横書き文章で「算用数字」と「漢数字」のどっちを使う?[使い分け解説]

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横書き文章で「算用数字」と「漢数字」の使い分け解説

日本語の文章、特に横書きの場合、「123……」(算用数字/アラビア数字)と「一、二、三……」(漢数字)の適切な使い分けは、文章の可読性や統一感を大きく左右するポイントです。

一般的に、横書きの文章では算用数字の使用が推奨されています。しかし、漢数字で書かれている数字も少なくありません。

そのため、実際に文章を書く際に「どっちの表記を使うべきか?」で迷うことも多いと思います。

たとえば、
「第1章」と「第一章」、どちらが適切なのか?
「第1次」と「第一次」、どのような違いがあるのか?

この記事では、横書き文章の「算用数字」と「漢数字」の使い分けのポイントを具体例を交えながら紹介しています。

[記事作成にあたっては、以下の書籍・辞書・サイトを参考にしています]

・『日本語表記ルールブック』(日本エディタースクール出版部)
・『記者ハンドブック 第14版: 新聞用字用語集』(一般社団法人共同通信社)
・『公用文作成の考え方(建議)』(文化庁)
・『日本語の正しい表記と用語の辞典 第三版』(講談社)

横書き文書で「算用数字」が基本とされる理由

横書き文書では、原則として算用数字を使用することが推奨されています。これは、文化庁の『公用文作成の要領』や新聞用字用語集の『記者ハンドブック』にも基本的な指針とされています。

算用数字が推奨される主な理由は以下のとおりです。

1. 視認性が高い(一目で数字を識別しやすい)
2. 数字の増減が容易(計算や比較をしやすい)
3. データや統計の表記に適している(数値の正確な認識が必要な場面に適切)

特にビジネス文書、学術論文、報告書などの正式な文書では、明確な表記が求められるため算用数字の使用が一般的です。

ただし、算用数字と漢数字の使い分けには明確なルールが存在するわけではありません。そのため、一般的なルールを基本にしながらも、文章の用途や文体に応じて柔軟な対応が必要になってきます。

算用数字と漢数字の使い分けポイント

横書き文章において、「算用数字」と「漢数字」の使い分けのポイントをいくつか紹介します。

<使い分けポイント①> 

該当部分の数字が他の数字に置き換えられる場合は算用数字を使用し、数字部分が他の数字に置き換えられない場合には漢数字を使うといった方法があります。この考え方は多くの書籍で紹介されている方法です。

(A) 数字が他の数字に置き換えられる   → 「算用数字

2つの選択肢」「3つの選択肢」「4つの選択肢」……
1部ずつ配布」「2部ずつ配布」「3部ずつ配布」……

などは、数字部分を変化させても違和感がありません。この場合は「算用数字」とします。

(B) 数字が他の数字に置き換えられない   → 「漢数字

夜漬け」「夜漬け」「夜漬け」……
「身体の部」「身体の部」「身体の部」……

などでは、数字部分を他の数字に置き換えると不自然です。この場合は「漢数字」が適切とされます。

ただし、(A)の算用数字を漢数字にしても間違いではありません。

<使い分けポイント②> 

2つ目の使いポイントは、文章の用途・文体に応じて使い分ける方法です。

たとえば、軟らかい文章、一般的な文章やプレゼン資料などでは「第1回」と算用数字を用います。一方、硬い文章、公用文や学術的な文章、論文では「第一回」と漢数字を使用します。

文章の文体や読み手を考慮して使い分ける方法です。これも<使い分けポイント①>と同様に、どちらが正しいとも言えません。作業方針によって変わってきます。

<使い分けポイント③> 

3つ目のポイントは、数字も含んで一つの名詞として扱うか、それとも数字に重きを置くかによって、算用数字漢数字を使い分ける方法です。

たとえば、「第一次世界大戦」 と 「第1次世界大戦」の場合で考えてみます。

「第一次世界大戦」を歴史上の特定の出来事として数字も含めて一つの塊と捉え、固有名詞として扱う場合には漢数字にします。一方、「第1次世界大戦」 の数字部分に重きを置き、「第2次」「第3次」とつながるなら算用数字にします。

以上のの使い分けポイントは、一般的な使い分けのケースですが、重要なことは、あらかじめ算用数字か漢数字か、どちらを使用するかを決めておき文章内での統一性を保つことです。

1. 算用数字を使用するケース

横書きの文章では、一般的に算用数字(アラビア数字:123……)を使用するのが基本とされます。その代表的な例をいくつか紹介します。

① 数量や回数を示す場合

数量や回数を示す際には、算用数字を用いるのが一般的です。

<使用例>

「1つの案を提示する」
「2回目の訪問」
「3cmの幅」
「4kgの重量」
「5問中3問正解」
「1パック12個入り」

これらの例は、前述の<使い分けポイント①>にも合致しています。その他にも、算用数字が適している理由として、他の数字との比較や計算がしやすい点があげられます。

② 日付や時間の表記

横書き文章において、日付や時間を表す場合は算用数字が基本です。

<使用例>

2025525日」
「午後530分」
「出発時刻は7時15分」
「会議は14時に終了予定」
「受付時間:9:00~17:00」
「上映開始は18:45です」

ただし、和暦(元号)を使う場合は、文体に応じて「令和七年」のように漢数字を使用することもあります。その際は、『令和七年五月十日』とし『令和七年5月10日』とはしません。

③ 金額や単位を伴う数値

金額や、物理的な単位(メートル、キログラム、リットルなど)を伴う数値では、算用数字の使用が標準です。

<使用例>

「5,000円の図書券」
「10,000ドル」
「25mプール」
「3kg」
「2Lのペットボトル」
「120km/hの速度」

数字と単位の組み合わせでは、漢数字より算用数字のほうが視認性が高く読みやすいです。誤読を防ぐためにも算用数字の使用が適しています。

④ 番号・ページ・章・項目

横書きの本や文書、レポートの構成要素(章・節・ページ番号など)では、算用数字が基本です。

<使用例>

「第1章」
「第2章第5節」
「8ページ参照」
「5番目の項目」
「6.2節に記載」
「表1に示すように」
「図4を参照してください」

⑤ 科学・技術・数学関連

科学や技術、数学に関する表記では、算用数字が適しています。

<使用例>

「3Dプリンター」
「5G通信」
「20インチのディスプレイ」
「100mlの水に15gの塩を加える」
「円周率は、3.14とします」

数値が直接的な意味を持つ場合や、計算や比較が必要な場合には、算用数字を使用することで可読性が向上します。漢字・ひらがな・カタカナが混在する日本語の文章においては、算用数字を使用することで情報が正確かつ明確に伝わりやすくなるので最適です。

⑥ 電話番号・住所

住所や電話番号の表記では、算用数字を使用するのが一般的です。

<使用例>

「東京都新宿区1-2-3」(住所)
03-1234-5678」(電話番号)

住所や電話番号は数字の羅列のため、算用数字を用いることで視認性が高まり、読み間違いを防ぐことができます。

2. 漢数字を使用するケース

横書きの文章においても、漢数字の使用が適切な場面もあります。

慣用的に定着した表現、四字熟語では、漢数字を使用します。ただし、これらは意識しなくても感覚的に漢字を使ったほうがよいとわかります。

① 慣用表現や四字熟語

慣用表現やことわざ、四字熟語では、漢数字を用いるのが原則です。

<使用例>

「一事が万事」
「二の足を踏む」
「三顧の礼」
「四面楚歌」
「五臓六腑」
「七転八倒」
「九死に一生」
「十人十色」
「百人力」

このような表現は、漢数字を使い算用数字は使用しません。慣用句やことわざでは、数字と結びついた表現が数多く存在しますが漢数字が用いられます。

② 固有名詞や歴史的名称

企業名、地名、固有名詞は、そのままの表記で表示します。また歴史的名称では、漢数字が用いられることが一般的です。

<使用例>

「三井住友銀行」
「四天王」
「八王子市」
「三種の神器」
「五大老」

③ 公式文書・法律文書

公的な文書や法律文書では、漢数字を使用することが一般的です。

<使用例>

「第一回会合」
「第三者委員会」
「第七条の規定に基づく」
「第八次改正案」
「第十九条第二項」

法律や契約書、公的な文書では、漢数字を用いることで厳格な印象を与えることができるため、算用数字ではなく漢数字を使うのが一般的です。格式や伝統を重んじる文脈では漢数字が好まれます。

おわりに

日本語の横書き文章では、算用数字を基本としつつも、状況に応じて漢数字を使用することもあります。

算用数字と漢数字の使い分けのポイントはいくつかありますが、文章の用途や目的、文体なども考慮する必要があります。ただし、何よりも重要なことは、使用方法が一貫しているかどうかです。

文章中の数字の扱い方を適切にすることで、読みやすくて統一感のある文章に仕上げることができます。