目 次
文字の送り[前の行・次の行へ文字を送る指示]
文字送りとは、校正による文字の追加や削除の結果、行頭の文字を前行の行末へ、行末の文字を次行へ移動することをいいます。
文字送りの校正記号は、改行記号と形状が似ていて同じような働きをします。また、文字送りとセットで扱われることが多い「行送り」という指示もあります。
・行送りについて以下の記事を参照ください。
> 行送り[次ページへ行を送る・前ページへ行を送る]と改ページ
文字送りの調整は、基本的にDTPで自動調整されます。特別な事情(【6】の章で説明しています)を除いて、追加や削除の指示があるたびに校正者が逐一赤字を入れることはありません。
ただ、文字送りの指示を使う機会は少なくても、全く使わないということでもないです。原稿に指示が入っていることもあります。使用しなくても見かけることは意外とあるかもしれません。
そのため、ある程度の使い方や注意点などは知っておく必要があります。
1. 文字送りの校正記号
▼ 文字送りの校正記号(横組みの場合)
・前の行へ文字を送る指示
・次の行へ文字を送る指示
▼ 文字送りと似ている校正記号
・改行の指示
記号自体も似ており、同じような働きをします。文字送りの記号の代わりに改行を使っている場面もよく見られます。
・行送りの指示
行送りは、行単位で指定した行を前のページや次のページに送ることです。行送りの校正記号は、文字送りと違い行全体を囲みます。
2. 文字送りの校正記号の使い方
■ 前の行へ文字を送る場合
・2行目、3行目、4行目の「■…」を前行へ送る例
【結果】
■ 次の行へ文字を送る場合
・1行目、2行目、3行目の「■…」を次行へ送る例
【結果】
3. 文字送りの校正記号の注意点
・鉛筆書きで指示
文字送りの指示は、鉛筆などで指示されることもあります。
校正者の覚えとして書くこともあるようですが、ゲラに不要な指示を入れるのは避けるべきです。また、鉛筆書きは補足の指示のイメージが強いため、鉛筆で書く程度の指示なら特に入れる必要はありません。
DTP側で調整してもらうのが適切です。
・避けたい赤字の入れ方
文字送りの指示は、一行ごとに指示を入れるものです。次のように簡略化して繋げることはありません。
校正記号表では避けたい指示として紹介されていますが、このような入れ方はたまに見かけます。正直なところ、一つ一つに字送りの指示を入れるよりも、こっちのほうが簡潔で見やすい場合もあります。
校正者ならこの使用方法は避けたいですが、この指示で入れてくる人は意外と多いです。
4. 文字送りの指示が目立たない場合
文字送りの指示は、校正記号だけでは目立たないことがあります。そのため校正記号に加えて、文字も補足しておくと伝わりやすくなります。
補足する文字の表現は色々ありますが、シンプルに「送ル」がわかりやすいと思います。「文字送ル」でも大丈夫です。
校正記号+文字で指示
他にも前の行へ文字を送る指示の場合、追い込みの記号と併用することができます。
文字で指示する場合は、「送ル」だけでなくて「前の行ヘ」や「3字送ル」など文字数を指定しても伝わりやすいです。
次の行へ文字を送る場合は、追い込みの記号は使えないので文字で補足します。前述した文字数を指定する指示でも大丈夫ですが、「次の行ヘ」などで指示してもわかりやすいです。
5. 行の増減を指示する
文字送りの指示にともない、行数の増減を指示することもできます。
次のような場合に使用します。
1. 文字の削除にともない字送りを調整して、一行減らしたいというとき
2. 文字が追加されるので、一行増やしてもいいというとき
(2の意図は、無理して今の行数で収めなくてもいいよというときに使います)
行数の増減は「-1」や「+1」などで指示します。
ノド側でなく小口側に書き入れます。
■ 前の行へ文字を送って、1行減らす
・パターン1
文字を送って、4行目を削除するという指示になります。
※「-1」でなくても「-1行」と書いてもわかりやすいです。
・パターン2
※この場合、丸付きの-1は鉛筆書きでも大丈夫です。
[パターン1と2の結果]
・文字が送られて1行分削除された状態になります。
「-1」が伝わりづらい場合は、文字で指示しても大丈夫です。
■ 次の行へ文字を送る
・パターン1
⇒ 文字を送って、3行目と4行目の間に行を追加するという指示になります。
※「+1」でなくても「+1行」と書いてもわかりやすいです。
・パターン2
※この場合は、鉛筆書きでも大丈夫です。
[パターン1と2の結果]
・文字が送られて1行分追加された状態になります。
6. 文字送りの赤字を入れる場面
基本的に文字送りは、DTPで自動処理されるので校正者が指示を入れることはありません。
では、基本的でない場面とはどういうときか?
ー文字送りの指示が必要な場面ー
・原稿の指示やクライアントからの要望で、行末の区切りはこのようにしてほしいという指定があるとき
・媒体のルールにより、該当部分におさめるべき行数が指定されているとき
・泣き別れの語があるとき etc.
▼ 以下は、単語の泣き別れを防ぐ場合の文字送りの使用例です。
・「校正・校閲」の語が泣き別れないように指定されているとき。
※文字送りの指示が目立たない場合は、文字を補足する必要があります。
[結果]
※2行目で文字を詰めて調整しています。
▼ 文字送りの指示を使わなくても、直接泣き別れ不可の語に指示を入れてもわかりやすいです。
「泣き別れないように」以外にも、「1行でおさめる」「2行にまたがらないように」などで表現してもわかりやすいです。
[注意点]
鉛筆書きで指示することもできますが、泣き別れ不可と指定されているなら、極力赤字で書くのが望ましいです。
おわりに
補足の指示に関しては他の表現でも大丈夫です。校正指示は、簡潔であることが望ましいですが、訂正指示を相手に伝えることが第一です。自分の環境に合わせて工夫して使いましょう。