
目 次
- 同じ「校正」でもこんなに違う⁉ 所変われば校正も変わる
- 1. 地図 -「正確さ」でなく「たどり着けるか」が正義-
- 2. 料理のレシピ -材料・手順・完成図との整合性-
- 3. 新聞の折り込み広告・チラシ
- 4. 不動産・住宅関係 -専門用語・間取り図・プライバシーへの配慮-
- 5. Webサイト・アプリ -文章・表示崩れ・導線-
- 6. 動画・テロップ -音声との一致・瞬時の読みやすさ-
- 7. 医薬品・化粧品・健康食品 -法令・安全に注意-
- 8. 学習教材・教科書 -正しさ・学習段階への配慮-
- 9. ファッション雑誌 -画像と情報の整合性-
- 10. 企業カタログ・パンフレット(数値・仕様・会社情報の正確さ)
- 11. 契約書・規約・マニュアル -論理的整合性とリスク管理-
- 12. ゲームのシナリオ・テキスト
- 13. 飲食店のメニュー
- おわりに
同じ「校正」でもこんなに違う⁉ 所変われば校正も変わる
「校正」と聞くと、静かな部屋で白い紙に向かい、赤ペンでひたすら文字をチェックする――そんなイメージを持っている方も多いかもしれません。これは主に書籍の校正による印象が強いためだと思います。
しかし、実際の校正の仕事は書籍だけではなく、Web、動画、映画の字幕、ゲームの説明書、家電量販店のチラシ、ポスター、テレビのテロップ、お菓子のパッケージ、表彰状、名刺など、文字が書かれてある場所には、必ずと言っていいほど「その情報が正しいかを確認する校正作業」が発生します。
そしてそれらの作業は、専任の校正者に限らず、編集者、ディレクター、ライター、デザイナー、営業、事務など、さまざまな職種の人が行っています。
この記事では、さまざまなシーンで重要視される校正と、各現場で求められるチェックポイントを紹介します。
1. 地図 -「正確さ」でなく「たどり着けるか」が正義-
企業や店舗の案内地図は、どの媒体にもよく掲載されています。現在はGoogleマップなどをベースに作成されることも多いです。
ただ、Googleマップなどでもすべての道を完全に反映しているとは限りません。そのため、省略された道や入り組んだ場所にある目的地は、Webの地図だけでは位置関係がわかりにくいことがあります。その場合は紙の詳細地図や航空写真などで情報を補完しながら確認していきます。
また、案内地図は「実際に存在するすべての道を忠実に載せる」ことが正解とは限りません。最寄り駅などのわかりやすい目標物から目的地までのルートを示すために、利用者が迷わず移動できるようにあえて不要な道を省略するという判断も必要です。その「取捨選択」が利便性に大きく影響してくるので重要なポイントです。
地図によっては、「正しさ」を追求するのではなく、「利用者が迷わず到達できる」という視点が大切になってきます。
<チェックの一例>
出入口と方角:駅の出口番号(A3出口など)や、北口/南口の方角に誤りはないか。方位マークの記載は必須となります。
目印の名称:目印となるコンビニやビル名は正式名称か(移転・閉店していないか)。標識や信号機の位置やバス停の名称は正しいか。
縮尺と距離感:「徒歩約10分」とあるのに地図上の縮尺が明らかに近すぎる(または遠すぎる)などの矛盾がないか。※不動産広告の場合は、「徒歩1分=80m」という基準で計算されているか。
2. 料理のレシピ -材料・手順・完成図との整合性-
料理のレシピは、料理本に限らず新聞・雑誌のちょっとしたコーナー、Webサイト、スマホのアプリ、食品メーカーの販促物などいろいろな場所に載っています。「材料」と「調理方法」の記載、そして料理の完成写真やイラストがセットになるのが基本です。
レシピの校正で最も重要なのは、「記載された材料と手順で、本当にその料理が完成するか」です。当然ながら、校正のたびに実際に調理して検証するのは現実的ではないため、頭の中で調理場面をシミュレーションしながら正しいかを確認していきます。
<チェックの一例>
材料と分量の正しさ:材料名に誤りはないか、分量は適正か(『塩 少々』と『小さじ1』などの単位間違い)。
調理工程が抜けていないか:下処理(皮をむく、筋を取る)、切り方、火加減、加熱時間などの指示が抜けていないか。
材料を過不足なく使い切っているか:リストにある材料を手順ですべて使い切っているか。逆に、手順で突然リストにない材料が登場していないか。たとえば、「玉ねぎをみじん切りにする」という調理工程がないのに、次の工程で「みじん切りにした玉ねぎを炒める」という指示が唐突に出てくるなどがあります。
完成写真・イラストとの整合性:完成写真や工程イラストと、文章の内容が矛盾していないか。たとえば、完成イラストには茄子が描かれているのに、材料に「茄子」がないという間違いが想定できます。
3. 新聞の折り込み広告・チラシ
新聞の校正は有名ですが、新聞に挟み込まれている折り込み広告も身近な校正物の代表です。街中で配布される家電量販店やスーパーなどのチラシも同様です。
チラシは一般的に短納期のため、短期集中型の校正になります。スピード勝負でありながら「金額を絶対に間違えられない」ため、校正者にはかなりのプレッシャーがかかります。
特にチラシでは目玉商品や特価商品が大きく扱われ、そこには目立つ形で価格が表示されています。この「金額」は売上に直結するため、絶対にミスが許されません。「0」が一つ多い、桁が違うといったミスは致命的です。さらに厄介なのが、チラシは目を引くために黄色や赤色など視覚的に刺激が強い色が多用され、長時間の校正作業では目が疲れやすいというネックがあります。情報量も多く、文字の大きさもバラバラなため、数ある校正の中でもかなりハードな部類の仕事です。
ただ、チラシ校正の経験を積むと、スピード感や対応力が半端なく鍛えられるといういい面もあります。
<チェックの一例>
価格表記:税込/税抜の区別、端数処理の計算、二重価格(定価からの割引率)の計算が合っているか。
条件表記(注釈):「お一人様○点まで」「○○期間限定」「先着順」などの条件に抜けや矛盾はないか。
商品情報の不一致:商品画像と、型番・容量(500ml、1kgなど)・商品名が一致しているか。
情報の重複・整合性:同一商品の価格が掲載面によって違っていないか。
4. 不動産・住宅関係 -専門用語・間取り図・プライバシーへの配慮-
住宅情報誌や不動産広告の校正では、業界独特の用語や、間取り図などの確認があるため非常に神経を使います。前述した「地図」の校正も加わってくることが多いです。
試しに、駅やコンビニなどで配布されている住宅情報系フリーペーパーを見ると、多様な視点の校正が必要であることがわかります。
<チェックの一例>
間取り図の校正:戸建てやマンションの間取り図は、オペレータが一から描き起こすことが多いため、ミスも起こりやすくなります。
【間違い例】
・本来ドアであるべき場所が壁になってしまっていないか、開き勝手(内開き・外開き)は合っているか。
・階段の位置や有無、浴室とトイレの位置が逆になっていないか。
・方位の向きが間違っていないか。
・畳数や収納表記(WIC/SICなど)が本文・物件概要と一致しているか。
購入者へのインタビュー記事(個人情報への配慮)
住み心地などを紹介するインタビューでは、個人情報の取り扱いに細心の注意を払わなければいけません。たとえば、「渋谷区在住のNさん」のように仮名を使ったり、画像内の表札や車のナンバープレート、室内の表彰状の氏名などを加工で消したりします。文章だけでなく画像内に個人を特定できる情報が残っていないかも入念な確認が必要です。
5. Webサイト・アプリ -文章・表示崩れ・導線-
Webの校正は、紙媒体に比べると「公開後にすぐ直せる」という理由で校正が軽視されることもあります。しかし、間違いが頻繁にあるとブランドイメージの低下や機会損失につながるため、事前のチェックは非常に重要になっていきます。
またWebでは、文章校正に加えて表示崩れやリンク確認など、制作体制によっては、校正者が動作確認も兼ねることがあります。
<チェックの一例>
リンク・導線の確認:リンク切れがないか、ボタンの文言と遷移先が一致しているか。
表示崩れ(スマートフォンなど):PCでは問題なく表示されても、スマホで見ると変な位置で改行されていたり、文字が画像に被ったりしていないか。
UIテキストの統一:「ログイン/ログインする」、「ユーザー/ユーザ」など、サイト全体で用語が統一されているか。
情報の鮮度:キャンペーン期間、更新日などがページ間で矛盾していないか(トップページでは終了しているのに、詳細ページでは開催中になっているなど)。
また、SNSでは、リンク先のLP(ランディングページ)との情報の整合性、ハッシュタグの妥当性、文字数制限への対応、炎上につながるような不適切な表現がないかなど、デジタルならではの視点が必要です。デジタル環境では、修正が容易な反面、拡散が速いため事前のチェックが重要です。
6. 動画・テロップ -音声との一致・瞬時の読みやすさ-
動画やテレビ番組、YouTubeのテロップの校正も需要が高まっています。映像は一度公開・放送されると修正が困難なため、現場の緊張感は非常に高いです。
<チェックの一例>
テロップと音声の一致:テロップの文字がナレーションや発言内容と合っているか。特に人名・企業名・地名などの固有名詞は、公式サイトなどの一次情報で表記を確認します。
タイミングと読みやすさ:表示時間が短すぎないか、背景と同化して読みにくくないか。「視聴者が正しく情報を受け取れるか」という視点で確認します。
7. 医薬品・化粧品・健康食品 -法令・安全に注意-
ドラッグストアに並ぶ商品のパッケージ、添付文書(説明書)、POPなどは、最も神経を使う領域の一つです。専門性が高く、薬機法や景品表示法などの法律が深く関わります。
<チェックの一例>
効能・効果の表現:「絶対に治る」「即効性がある」「世界一」など、根拠のない誇大表現や認められていない表現がないか。「No.1」などの最上級表現も、客観的な根拠(調査条件・期間・機関)と注記がないと問題になりえます。
成分・数値の正確性:成分名、含有量、単位(mg, g, ml)に誤りがないか。アレルギー表示に漏れがないか。
単なる健康食品なのに「飲むだけで痩せる」と書けば違反になる可能性があります。また、成分量の単位を間違えるだけでも健康被害につながりかねません。一文字の重みが非常に大きい分野です。この分野では専門の校正者(医薬校正者など)が存在します。
8. 学習教材・教科書 -正しさ・学習段階への配慮-
参考書、塾のテキスト、ドリルなどの教育関連の媒体も、校正が重要な分野です。「問題に対して、解答が合っているか」だけでなく、「その学年の子が理解できるか」「学習段階に合っているか」という視点も欠かせません。
<チェックの一例>
解答の正確さ: 問題に対する答えが本当に合っているか(解説も含めて確認する)。
学年配当漢字:その学年でまだ習っていない漢字を使っていないか。学習指導要領に基づき、未習漢字にはルビ(ふりがな)を振る、あるいはひらがなにするなどの調整が必要です。
不適切な表現:教育上好ましくない表現、偏見につながる表現が含まれていないか。
大人が読む分には問題なくても、小学3年生向け教材で難しい漢字をルビなしで使うのは不適切な場合があります。自分では当たり前の知識でも、子どもにとって難しいことがあります。子どもの学びに直結する分、責任も大きな仕事です。なお、教科書は検定制度があり、一般の校正とは異なる特殊なプロセスがあります。
9. ファッション雑誌 -画像と情報の整合性-
ファッション雑誌では、文章よりも画像が目立つように扱われることが多いです。モデルさんの邪魔にならないように、文字が小さく記載されることもよくあります。モデルさんの画像の近くにある衣装クレジット(ブランド名や価格情報)も間違えやすく校正が欠かせません。
▼コーディネート画像の付近にあるクレジットの一例
<着用アイテム>
・トップス ブラック:ブランド〇〇 ¥12,000
・パンツ ネイビー:ブランド△△ ¥8,000
・シューズ ホワイト:ブランド□□ ¥15,000
こういった情報をモデルさんが着ている服と照合し、ブランド名や金額に誤りがないかを確認していきます。ただ新作アイテムはネット検索等で裏付けが取れないことが多いため、クライアント支給原稿(一次情報)との照合がより重要になります。
一方で、色や形など画像で視認できる情報は必ず照合します。たとえば、モデルさんがブラウンのトップスを着ているのに「トップス:ブラック」となっている、などです。この不整合は単純なコピペミスだけでなく、撮影後に写真が差し替わったり画像加工で色味が変わったりした結果、テキスト側の修正が漏れていたことで起こります。
10. 企業カタログ・パンフレット(数値・仕様・会社情報の正確さ)
企業パンフレットや商品カタログ、会社案内などは、校正者がかかわる典型的な媒体です。
<チェックの一例>
スペックや数値の確認:型番、サイズ、重量、容量などが仕様書通りか。BtoBでは、特にここを間違えると大きなクレームや損害に発展しかねません。
企業情報の正確さ:売上高、社員数、資本金、代表者名、役職などが最新情報か。
この領域の校正は、クライアントからの支給原稿・仕様書・図面・価格表・改訂履歴などの一次資料と突き合わせるのが基本になります。ページ数の多いカタログになると、たくさんの関与者がいるためコミュニケーションスキルも大切になってきます。
11. 契約書・規約・マニュアル -論理的整合性とリスク管理-
法務文書や操作マニュアルは、「誤解を生まないこと」「運用上の事故を防ぐこと」が目的です。ここでも第三者の客観的な校正が重要になります。
<チェックの一例>
整合性の確認:条文番号のズレ(「第5条参照」とあるが第6条が正しい等)、用語定義のブレ(「本サービス」と「当社サービス」の混在)など。
操作手順の正確さ:手順通りに操作して目的が達成できるか、画面図と本文のボタン名が一致しているか。
校正者が法律判断そのものを行うというよりは、法令適合性や条文の妥当性(リスク判断)は弁護士・法務、校正者は文書内整合や参照関係、表記統一などを担うのが一般的です(最終判断は法務担当が行うケースが多いです)。
12. ゲームのシナリオ・テキスト
RPGやアドベンチャーゲームなどのシナリオは、小説数冊分にも及ぶ膨大なテキスト量になります。ゲーム特有の難しさは、プレイヤーの選択によって物語が分岐したり、セリフが変化したりすることです。
前のシーンで「断る」を選択したのに、次のシーンで相手が「引き受けてくれてありがとう」というような、前後の文脈が繋がらない矛盾がないかをチェックする必要があります。また、ファンタジーや歴史物などでは、その世界観にそぐわない言葉(現代語やカタカナ語の誤用など)が一つ混じるだけで、プレイヤーを一気に現実に引き戻してしまいます。そのため、世界観を守るための用語統一や言い回しのチェックも非常に重要です。
<チェックの一例>
キャラクターの口調の統一:一人称(私/俺/僕)や語尾(~だぜ/~です)がブレていないか。
固有名詞・設定の整合性:人名、地名、技名、アイテム名などの固有名詞に表記揺れ(例:ベルダンディー/ヴェルダンディ)はないか。
選択肢と分岐の整合性:プレイヤーの選択と、その後の展開・セリフに論理的な矛盾がないか。
システムメッセージと操作の整合性:チュートリアル文で「×ボタンでジャンプ」とあるのに、実際は「〇ボタン」になっていないか。
テキストの表示確認:決められた吹き出し(ウィンドウ)の中に文字が収まっているか、改行位置が読みづらくないか。
13. 飲食店のメニュー
飲食店にある紙の卓上メニューや店頭看板、タブレット端末によるデジタルメニュー、QRコードを介したスマホ閲覧用まで、飲食店のメニューには多彩な形態があります。いずれにおいても「料理名・価格の誤表記」は売上やクレームに直結する重大ミスです。
さらに、アレルギー表示や産地表記は健康・安全にかかわるため、法令順守が必須です。近年はインバウンド対応として多言語化も進み、翻訳精度やレイアウト崩れのチェックも欠かせません。
<チェックの一例>
写真と内容の整合性:料理写真に写っている具材や数が、実際の提供内容や説明文と合っているか。
アレルギー・原産地表示:特定原材料のマーク漏れや、産地偽装と取られる表記がないか。
価格と税表記:税抜/税込の表記ルール、セット価格やオプション料金の計算が合っているか。
アルコール・ソフトドリンクの区分:お酒とノンアルコールが明確に区別されているか(誤飲防止のため)。
おわりに
ここまでで紹介したものは、校正業務のほんの一部に過ぎません。一口に校正と言ってもジャンルは多様で、多くの人が携わっています。
ただ、媒体が変わっても共通していることは、校正は単に「文章の誤りを正す」だけでなく、「読み手が迷わず、誤解せず、安心して情報を受け取られる状態にする」ことです。校正は『間違い探し』に例えられることが多いですが、実際は「伝えたいことを、伝わりやすくする」ためのコミュニケーションの担い手の側面も強いです。
Webや動画、アプリなどのデジタル領域が拡大するにつれ、今後も校正という仕事は大切にされるでしょう。ただ、その仕事のすべてを人が担い続けるかは別で、単純な間違いであればAIが担う割合は増えていくと考えられます。実際にそのような方向に既になってきています。
そうしたAIが台頭する時代に、人間がする校正に残される価値は、文脈のニュアンスの理解、行間に秘められた感情の読み取り、現実の関係者との調整、リスクの優先順位づけ、そして「何をもって正とするか」を決める判断力だと言えるでしょう。

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