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挿入や追加の校正記号のまとめ[赤字の入れ方から間違いやすいポイントまで解説]
挿入の校正指示は、任意の箇所に文字を追加したいとき、文を入れたいときに使われます。文字や文だけでなく、図版などにも使用されます。訂正や削除の指示と同様に、よく使用される校正記号の一つです。
▼ 挿入の校正記号
・文中に「□□」の2文字を入れたいときの書き方
▼ 挿入の校正記号の応用
挿入指示では、通常、横組みの場合は右方向(→)に、縦組みの場合は下方向(↓)に移動します。
・特定の位置に広げたい場合は、移動の校正記号をセットで使います。
・挿入した分、左に広げたい場合
・挿入した分、左右に均等に広げたい場合
この挿入の校正指示で、気を付けておきたいポイント、よく見られる間違いを例題を交えて紹介していきたいと思います。
校正の例題と聞けば、固い印象でとっつきにくいと思う方も多いかもしれません。そのため、アニメや映画、ドラマでもお馴染みの「怪物くん」を例にしています。
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※記事内の例題で使用している文章や画像の出典は以下になります。
・文章:Wikipedia_怪物くん
・画像:Twitter_公式 藤子A展_2018年9月11日tweet
1. 挿入指示で見られる間違い例
・「は」の後ろに読点を入れたい場合
・適切な指示は次のようになります。
■ このときに挿入位置を間違えることがあります。
・挿入位置を間違えた例です。
位置を書き間違えるのは単なるケアレスミスですが、これにはちゃんと原因があります。読点の赤字を入れることに気をとられたせいで、このような間違いが起こります。
何かに気をとられてうっかり書き間違えてしまうということはよくあります。
・場面は違いますが書籍でも次のように紹介されています。
【出典:日本エディタースクール出版部_校正練習帳②】
そのため、校正後の見直しが大切になってきます。文字の赤字だけでなく挿入箇所も含めてすべて確認する必要があります。
ただ、この手の書き間違いは、赤字を書いた本人は正しく書いたと思い込んでいるので、自分自身ではなかなか気づきづらいものです。
▼ 書き間違えた赤字の訂正方法
・間違えた指示に対して取り消し線を引き、新たに指示を入れ直します。
▼ 修正間違いが起こりやすい赤字
挿入箇所の前後に似たような文字がある場合も、赤字の入れ間違いが起こりやすくなります。赤字を入れる側だけでなく、修正側(オペレーターなど)も挿入箇所を見間違える可能性が高くなります。
1.次の赤字では、修正側が挿入位置を見間違える可能性が高いです。
2.このような場合は指示を補足します。
※赤の波線は、挿入位置を強調するために入れています。
3.2の簡略化です。
4.文で説明してもわかりやすいです。
補足の指示の書き方に決まりはありませんが、修正側が見間違えないように指示することが大切です。
2. 挿入指示で見られる間違い例
▼ パターン1
■ 赤字
■ 修正結果
・赤字は正しく反映されています。
・ただ、前後を含めて文を読んだ場合、おかしいことに気づきます。
「怪物くん」と「本名」の繋がりが不自然です。
所有格の「の」などが入れば自然な文になります。
これも前述したように「『本名』を入れる」ということに気をとられるあまり、「の」を入れ忘れたということが考えれます。
このような挿入後の前後の文の繋がりが、おかしくなることはよくあります。
▼ パターン2
■ 赤字
■ 修正結果
・赤字は正しく反映されています。
・文をそれぞれ区切って読めばおかしくありませんが、通しで読んだ場合に文体がおかしなことに気づきます。
挿入される文が長文になると、単純に赤字だけでなく前後との整合性も確認する必要が出てきます。数文字程度の挿入なら大したことはありませんが、文字数が多くなればなるほど校正者の負担は増してきます。
▼ パターン3
・挿入指示によって表記ゆれが起こることもよくあります。
■ 赤字1
■ 赤字2
挿入指示は、「新しく入るもの」と「既存のもの」とで食い違いが発生することが多いです。
固有名詞がばらつくこともあります。
たった数文字の挿入でも、他のページに影響してくることがあります。
作業方針にもよりますが、挿入の赤字があった場合は、その指示が反映されているかだけでなく、他の箇所にも気をつけなければいけません。場合によっては、文章を読み込まないといけないこともあります。
3. 挿入指示で見られる間違い例
■ 赤字
・複数の挿入箇所がある場合は、まとめて指示を入れることがあります。
・このときに、手前の赤字(目立たないほう)が修正側に見落とされることが多いです。
このような場合は、修正側に赤字が2か所あることをちゃんと伝えておく必要があります。そうすることで、余計な修正漏れを防げます。
修正側に誤解を与えない/見落とされないようにするため、赤字の入れ方を工夫していく必要があります。
1.個別に赤字を入れる。
2.文字を補足する。(※鉛筆書きでも大丈夫です)
3.2に「入レル」も付け加えておくと、より親切な指示になります。
4. 挿入指示で見られる間違い例
ここからは、文章と画像がセットになったものでよくある間違いを紹介したいと思います。
文章と画像やイラスト、表組みなどがセットになって掲載されている誌面は色々な媒体で見られます。
■ 赤字
文章に「オオカミ男、」を挿入する赤字が入った場合。
■ 修正結果
・赤字は正しく反映されています。
・ただし、文末の文字が切れています。
文字が追加されることによって、文末が欠ける原因はいくつかあります。
よくあるのは、テキストボックスのエリアから文字があふれ(オーバーフロー)表示されていないことです。他にも、文字が画像の後ろに隠れているということがあります(下の画像参照)。
いずれの理由も、誌面を見ただけでは原因までわかりません。間違いに対しては、「文字の欠け出ス」「文字元に戻ス」などの赤字を入れておきます。
このような間違いは、素読み(文章を読む)をするならすぐにわかります。ただ、単純に赤字との照合作業だけしかしない場合には見落とされることが多いので注意が必要です。
5. 挿入指示で見られる間違い例
■ 赤字
■ 修正結果
・赤字は正しく反映されています。
・文章と画像とのアキがなくなっています。
これは、文章が増えたのに画像の位置をそのままにしてるせいでアキが詰まったわけです(下の画像参照)。
ここでは、文章と画像は対になっているので両者を一つと見なす必要があります。
■ この場合の適切な修正方法は、文章が増えた分(一行分)、画像も一緒に下へ下げることです。
■ 適切な修正結果
文字が追加されて一行増えたとしても、画像と文章のアキは元の状態を維持するのが適切です。
各パーツを単体で見るのではなく、全体のバランスも考えておかないと気づけない間違いです。
6. 挿入指示で見られる間違い例
■ 赤字
これは、修正結果を見なくても赤字だけ見れば、おかしな点がわかります。
文章に「オオカミ男、」が追加されたのに、画像にオオカミ男がいません。
挿入指示では、何かを追加したけれどそれに対応するものがないということが非常によくあります。それが、完全に間違いだとは言えませんが、校正では疑問出しの対象になります。
画像やイラスト、表組みなどがあると、文章内でその説明をしていることが多いです。赤字が入った場合は、常に対応しているか確認するクセを付けておきます。
挿入(追加)で確認する5つのポイント
挿入指示で起こる間違いを個別にあげていけばキリがないですが、すべての間違いを覚える必要はなく、ポイントさえ押さえておけば大丈夫です。
▼ 挿入指示で気を付けておきたいことは次の5つです。どれも基本的なことなので難しくありません。
■ 赤字
1.挿入された文字が正しく入っているか。
2.段落の文末が欠けていないか。
3.前後の文の繋がりがおかしくないか。
可能であれば、前後の「文字」でなく、前後の「文」を含めて確認するのがいいです。必要に応じて、表記ゆれを起こしていないか、文体が正しいかなどに注意して確認します。
4.行数が増えた場合、周りの余白(アキ幅)に不自然な箇所がないか。
5.画像やイラスト、表組みなどがあれば、挿入されたもの(文や文字)と整合性がとれているか。
おわりに
挿入指示に関しては、まずはポイントを頭に入れておきます。それから個別の間違い事例で知識に肉付けしてくという学習が効果的です。
もしくは、たくさんの間違いに触れて間違いのパターンをつかんでいくというやり方も有効です。
校正・校閲では、パターン化された間違いというものが結構あります。一見すると、特殊な間違いのように思えても、間違いが起こった原因は同じということもあります。
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