目 次
誤字・脱字・衍字・誤植[意味と違いをわかりやすく解説]
この記事では、誤字・脱字・衍字(えんじ)・誤植(ごしょく)についてわかりやすく解説しています。
記事の最後に、各用語の辞書での意味をまとめています。意味だけ知りたいという方は、そちらをご覧ください。
1. 誤字・脱字・衍字の意味と実例
まず、誤字・脱字・衍字の意味から紹介したいと思います。
誤字・脱字・衍字についての辞書での意味は次のようになります。
誤字
→ あやまった形、用法の文字。まちがって書かれた字。
脱字
→ あるべき文字が抜けていること。また、その文字。書き落としたり、印刷で抜け落ちたりした文字。
衍字(えんじ)
→ 誤って語句の中に入った不要な文字。
3つのうち「衍字」は一般的とはいえませんが、「脱字」の対義語になります。「脱字 ⇔ 衍字」の関係です。衍字の「衍」の漢字には「余り/余計な」という意味があります。そのため、衍字は余計な文字ということになります。
▼ 誤字・脱字・衍字を実例で見ていくと次のようになります。
1.誤字の例
→「ドラえもん」の「え」が、カタカナになっている
2.脱字の例
→「ドラえもん」の「え」が、抜けている
3.衍字の例
→「ドラえもん」の「え」が、一つ余計に入っている
▼ 誤字・脱字・衍字の意味を端的にいうと次のようになります。
1. 誤字 … 文字が違う
2. 脱字 … 文字が抜けている
3. 衍字 … 文字が多い
1~3をまとめて「誤字脱字」とされることが一般的です。
辞書での誤字脱字の定義は次のようになります。
誤字脱字
→ 誤った形の文字や誤って使った別の字、書き落とした文字、文の途中で抜けている文字などの総称。
2. 誤植(ごしょく)とは?
誤植という言葉は、印刷物(書籍・雑誌・カタログ・パンフレット・チラシなど)に使用されます。そのため、Web媒体には使用されません。
誤植の英語表記は「misprint」となるため、ミスプリントと言われることもあります。
▼ 誤植は、前述した誤字・脱字・衍字のすべての意味を含めた間違いです。
誤植と聞けば、文字の間違いだけのイメージが強いですが、誤植とされる範囲は辞書でも明確ではありません。これは、辞書によって定義が違うというよりも、DTPの普及によって言葉の定義が追いついていないといったほうがいいかもしれません。
本来の誤植の意味には、次のようなものが含まれます。
1. 文字違い・漢字の字体違い・約物や記号違い
2. 文体の前後が逆になる(逆植)
3. 文字の脱落(脱字)と誤入(衍字)
4. 文字の大きさ違い・書体違い・段落違い・字下げ違い・字間違い・行間違い・位置違い など
一例として、次のような間違いも誤植に含まれます。
・書体の間違い
・字下げの間違い
DTPの普及に伴い、印刷業界では使用される言葉の意味も大きく変わりました。使わくなった用語もあります。
「組み落とし」や「逆植」などもその例で、現在では耳にすることがないと思います。今では一部の辞書でしか見られない用語です。
※「組み落とし」は、脱字と同じ意味として使われます。
※「逆植」は、文字の順序が逆になる間違いのことをいいます。
誤植の間違いの範囲には、世代や会社、制作環境によって変わってきます。どの間違いまで含めるか線引きするのは難しいですが、関与者と共通の認識があれば特に問題ありません。
誤植という言葉を普段使用しないのであれば、現代に則した意味で覚えておけば大丈夫です。
おおよその意味としては「印刷物の文字の間違い」となります。
▼ 辞書での誤植の定義は次のようになります。
誤植
→ 印刷物の中の文字や符号などの誤り。ミスプリント。
3. 誤植の由来について
誤植は、植字(しょくじ)を誤ることから誤植といわれます。
では、この植字とは何か?
「植字」の字は「活字」のことを表していて、この活字とは次の図のようなものをいいます。
活字は、ハンコをイメージするとわかりやすいです。突出部に字面があり各柱状の印刷用材です。この活字を一つずつ組み合わせて、印刷できるようにページの形にまとめあげていきます。
(※活字には、印刷された文字そのものを表す意味もあり、現在ではこの意味のほうが一般的です)
▼ 植字の解説
次の図はかなり簡素化したものですが、上の活字が並べられている状態とイメージしてください。
たとえば、「からす」の文字を印刷したい場合。
「か」と「ら」と「す」の活字を、一字ずつ人の手で選び出して「からす」の文字になるように並べていきます。
この活字を並べていく作業を「植字」といいます。
植字は、「文字を組む」「組版」などとも呼ばれます。
植字作業は、膨大な量の活字から一字ずつ人の手作業で選び出して並べていきます。そのため間違いも起こります。
たとえば、
「からす」を「かろす」にするような間違いも起こりえます。
そのように文字が誤って組まれること、すなわち植字作業を誤ることが「誤植」となります。
ここから、ひろく校正刷りや印刷物の誤りに派生していったとされています。
※「植」の漢字の意味には「うえる」の他に、「まっすぐに立てる」という意味があります。植字は、「文字をうえる」という意味でなく「文字を立てる」という意味で「植」の字が使われています。
4. 誤字・脱字・誤植などの使い方
それぞれの用語の使い方は次のようになります。
特に難しい言い回しはありません。
▼ 誤字・脱字・誤植の使い方
[誤字]
- この誤字を訂正してください。
- 書類の一部に誤字を発見しました。
- この本には、誤字が多い。
[脱字]
- それはおそらく脱字だと思います。
[誤字脱字]
- 誤字脱字を修正した書類を送った。
- この本は、何度も校正が繰り返されたので、誤字脱字が全くない。
- 誤字・脱字を発見した場合は、連絡ください。
[誤植]
- 辞書の誤植を偶然見つけた。
- 10ページ目の4行目に誤植がある。
- 急いで印刷されたので、その本には誤植が多い。
- すばらしい本だが、 誤植がやや多いことだけが玉にきずだ。
以上が使用例になります。
それぞれの用語を入れ替えても通じます。
- それはおそらく誤植だと思います
- それはおそらく誤字だと思います
- それはおそらく脱字だと思います
ただ、大きな括りとして誤植があり、その中に誤字や脱字、衍字があります。そのため、次のような使い方には違和感があります。
△「印刷物に脱字がありました。ドラえもんの「え」が抜けている誤植です。」
○「印刷物に誤植がありました。ドラえもんの「え」が抜けている脱字です。」
▼ 誤植の言い換え
誤植は次のように言い換えることもできます。
- 印刷物に間違いがありました
- 印刷物にミス(プリント)がありました
- 印刷物に文字の誤りがありました
誤植という言葉に馴染みのない方はこちらの使用をお勧めします。印刷物に限らず、Web媒体にも使える表現です。
一方、印刷物の誤植の原因の一つに「見落とし(見逃し)」というものがあります。
「印刷物に見落としがありました」という表現になると、校正作業上でのミスのイメージが強いです。校正という業務は校正者だけがするものではないですが、校正者がミスをしたという印象が強くなります。
▼ 誤字・脱字・衍字の言い換え
誤字や脱字、衍字などは意識して使う必要もなく、わかりやすい言葉で相手に伝えることが大切です。
[誤字の場合]
→ ドラえもんの『え』が、カタカナになっていました。
[脱字の場合]
→ ドラえもんの『え』が、抜けていました。
[衍字の場合]
→ ドラえもんの『え』が、ダブっていました。
もしくは、
→ ドラえもんの『え』が、一つ余計に入っていました。
「これは誤字」「それは脱字」などと使い分けて説明するよりも相手にちゃんと伝わります。
一方、誤字・脱字の明確な使い分けが必要な場面もあります。
間違いの原因究明などで、社内文書や顧客へ詳細な状況を説明するときです。その場合、起こった間違いの種類も突きとめておく必要があります。間違いを誤字・脱字などで分類しておくと、その対策に活かすことができるからです。
脱字の場合は、その言葉が意味をなさなくなることが多いので、校正ソフトでの発見率も高くなり有効なミス対策になってきます。
5. 辞書での定義(誤字・脱字・衍字・誤植)
▼ 以下、記事内で紹介している各用語の辞書での定義です。
誤字
・あやまった形、用法の文字。まちがって書かれた字。
脱字
・あるべき文字が抜けていること。また、その文字。書き落としたり、印刷で抜け落ちたりした文字。
衍字(えんじ)
・誤って語句の中に入った不要な文字。脱字の対義語。
誤字脱字
・誤った形の文字や誤って使った別の字、書き落とした文字、文の途中で抜けている文字などの総称。
誤植(ごしょく)
・印刷物の中の文字や符号などの誤り。活版印刷で、植字の誤りで起こるところからいう。ミスプリント。
[記事作成にあたっては、以下の書籍・辞書・サイトを参考にしています]
・日本エディタースクール出版部_実例 日本語教室
・小学館_精選版 日本国語大辞典
・実用日本語表現辞典
・ダヴィッド社_編集校正小辞典
・weblio_英語例文