その使い方間違っているかも?間違いやすい言葉・よくある誤用一覧

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その使い方間違っているかも?間違いやすい言葉・よくある誤用一覧

言葉の意味や使い方は、時代の流れや使われる場面によって少しずつ変わっていきます。たとえば、「これが本来の意味だ」「この言い方が正しい」と指摘するのは大切なことですが、最近では「話のさわり」などのように、本来の意味とは異なった使い方が広く浸透している場合もあります。

(※さわり…「さわり」を「冒頭部分・導入部」という意味で使用される例も見られますが、本来、「話のさわり」とは「その話の核心・聞きどころ」という意味です。)

日常の会話や文章、インターネット上の情報では、言葉の使い分けがあいまいなまま使われていることも少なくありません。そのため、正確な意味や使い方を知るには、最新の辞書や実際の用例を確認することが重要です。

とはいえ、すべての言葉を覚えるのは非現実的です。効果的な方法としては、「この言葉は間違いやすいかも」とざっくりと覚えておき、気になったときに辞書などで調べる習慣をつけるのが一番です。

[記事作成にあたっては、以下の書籍・辞書・サイトを参考にしています]

・『デジタル大辞泉』(小学館)
・『精選版 日本国語大辞典』(小学館)
・『新明解国語辞典 第八版』(三省堂)
・『広辞苑 第七版』(岩波書店)
・『コトバンク』(https://kotobank.jp/)

誤用されやすい語句

1. うろ覚え

誤用例:「上司の発言をうる覚えしている」
正しい使い方:「上司の発言をうろ覚えしている」

補足:「うろ(朧)」は「ぼんやり」や「あいまい」を意味します。

2. うがった見方

誤用例:「彼はうがった見方ばかりする(=疑い深いという意味では誤用)」
本来の意味:「物事の本質や真相を鋭く見抜く見方」

補足:物事の核心を鋭く見抜く前向きな意味ですが、時に皮肉や考えすぎと受け取られることもあります。

3. 煮詰まる

誤用例:「議論が煮詰まった(=行き詰まったと誤解)」
正しい意味:「議論が最終段階に入り、結論が近づいている状態」

補足:「行き詰まる」とは違い、議論や考えがまとまり、結論に近づいている段階を指します。

4. 割愛する

誤用例:「興味がないので割愛します」
本来の意味:「惜しいけれど省く」

補足:「興味がないから省く」のではなく、「本当は入れたいが、やむを得ず省く」という意味です。

5. 異を唱える

 誤用例:「意見に異を唱える(=単に反対するという意味では誤用)」
 本来の意味:「ある意見に対して、あえて異なる意見を理性的に表明する」

 補足:単に反対するのではなく、別の意見を理性的に述べるという前向きなニュアンスが含まれます。

6. 役者が違う

誤用例:「彼は努力して成功した。やっぱり役者が違う」
正しい意味:「圧倒的に実力や格が上であること」

補足:ただの褒め言葉ではなく、「実力に大きな差がある」と強調するときに使います。

7. 敷居が高い

誤用例:「あのレストランは高級なので敷居が高い」
本来の意味:「気まずさ・後ろめたさから訪問しづらい」

補足:「高級だから」ではなく、「後ろめたさや気まずさから行きづらい」ときに使います。たとえば「かつて不義理をして以来、その家に気が引ける」といった状況です。近年では『高級だから行きづらい』という意味で使われることも多いですが、元来は心理的な後ろめたさによる遠慮の意味です。

8. 目処が立つ

誤用例:「目処が付く」
正しい使い方:「目処が立つ」

補足:「目処が立つ」が本来の言い方です。「付く」も話し言葉では使われますが、正式文書では避けたほうがよいです。

9. 檄を飛ばす

誤用例:「部下のミスに檄を飛ばす(=叱責する)」
正しい意味:「励ますために力強い言葉を述べる」

補足:「叱る」意味ではなく、「奮起を促すために激励する」ことを指します。

10. 気が置けない

誤用例:「彼は気が置けない人だ」(=気を抜けない人と誤解)
正しい意味:「気を遣わず、遠慮なく付き合える相手」

補足:「気が置けない」は、「気を遣う必要がない」「安心して付き合える」という意味で、親しい間柄に使われます。逆に「気を抜けない」「油断できない」といった意味で使ってしまうと、まったく反対の意味になってしまいます。似た語感の「気を張る」「気を許せない」などと混同しやすいため注意が必要です。

11. せざるを得ない

誤用例:「せざる負えない」「せざる終えない」
正しい使い方:「せざるを得ない」

補足:「~せざるを得ない」で「どうしても~しなければならない」の意味になります。「負えない」「終えない」はどちらも誤変換による誤記です。

12. 憮然

誤用例:「彼は憮然として怒っていた」
本来の意味:「失望してぼんやりしている様子」

補足:「不満を抱えている状態」ではなく、「期待外れの結果などに無念さや落胆を覚えて、言葉も出ないほど呆然としている様子」を表します。

13. 破天荒

誤用例:「彼は破天荒な生き方をしている(=奇抜という意味では誤用)」
本来の意味:「誰も成し遂げたことがないことを初めてする」

補足:「奇抜」ではなく、「誰もやったことがないことを初めて成し遂げた」という称賛の意味です。

14. 役不足

誤用例:「私にはこの役は役不足です(=荷が重い)」
本来の意味:「自分の力量に対して役が軽すぎる」

補足:「力量に対して役が軽すぎる」という意味で、「自分には荷が重い」とは逆の意味です。

15. 五月雨

誤用例:「五月雨式の指示(=多くて混乱する指示)」
正しい意味:「少しずつ断続的に続く様子」

補足:報告や連絡が途切れ途切れに続く場面で使われます。

16. 切磋琢磨

誤用例:「同僚と切磋琢磨しながら競い合う(=競争の意味で使用)」
正しい意味:「互いに励まし合い、向上する」

補足:競い合うことが目的ではなく、互いに高め合って成長していくことが本来の意味です。

17. 他力本願

誤用例:「他力本願じゃダメだよ(=人任せ)」
本来の意味:仏教用語で「阿弥陀仏の力にすがること」

補足:「他力本願」は阿弥陀仏の力にすがるという、浄土宗の重要な教義です。信仰に基づく他力を肯定的にとらえる言葉です。日常語での「人任せ」とは意味が異なります。

18. 杓子定規

誤用例:「杓子定規に取り決めて、上手く物事を進めている」
正しい使い方:「杓子定規に物事を決めつけるのはよくない」

補足:融通がきかず、何でも決まり通りにしか対応しない様子を表します。

19. 心機一転

誤用例:「心機一転、彼女は同じ部署で以前と同じ仕事を続けた」
正しい使い方:「心機一転、新しいプロジェクトに挑戦することにした」

補足:気持ちを新たにして、明確に環境や行動を変えるときに使う表現です。

② 混同しやすい類似語

1. 若干/弱冠

誤用例:「弱冠の変更は可能です」
正しい使い分け
 ・若干の変更 → 少量・少数
 ・弱冠20歳 → 数え年で20歳・「若くして」という意味

補足:「弱冠」は年齢限定で使います。数量や程度の少なさを表すときは「若干」を使います。

2. 一蹴する/一掃する

誤用例:「問題を一蹴した(=「問題を解決した」の意味で誤用)」
正しい使い分け
   ・一蹴する:相手の意見などを取り合わずに退けること
   ・一掃する:すべて取り除くこと

補足:「一蹴」は意見などを冷たく退けること、「一掃」は問題や不要なものをすべて取り除くことを意味します。

3. 方策を練る/対策を講じる

誤用例:「対策を練る」
正しい組み合わせ:「方策を練る」「対策を講じる」

補足:「練る」はまだ計画中の段階、「講じる」はすでに実行する段階で使います。

4. なおざり/おざなり

誤用例:「彼の対応はなおざりだった(=「適当な対応」の意味で誤用)」
正しい使い分け
 ・なおざり:いい加減に放っておくこと
 ・おざなり:その場しのぎで適当に済ませること

補足:「なおざり」は放置する意味、「おざなり」はその場しのぎで済ませる意味です。どちらも「いい加減」ですが使い分けに注意しましょう。

5. ぞんざい/ずさん

誤用例:「ずさんな口の利き方」
正しい使い分け
    ・ぞんざい:態度や言葉遣いが粗雑(例:ぞんざいな口の利き方)
    ・ずさん:管理や計画がいいかげん(例:ずさんな管理)

補足:「ぞんざい」は人への態度や言葉遣いが雑な様子、「ずさん」は管理や計画が粗い様子を表します。

おわりに

言葉の意味や使い方は、時代の流れや使われる場面によって、少しずつ変化していくものです。ここで紹介した誤用の例も、将来的には許容され、一般に受け入れられるようになる可能性があります。

すべての表現を厳密に覚えるのは難しいかもしれませんが、誤用されやすい言葉を意識しておくだけでも、いずれ役に立つ場面がきっとあるはずです。