・ディエレシス
ティルド・チルダ・ウェーブ
ロング・長音符・バー
▼ アクセントについて
アクセント記号は、日本語の濁点や半濁点に近い概念になります。ドイツ語、フランス語、スペイン語、イタリア語、ベトナム語など、多くの国の言語で使用されています。
多言語の校正をしている方には馴染みのあるものですが、日本語がメインの校正者ならほぼ見る機会がないと思います。
※アクセントについては、ダイアクリティカルマーク(発音区別符号)で調べると詳しく知ることができます。
6. その他
単価記号・アットマーク
コピーライト・丸シー・著作権表示
登録商標
音引き・長音符
漢数字の一や全角ダーシと混同されるので注意。
破断線
縦線
項目の区切りなどに使用される。
下線・アンダーライン・アンダースコア
約物(記号・符号)の効果的な学習
記号・符号の基本的なものを紹介しましたが、現在ある記号・符号類の種類は、全角半角の違いも含めれば何百にも及びます。
これから校正・校閲の勉強をしようとする方は「たくさんあって面倒……」と思うかもしれませんが、すべての記号・符号を覚える必要はありません。覚えておいて損はないですが、効果的な学習とはいえません。
校正する媒体によって使用される記号・符号の頻度は違ってきます。
前述したように、多言語の校正では、アクセント記号を頻繁に目にすることになるので、それらの知識は必須です。
学術系や英語の論文になると、アスタリスク、タガーような記号が注釈などで使用されるため覚えておく必要があります。化学式、数式が出てくるものになれば、大括弧・中括弧・小括弧の使い分けは必須です。
そのため記号・符号の勉強は、まずは基本的なもの、もしくは自分の周りでよく目にするものを軸にして覚えていき、そこから範囲を広げていくのが効果的です。