「場合」と「際」の使い分け
「場合」と「際(さい)」は似たような場面で使われることが多いです。「場合」でも「際」でもどちらを使用してもよい状況もあります。
そのため両者の使い分けが曖昧になるかもしれません。
「場合」と「際」どちらでも置き換え可能な文もありますが、一方で「場合」と「際」を置き換えられない文もあります。
この記事では「場合」が適切でないとき「際」が適切なとき、この使い分けを見ていきたいと思います。
「場合」と「際」の使い分け基準
「場合」も「際」も複数の意味を持つ言葉ですが、2つの使い分けで迷ったときには、次のAとBの基準に注目してみるとわかりやすくなります。
A 「場合」も「際」も使える場面
✔ 起こる可能性がある事態、もしくはその事態が起きたときに行うこと
B 「場合」でなく「際」が適切な場面
✔ すでに起こってしまったこと
次の文にはいずれも「際」という語が含まれています。この中で1つだけ「場合」という語に置き換えられないものがあります。
1. アスレチック使用中に怪我をした際は、係の者にすぐお知らせください。
2. 家に帰る際、駅前で友人に会いました。
3. お待ちの間、何かお困りの際はこちらのブザーを押してください。
<解説>
1. アスレチック使用中に怪我をした際は、係の者にすぐお知らせください。
この文は、「これからアスレチックを使う。まだ怪我をしていないが、怪我をする可能性がある。怪我をするという事態が起きたときには、係の者にすぐ声をかけてほしい」という意味になるので、Aに当てはまります。「場合」も「際」も使えます。
◯ アスレチック使用中に怪我をした際は、係の者にすぐお知らせください。
◯ アスレチック使用中に怪我をした場合は、係の者にすぐお知らせください。
⇒ 「場合」も「際」も両方使える
2. 家に帰る際、駅前で友人に会いました。
この文は、「もう家に帰っている。家に帰る途中に駅前で友人に会った」という意味になるので、Bに当てはまります。すでに起こってしまった過去のことなので「場合」は使えません。
◯ 家に帰る際、駅前で友人に会いました。
✕ 家に帰る場合、駅前で友人に会いました。
⇒ 「際」の使用が適切
3. お待ちの間、何かお困りの際はこちらのブザーを押してください。
ここでの「際」は、1つ目の文の「際」と同じです。「これから待ってもらう。まだ困ったことは起きていないが、困るシチュエーションがあるかもしれない」
困るという事態が起きたときにはブザーを押してほしいという意味になるので、Aに当てはまります。「場合」と置き換え可能です。
◯ お待ちの間、何かお困りの際はこちらのブザーを押してください。
◯ お待ちの間、何かお困りの場合はこちらのブザーを押してください。
⇒ 「場合」も「際」も両方使える
「場合」と「際」を使っていて何か違和感を覚えたときには、AとBの基準を確認してみましょう。1~3に当てはまらない状況もありますが、多くはこの考え方で判断することができます。
「場合」と「際」の使い分けの練習
前述の例を踏まえて、次の文中の「際」の中で、「場合」に置き換えられないものはどれか考えてみてください。
Q
1. お食事中、席を離れる際は、赤い札をテーブルに置いてください。
2. 先週の金曜日、本社に出向いた際にこの書類を受け取った。
3. 先月のミーティングで部長にお会いした際、新しいプロジェクトの相談をされた。
A
1つ目の文は「これから食事をする。まだ席を離れていないが、席を離れる可能性がある。席を離れるという事態が起きたときには、赤い札をテーブルに置いてほしい」という意味なので、使い分けのAに当てはまり「場合」と置き換え可能です。
◯ お食事中、席を離れる際は、赤い札をテーブルに置いてください。
◯ お食事中、席を離れる場合は、赤い札をテーブルに置いてください。
⇒ 「場合」も「際」も両方使える
2つ目は「先週の金曜日本社に出向いた。その時(=先週の金曜日)、この書類を受け取った」という意味なので、Bに当てはまります。
すでに起こってしまった過去のことになるため「場合」は使えません。
◯ 先週の金曜日、本社に出向いた際にこの書類を受け取った。
✕ 先週の金曜日、本社に出向いた場合にこの書類を受け取った。
⇒ 「際」の使用が適切
3つ目の文は、2つ目と同じです。「先月のミーティングで部長にお会いした。その時(=先月)、新しいプロジェクトの相談をされた」という意味なので、Bに当てはまります。
すでに起こってしまった過去のことなので「場合」は使えません。
◯ 先月のミーティングで部長にお会いした際、新しいプロジェクトの相談をされた。
✕ 先月のミーティングで部長にお会いした場合、新しいプロジェクトの相談をされた。
⇒ 「際」の使用が適切
以上のように「場合」と「際」の使い分けで悩んだときは、まず起こった時間軸を考えてみるとわかりやすくなります。