「活かす」と「生かす」の意味と違い[例題で使い分けポイントの解説]
「いかす」という語には、「生かす」「活かす」という2通りの漢字表記があります。
基本的には「生かす」を使えば間違いにはなりませんが、文脈によっては「活かす」を使うことで、伝えたいニュアンスをよりはっきりさせることができます。
この記事では、「生かす」「活かす」の意味合いの違いについて、具体例をあげながら説明します。
[記事作成にあたっては、以下の書籍・辞書・サイトを参考にしています]
・漢字の使い分けときあかし辞典_研究社
・明鏡国語辞典_大修館書店
・新明解国語辞典_三省堂
・記者ハンドブック 第14版_共同通信社
・新選漢和辞典 Web版_小学館
・公用文作成の考え方(建議)_文化審議会
1.「活かす」と「生かす」の使い分けの原則
▼「生かす」「活かす」の使い分けの原則は以下の通りです。
1. どのような文脈であっても、「生かす」を使えば間違いにはならない
2. 命を持つものを文字通り「いかす」(=命を保たせる)場合は「生かす」を使う
3. 命を持たないものを比喩的に「いかす」場合は、文脈によって「活かす」とすることもできる
「生」という字は「“地面から芽を出したばかりの植物”の絵から生まれた漢字」であり、日本語の「いかす」を書き表す漢字として広く使用することができます(円満字二郎『漢字の使い分けときあかし辞典』研究社)。
一方、「活」という字には「水が勢いよく流れる音」という意味があり、そこから転じて「生き生きした」という躍動感を表すようになりました(『新選漢和辞典 Web版』小学館)。
「生かす」と「活かす」の大きな違いはこの「躍動感」の有無であり、3の比喩的な用法において使い分けを考える際には、この点に注目するとよいでしょう。
2.「活かす」と「生かす」の使い分けの問題
以上を踏まえて、具体的な文例を見ながら使い分けを考えてみます。
問題
Q
1. 魚をいけすに入れていかしたまま輸送する。
2. 長所をいかすことができる仕事を探す。
3. 味つけを控えめにして、素材の味をいかす。
解説
Q 1. 魚をいけすに入れていかしたまま輸送する。
この文中の「魚」は実際に生きているものであり、その命を保たせるという意味なので、ここでは「生かす」とするのが適切です。同様の例としては「親の仇だと知った以上は生かしておけない」などがあります。
A 魚をいけすに入れて生かしたまま輸送する。
Q 2. 長所をいかすことができる仕事を探す。
まず、「長所」は生き物ではないので比喩的な用法だと言えます。このような「能力や特性を引き出す」という文脈では、「活かす」が好まれます。「生かす」でも間違いではありませんが、「活かす」とすることで、能力や特性が「躍動感を持って」引き出されるという印象になります。「学生時代の経験を活かして起業する」「才能を活かして活躍する」なども同様です。
A 長所を活かすことができる仕事を探す。
Q 3. 味つけを控えめにして、素材の味をいかす。
「味つけ」も生き物ではなく、ここでの「いかす」は「能力や特性を引き出す」意味で使われています。2の例文と同じく、「活かす」とすることで意味合いを強調することができます。
A 味つけを控えめにして、素材の味を活かす。
おわりに
なお、「活」の字そのものは常用漢字ですが、「いかす」という読みは常用漢字表には載っていない表外音訓となります。媒体や想定される読者層によっては、配慮が必要になるケースもあることに留意してください。
たとえば、『記者ハンドブック 第14版』(共同通信社)では「生かす」に統一すると定められています。そのほか、「公用文作成の考え方」(文化審議会)では常用漢字表にある漢字や音訓を使うことを原則としており、「いかす」は原則的には「生かす」と表記する、「活かす」を用いる場合は「活(い)かす」とルビを振るとされています。