目 次
校正の仕事で、楽しいと感じる瞬間・やりがい・大変なこと
「なんで校正の仕事してるの?」
「校正って楽しい?」
っていう質問をされることは結構多く、校正の仕事が黙々とゲラと向き合って作業しているイメージが強いせいでこういう質問が出てくるのではないかと思います。
楽しいかって聞かれれば、楽しいと答えます。
楽しいといっても、ライブに行ったときのような高揚感とかではなく、親しい友人と話しているときや休日前に明日何しようかなって考えているときのような楽しさに近いです。
1. 適性がある
満ち足りた状態という意味で楽しいという言葉を使うなら、自分の得意なことを活かせる仕事だと思える瞬間です。
自分のどういうところが校正の仕事に適性があるかというと、
- 忍耐力がある
- 学習が好き
- 記憶力がいいほう etc.
履歴書の自己PR欄に書くようなありふれた答えですが、校正者にはある程度共通してくる要素だと思います。ただ、重要な要素である「集中力」は、少々持続力が足りないかなと思っています。その分、小まめに休憩を取って対処するようにしています。
校正をしていてわかった長所は、
- スピードがある
- 決断が早いほう
- 間違いのパターンを見つけるのが得意
- 少しの差でも違いがわかる
- 全体を把握できる etc.
これらは、他の校正者から学んだり経験を通して培ったりしたものが多いです。
活かせる強みは媒体や環境によって変わってくるので、校正にこれらの要素が常に必要とされるかどうかはわかりませんが、これだったら誰にも負けないというものや、自分が得意だと思えることを仕事に活かせるのは楽しいと思える瞬間です。
2. 考える・メモを取る・振り返る ⇒ 自己成長
どんな仕事にも言えることですが、常に目の前の仕事にだけ集中していればいいというわけでなく、次につながることにも考えを巡らしておく必要があります。一つの事柄から考えを深掘りしていくのが好きな人には、校正は成長できてやりがいのある仕事だと思えます。
たとえば、
「こういう言い回しがあるのか。他の言い換えや類語って何があるんだろう。」
「この間違いは、他でも起きそうだな。ああいう場面とかこうい場面でも起こるかもしれない。」
目の前の仕事からの経験だけではなく、そこから次に活かせることを推測したり類推したりすることがスキルアップにつながります。校正をしていて、ふと感じたことを後から振り返られるように、こまめにメモに残しておく習慣が大切です。
校正の仕事では、よく起こる間違いや想定できる間違いが意外と多いです。日々の校正作業で感じたことをコツコツとメモに残してノウハウを蓄えることで見えてくることがあります。
「考えるーメモを取るー振り返る」という地道な行為が、後々の自分の成長につながったと実感できたときは、やりがいを感じられます。
3. チームでの達成感
校正は個人で黙々と作業することもありますが、意外と複数人のチームで作業することも多いです。
数百ページの大型の校正物件になると、何人もの校正者で手分けして作業します。その場合、各校正者がバラバラな視点で校正していては品質が安定しません。そのため作業方針を決め、段取りを考える必要があります。
たとえば、
「この部分には疑問出しをしなくていいです」「ここには赤字を入れてください。入れ方はこの書き方に統一しましょう」など。校正作業も「まずは、この作業からやります。これは後回しでいいです」などといった感じです。
大きな物件になればなるほどこの段取りが大切です。複数の校正者で手分けする場合は、段取りを間違えると、二度手間になったり誰かの待ち時間ができたり効率が悪くなります。
そこで一人一人の協力と連携が大切になってきます。個々が目の前の仕事に集中しつつも、要所要所でコミュニケーションを取りあって一つの仕事に向き合います。
一つの校正物件をチームで効率よく達成するということは、大きなやりがいです。
4. 大変さから得られる楽しさ
楽しいと感じられることだけでなく大変なことも当然あります。楽で簡単な仕事ばかりだとマンネリ化してしまいます。大変なこともあるからこそ、やりがいも大きいのではないかと思います。
▼ 大変なこと
1. 気の抜けないプレッシャーのかかる仕事であること
どんな優秀な校正者でも必ず見落としやミスはあります。今日見落とすか明日見落とすかわかりませんが、いつか必ず見落とします。気の緩みが許されない仕事です。
仮に見落としたとしても、ずっと落ち込んでいるわけもいかず、仕事では強制的に気持ちを切り替えないといけません。そういうメンタルの強さも必要になってきます。
2. 状況に応じた判断が求められること
複数の校正物件を抱えていると、物件によってルールが違ってきます。それぞれの物件で判断基準も違ってきます。グレーゾーンも多く、手探り状態の中で常に状況に応じて判断をしなくてはいけません。正解があって正解がないような状態で、最適な判断を求められることがあります。
3. 時間的な制約や予算的な制約があること
時間がない仕事の場合は、急ぎで仕事をする場面も出てきます。いつも自分のペースで仕事ができるわけではありません。予算的な都合で自分の納得のいくところまで校正ができないことも多いです。
以上のような大変と思えることに対しても耐性があり、いい意味で割り切ることができるようになると楽しさとやりがいは増えてきます。
逆にいうと、こういう大変なことにストレスを感じていると、積もり積もって校正が「つらい」という作業になってきます。
5. 間違ったやりがい
校正を始めた頃は間違いを見つけて感謝されることで、それがやりがいになる時期もあります。
ただ間違いを見つけて嬉しいとか、たくさん間違いを見つけて満足で終わっているのはよくありません。その間違いの原因も同時に考える必要があります。
たくさん間違いを見つけるようであれば、間違いが起こる制作環境が問題になってきます。満足でなく憂うことです。
そのため目の前に起こる間違いにだけ対処するのではなく、間違いの元を見つけるようにしなくてはいけません。それが制作物の品質を高めることにもなり、制作工程の品質改善につながっていきます。
おわりに
楽しいこと、やりがいをあげていけば切りがないですが、一番は適性あってこそだと思います。
ただ、会社や媒体によって校正に対する考え方やルールも違ってきます。A社の校正には合わないが、B社の校正には合うというケースもあります。
校正の仕事の適性というよりも、会社や媒体との「相性」もあるかもしれません。校正が向いていないと思う人でも自分の能力のせいではなく、単純に「相性」が悪いということも考えられます。