「思う」と「想う」の意味と違い[適切な使い分け]
「おもう」という語を漢字で表記する場合、よく使われるのは「思う」と「想う」です。基本的には「思う」と表記すれば間違いにはなりませんが、表現したい意味合いによっては「想う」としたほうがニュアンスが伝わりやすくなります。
[記事作成にあたっては、以下の書籍・辞書・サイトを参考にしています]
・『明鏡国語辞典』(大修館書店)
・『漢字の使い分けときあかし辞典』
「思う」と「想う」の意味と違い
「思う」と「想う」
「想像」や「空想」といった熟語からも推測されるように、「想う」は「心にイメージを描く意」(大修館書店『明鏡国語辞典』)で使われます。『漢字の使い分けときあかし辞典』(円満字二郎、研究社)では、「想う」の字は「より深い情感を込めて『おもう』場合に用いると、効果が高い」と説明されています。
たとえば「あの人をおもう」という表現の場合、「あの人を思う」としてももちろん間違いではありませんが、「あの人を想う」とすると、「その人の姿や性格・言動などを具体的にイメージしていることになり、相手を『おもう』気持ちが豊かに表現され」ます(『漢字の使い分けときあかし辞典』)。
「思う」と「想う」の違いは、そこにどの程度の感情がこもっているかだと考えるのが良いでしょう。
ただし、「想う」は主に好意的な場面で使用されます。ネガティブな考えや妬ましい気持ちにも感情がこもっていると言えますが、この場合には「想う」の使用は適切ではありません。
「思う」と「想う」の例文
以上を踏まえて、次の文中の「おもう」のうち、「想う」とも表記できるものはどれか考えてみてください。
例文
Q
1. おもっていたほど簡単ではなかった。
2. 遠く離れた恋人をおもう。
3. 部屋に置くには大きすぎるとおもったので、買うのをやめた。
4. 異国の地で故郷をおもう。
5. おもった通り、あの人が犯人だった。
解答&解説
■ 解答
<問題1>
Q おもっていたほど簡単ではなかった。
A 思っていたほど簡単ではなかった。
<問題2>
Q 遠く離れた恋人をおもう。
A 遠く離れた恋人を想う。
<問題3>
Q 部屋に置くには大きすぎるとおもったので、買うのをやめた。
A 部屋に置くには大きすぎると思ったので、買うのをやめた。
<問題4>
Q 異国の地で故郷をおもう。
A 異国の地で故郷を想う。
<問題5>
Q おもった通り、あの人が犯人だった。
A 思った通り、あの人が犯人だった。
■ 解説
上の例文のうち、「想う」とも表記できるのは2つ目と4つ目です。それぞれ、「遠く離れた恋人」「故郷」をイメージし、情感を込めて「おもって」いる文脈であり、「想う」と表記することでその気持ちがより明確になります。
それに対して、1つ目、3つ目、5つ目の文中の「おもう」はそれぞれ「考えていたほど簡単ではなかった」「大きすぎると判断した」「予想していた通り」というように言い換えることができます。
特別な情感を込めているというよりは、理性的な考えや判断を表しているので、「想う」という表記はそぐわないと言えます。
おわりに
以上、「思う」と「想う」の違いについて解説しました。
「思う」と「想う」の使い分けは、どのような「おもい」を込めたい場面なのかを踏まえると判断しやすくなるでしょう。