文章内で使われることの多い誤用表現と適切な使い方[ライティングの基礎・例文解説]

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文章内で使われることの多い誤用表現と適切な使い方[例文解説]

文章を書くときに、誤った表現(誤用表現)を使ってしまうと、せっかく内容が素晴らしいものであっても信頼度が下がり、読み手に響かなくなってしまいます。

文章を通して自分の意図をきちんと伝えるためには、誤用のない正確な文章作成を心掛けたいものです。そこで、この記事では「文章の中で使われることが多い誤用表現」の代表例を例文とともにご紹介します。

正しい日本語で文章を書くために、どういった誤用表現があり、どのように変えればよいのか、知識を再確認してみてください。

1. 列挙・並列の表現におけるよくある誤用

文章添削・校正の現場でもっともよく見かけるのは、文法上の誤りが含まれた文です。特に、「列挙・並列」に関する二つの誤用は非常に多くあります。

いずれも、少し意識を向けるだけで防げる誤用ですので、何に気をつければよいのか知っておきましょう。

<違う品詞のものを列挙・並列してしまう誤り>

NG
喘息は、アレルゲンへの接触や、タバコの煙などを吸入してしまうことで発症する。

OK
喘息は、アレルゲンへの接触や、タバコの煙などの吸入によって発症する。

複数のものを「AやB、そしてC・・・」と列挙して書く場面は多いですが、このときA・B・Cは同じ品詞や文構造のものを並列しなくてはなりません。

NGの例文では、「アレルゲンへの接触」(名詞+名詞)と「タバコの煙などを吸入してしまうこと」(文の名詞化)という違った構造のものが並列されてしまっているように、書いているうちにちぐはぐになってしまっているケースが非常に多いです。

OKの文では、いずれも「名詞+名詞」の形にすることで統一しています。「文の名詞化」で統一し「アレルゲンに接触することや、タバコの煙などを吸入してしまうことで」とすることもできます。(ただし、若干くどい印象を与える表現ではあります。)

2. 反復して使う「り」を単独で用いてしまう

NG
教育機会を均等にするため、ICTを活用したり、不登校児への支援を厚くするべきだ。

OK
教育機会を均等にするため、ICTを活用したり、不登校児への支援を厚くしたりするべきだ。

複数の動作や状態を「Aしたり、Bしたり・・・」と並列して書くときに用いる「り」には、二回以上で用い、並列するものすべてにつけるという決まりがあります。しかし、NGの例文で「厚くするべきだ」に「り」が使われていないように、抜け落ちが発生しているケースが多く見られます。

また、列挙・並列している場面ではないのに、「り」が使われているケースも散見されます。「それだけではなく、他にもある」という場面で、「り」を単独で使用するのも誤りです。この場合は、「~など」で置き換えるのが適切です。

NG
今年の春は花見をしたりしたい。

OK
今年の春は花見などをしたい。

3. 話し言葉と書き言葉の区別にまつわる誤用

言葉は使われるうちに変化するものであり、通常、その変化は話し言葉から先に表れて、徐々に書き言葉にも移行していきます。しかし、話し言葉では定着しつつある表現でも、書き言葉として用いると読み手が違和感をもつことは多いです。

話し言葉で無意識に使っている表現であっても、書き言葉では意識的に避ける必要があるものの代表例を紹介します。

3-1. 接続詞として「なので」「結果」を使う

<「なので」の誤り >

NG
私は文章を書くことが好きだ。なので、将来は小説家になりたい。

OK
私は文章を書くことが好きなので、将来は小説家になりたい。

<「結果」の誤り >

NG
昨年からシステムの改善に全力を尽くした。結果、顧客満足度が大きく向上した。

OK
昨年からシステムの改善に全力を尽くした。その結果、顧客満足度が大きく向上した。

「なので」は本来、「~なので」と文の中で因果関係を表すのに用いる言葉で、接続詞として文頭で「なので」を用いるのは誤りです。

話し言葉ではつい使ってしまうこともあると思いますが、文章中で用いる場合は例文のように文の途中で使うか、接続詞「だから」などに置き換えるようにします。

また「結果」という言葉を接続詞として用いるのも、書き言葉ではまだ違和感が強いです。「その結果」という形で用いるか、「よって」「したがって」などに置き換えましょう。

3-2.「ら抜き言葉」を使う

NG
最新のマーケティング事例を多く見れて、大変参考になりました。

OK
最新のマーケティング事例を多く見られて(見ることができて)、大変参考になりました。

「見れる」「来れる」「食べれる」など、「~できる」という可能表現を表す際に、あるべき「ら」が抜けてしまい「見れる」「来れる」「食べれる」などとしてしまうことを称して「ら抜き言葉」といいます。

話し言葉では年齢が上の世代にも広まりつつありますが、書き言葉としてはまだ一般的とは言えません。「ら」を補うべきかどうか迷ったら、「~することができて」の形で書いておくと無難です。

4.「なります」の濫用

NG
6月1日の午後は、院長不在のため休診になります

OK
6月1日の午後は、院長不在のため休診です。(休診といたします。)

「(~に)なります」は、本来「氷が解けると水になります」のように、状態の変化を表す表現ですが、最近では場面問わず「なります」をつけることで、丁寧なニュアンスを加えようとする表現が見られるようになりました。

しかし、依然としてこの表現に違和感を持つ人も多く、書き言葉では避けるべきと考えられます。シンプルに「です」と言い切るか、文脈によって「ございます」「いたします」などを用いましょう。

5. 慣用句・語句の誤用

最後に、誤用が広がっている慣用句や語句の代表例を紹介します。中には誤用かどうか賛否両論ある言葉もありますが、できるだけ多くの読み手に意図を伝える目的で考えると、賛否両論あるという時点で文章内での使用は避けたほうが無難といえます。

本来の用法、誤用が広まっている用法について、それぞれ理解しておき、使用を判断できるようにしましょう。

5-1. 役不足

本来の意味
・本人の能力に対して、役目が簡単すぎて見合わないこと。

よくある誤用の意味
・役目を果たすために能力が足りないこと。

「役目を果たすために能力が足りないこと」は、「力不足」という言葉で表現すべきですが、混同して「役不足」を用いてしまう誤用パターンがあります。「それは私には役不足ですよ」と謙遜の意味で用いるのは、真逆の意味になってしまうので注意しましょう。

5-2. 的を射る

「的確に要点を捉えていること」を表す表現である「的を射る」ですが、近年では若い世代を中心に「的を得る」という言い方も普及しています。

以前は「的を得る」を明確に「誤用」とする説が主流でしたが、同じように普及してきたことから、派生語として「的を射る」と同じように紹介する辞書も出てきました。

ただし、依然として「的を得る」を誤用と考えている人も多いため、書き言葉では「的を射る」を用いたほうが無難です。

5-3. その他「言葉のQ&A

慣用句・語句に関しては、文化庁の「言葉のQ&A」で詳しく解説されています。
「言葉のQ&A」(まとめ)【文化庁】

日常よく使用される言葉が紹介されています。為になるものばかりなので一読の価値があります。

    「言葉のQ&A」の29記事タイトル

    「敷居が高い」の使い方
    「流れに棹(さお)さす」の意味
    「破天荒」は,「豪快で大胆」?
    「さわりだけ聞かせる」の「さわり」とは?
    「憮然(ぶぜん)として立ち去った」人は腹を立てている?
    「檄(げき)を飛ばす」の意味
    「他山の石」の意味
    「枯れ木も山のにぎわい」の意味
    「気が置けない人」は,油断ならない人?
     議論が「煮詰まる」のは良いことか?
    「役不足」とは,何が足らないのか?
    「情けは人のためならず」の意味
    「号泣する」の意味
    「確信犯」の意味
    「姑息(こそく)」の意味
    「すべからく」の使い方
    「世間ずれ」の意味
    「琴線に触れる」の意味
    「手をこまねく」の意味
    「御の字」の意味
    「雨模様」の空から,雨は降っているか?
    「やおら」の意味
    「ぞっとしない」の意味
    「失笑する」人は笑っているか
    「割愛する」ときの気持ち
    「奇特な方ですね。」は,褒め言葉か
    「煮え湯を飲まされる」のは,どのような相手からか 
    「一姫二太郎」の意味

     にやけるのは男性だけ? ~「にやける」の意味~

      おわりに

      誤用表現には、文法レベルから語彙レベルまで様々なものがあります。話し言葉ではそれほど気にならないものでも、文章内で用いると違和感が強いものも多いです。

      どういった誤用表現があり、本来はどのような表現が正しいのかを知ったうえで、場面に応じて適宜使い分けをしていきましょう。