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文章校正・添削でよくある誤字のパターンと具体例
文章の校正や添削の現場では、共通して見られる「よくある誤字」がいくつもあります。この記事では、そんな「よくある誤字」の代表例を紹介します。
自分で書いた文章を見直す際や、文章の校正や添削を行うときにでもぜひお役立てください。
▼ 次の4つのパターンにわけてよくある誤字を紹介していきます。
1. 同音・同訓異義語に関する誤字
2. 送りがなに関する誤字
3. かな遣いに関する誤字
4. 誤用が広がっている言葉
1. 同音・同訓異義語に関する誤字
同音・同訓を持つ漢字は読み方は同じですが、意味や使い方が異なります。
読み方が同じせいで、誤って覚えてしまうこともありますが、使い分けの知識はあるのに、キーボードでの変換時にうっかり誤字に変換してしまうこともよくあります。
同音・同訓異義語の誤字はたくさんありますが、ここではビジネスシーンでよく起こる誤字を中心に紹介したいと思います。資料作成やメールを送る際には注意してください。
① 決裁・決済(けっさい)
ビジネスシーンで使うことの多い漢字ですが、変換ミスで誤字になりやすいので気をつけましょう。
・決裁
責任者が、部下の提出した案の採否を決めること。
・決済
代金などの受け渡しによって、売買取引を終了させること。支払うこと。
② 採決・裁決(さいけつ)
「採決」と「裁決」も同音です。特に「採決」は、「会議で採決を行う」などでよく使用されます。これも変換ミスでよく起こる間違いです。
・採決
賛成か反対かを決めること。
・裁決
上位の人が判断して処置や処分を決めること。
③ 精算・清算(せいさん)
こちらもビジネスシーンでよく見られる漢字ですが、意味が少し似ていることもあり、誤用が多いので注意しましょう。
・精算
計算や支払いを済ませること。金額などを細かに計算したり、金額の過不足などを処理したりすること。
・清算
財産や権利を整理して決着をつけること。貸し借りの始末をつけること。過去の出来事などに白黒つけることにも使う。
④ 過小・過少(かしょう)
「過小評価」や「過少申告」のような言葉も頻繁に耳にします。漢字から連想すれば使い分けがすぐにわかりますが、誤変換が起こりやすいです。
過小評価 … 実際よりも低く評価すること
過少申告 … 実際よりも少なく申告すること
・過小
小さすぎること
・過少
少なすぎること
⑤ 配付・配布(はいふ)
「会議で資料をはいふする」という場合にも、「配付」と「配布」の2つの漢字が考えられ、よく間違いが起こります。
・配付
個々に配る/特定の人や組織に物を渡すこと。
・配布
広く配る/広く一般に物を渡すこと。
「会議で資料をはいふする」は、会議で資料を個々(一人ひとり)に渡すと読み取れるので「配布」が適切です。一方で、「配布」は広く一般に配る意味があり、「新刊の本を書店に配布する」というように使用します。
⑥ 定型・定形(ていけい)
「定型」と「定形」は非常に誤りが多いです。間違っていても気付かないこともあります。ただ、「型」と「形」の違いを理解しておけば使い分けがスムーズにいきます。
「型」は、何かを作るときに必要な基準や模範のことをいいます。「型紙」「鋳型」のように使います。一方、「形」は、物の姿や有様のことを指します。たとえば「洋服の形」「色と形」などです。
「型」は目に見えないものを指すことが多く、「形」は目に見えるものを指すことが多いです。このようなイメージで覚えておくとわかりやすいです。
・定型
定型は、ある決まった型(かた)のこと。
「メールの定型文」「定型的な業務」などのように使用します。
・定形
定形は、ある一定の形(かたち)のこと。
「定形郵便」であれば、一定の大きさや重さの郵便物のことをいいます。
⑦ 賞・授賞(じゅしょう)
「受賞」と「授賞」は、手へん(扌)があるかないの違いで字形が似ているのでよく間違える漢字です。ですが、使い分けは簡単です。「受賞」は賞を受ける、「授賞」は賞を授けることです。
「社長賞を受賞する」は、社長賞を受け取ることです。一方、「社長賞授賞式」は、社長賞を与える式典のことを言います。
・受賞
賞を受けること
・授賞
賞を授けること
⑧ 保証・保障・補償(ほしょう)
同音の言葉が3パターンあり、いずれも意味が少し似ているので、誤用が多い言葉です。「保証書」「安全保障」など、迷ったときは熟語を思い浮かべると使い分けしやすいです。
・保証
問題ない、確かであると認め、責任をもつこと。
・保障
ある状態が損なわれないように、保護し守ること。
・補償
金銭や健康などの損失に対し、それを補うこと。
⑨ 関心・感心(かんしん)
意味は大きく異なりますが、いずれもよく使う言葉であるためキーボード変換で誤字になりやすい言葉です。
・関心
ある物事に興味をもって、注意を払うこと。
・感心
深く心に感じること、心を動かされること。
2. 送りがなに関する誤字
漢字の送りがなは、キーボード変換の場合は自動的に正しく変換されることが多いですが、手書きの場合は間違って覚えているとそのまま書いてしまい、誤字になってしまいます。
送りがなにはある程度ルールがありますので、原則と例外をおさえておきましょう。
関わる・明るい・危ない など
<原則1>
基本的に、動詞や形容詞などの活用語(使い方によって語尾の変化する語)は、変化が始まる部分から送りがなにするという原則があります。
【例】
・走る
走らない(はしーらない)
走ります(はしーります)
:
:
<原則2>
また、自動詞と他動詞など複数の読み方がある語は、どの読み方か判断できるよう送りがなをつける原則もあります。
【例】
・止まる、止める
「止る」では、「とまる」とも「とめる」とも読めてしまい、どちらの読みかわからないので「まる」「める」を送ります。
たとえば、「とまる」と読ませたい場合は「止る」でなく、「止まる」とします。一方、「とめる」と読ませたい場合なら「止める」とします。
・生きる、生える
「生る」では、「いきる」か「はえる」か読み方がわからないので、「きる」「える」を送ります。
たとえば、「いきる」と読ませたい場合は「生きる」、「はえる」と読ませたい場合は「生える」とします。
・その他
「当る」 → 当たる、当てる
「集る」 → 集まる、集める
「起る」 → 起こる、起きる
「終る」 → 終わる、終える
「変る」 → 変わる、変える
ただし、これらの原則には当てはまらない例外があります。
よく見かける誤りに次のようなものがあります。
✕ 関る → ◯ 関わる
✕ 明かるい → ◯ 明るい
✕ 危い → ◯ 危ない
これらはすべて上記のルールの例外です。
他にも例外となっている言葉の一例は次の通りです。
味わう 哀れむ 慈しむ 教わる 脅かす(おどかす)
異なる 逆らう 捕まる 群がる 和らぐ 揺する
危うい 大きい 少ない 小さい 冷たい 平たい
珍しい・著しい など
<原則1>で「形容詞は、変化が始まる部分から送りがなにする」と紹介しましたが、語幹(変化しない部分)が「し」で終わる形容詞は、変化しないにもかかわらず「し」から送りがなにするという例外があります。
以下は、この例外のルールが適用される、よく間違いが起こるものです。
<いちじるしい>
✕ 著い ✕ 著るしい → ◯ 著しい
<めずらしい>
✕ 珍い ✕ 珍らしい → ◯ 珍しい
3. かな遣いに関する誤字
誤字は漢字で起こるものと思われがちですが、かな遣いに関する誤字も多くあります。ただ、誤字が起こりやすいパターンは限られているので、そのパターンだけ頭にしっかり入れておけば大丈夫です。
じ・ぢ/ず・づの使い分け
現代日本語では、「ぢ」「づ」を使うのは、それぞれ「ち」「つ」から始まる単語の前に別の語が付き、語頭の音が濁った場合か、「ち」「つ」の同音が繰り返される場合の2つに限られます。
【例】
・はな(鼻)+ち(血)=はなぢ(鼻血)
・たけ(竹)+つつ(筒)=たけづつ(竹筒)
・ちぢむ
・つづく
逆に言えば、これに当てはまらないものはすべて「じ」「ず」を使えばいいわけですが、必要のない場面で「ぢ」「づ」を使ってしまう誤字が多く見られます。
✕ つまづき → ◯ つまずき
✕ 少しづつ → ◯ 少しずつ
間違い・間違え
かな遣いの問題とはやや異なりますが、名詞「間違い」のことを、「間違え」と書くパターンの誤字もかなり目にします。
「間違いがあった」「間違いを直す」など、名詞として使う場合は「間違い」が適切です。
「間違え」はあくまで「間違う」という動詞の活用形で「間違えてしまった」「間違えないようにする」などと使いますが、名詞として使うのは相応しくありません。
4. 誤用が広がっている言葉
最後に、誤用が広がっている言葉の代表例を紹介します。
言葉は変化するものなので、多くの人が使うようになれば正しい用法として認められることもありますが、現時点では「誤り」とされるものです。
理解した上で文学表現として使うのであれば別ですが、知らずにビジネス文書などで使用すると、読み手に違和感を与えることになるので注意しましょう。
× 自論 → 〇 持論
「自分のもっている考え」という意味では、本来「持論」という漢字を用いますが、「自分の考え」というイメージから「自論」という誤表記が広まってしまっています。
× 耳触り → 〇 耳障り
本来「耳障り」とは、「耳にするのが不快だ」という意味を表す言葉です。
しかし、最近では「耳触り」という誤った表記が広まってきました。その誤字のイメージから「肌触り」を連想したのか、「耳ざわりのいい言葉」など、「耳ざわり」を良い意味で用いる表現も見られるようになりました。良い意味で用いるのは誤用なので注意しましょう。
× 中ば → 〇 半ば
「道半ば」などの表現で使う言葉です。「半分」の「半」を用いるのが正しいですが、「なか」という音と、「真ん中」のイメージから「中ば」という誤字が広まってしまっています。
おわりに
誤字には様々なパターンがあります。そもそも間違って覚えていることが原因であれば、キーボードでの文字入力の過程で「うっかり」誤字に変換してしまうこともあります。また、単純に不注意で間違えてしまったということも考えられます。
誤字は無数にあるので、間違いをすべて覚えるというよりも、「ここが間違っているかも……」「ここなんかおかしいかも……?」という感覚を培っていくことが大切です。
まずはこの記事で紹介した例から覚えていけば、文章の見方も変わってくるはずです。そうすれば次第に、他の誤字に対しても目が敏感になってきます。
文章の校正や添削、作成を行う際は、この記事で紹介した4つのパターンを軸にして誤字をなくすよう取り組んでみてください。