「広がる」と「拡がる」の違いと使い分け[例文解説]
「広と拡の漢字を使うとき『どっちの漢字がいいのかな?』と迷ってしまう」
「よく似てるけど使い分けが知りたい」
「例文も教えてほしい」
このような疑問を感じたことがある方におすすめの記事になっています。
▼「広」と「拡」の漢字の違い
2つの漢字「広」「拡」の意味を簡単に説明すると次のようになります。
「広」=ひろい/ひらけていて大きい/ひろまる/ひろめる/ひろがる/ひろげる
「拡」=ひろげる/ひろくする
似たような意味になりますが、それぞれの成り立ちや例文も含めて理解すれば違いが簡単にわかります。
[記事作成にあたっては、以下の書籍・辞書・サイトを参考にしています]
・漢字の使い分け ときあかし辞典_研究社
・チャレンジ小学漢字辞典_ベネッセ
1.「広」の成り立ち・意味・例文
成り立ち
「広」のもとの字は「廣」。广(いえ)と黄(がらんとして何もない)を合わせた漢字になります。家が大きく、がらんとしていて「ひろい」という意味を表します。
意味
「広」には大きく分けて3つの意味があります。
① 面積や幅、範囲などが大きいこと
② 面積や幅、範囲などが大きくなる/面積や幅、範囲などを大きくする
③ 範囲が大きくなる/範囲を大きくする
例文
「① 面積や幅、範囲などが大きいこと」の意味として使われる例
■ 音読みの例:「広域」「広大」「広野」など
■ ①の意味のときには「ひろい」と訓読みし例文は次のようになります。
・広い家に遊びに行った
・広い公園に行く
・空がどこまでも広く続いている
「② 面積や幅、範囲などが大きくなる/面積や幅、範囲などを大きくする」の意味として使われる例
■ ②の意味のときには「ひろがる/ひろげる」と訓読みし例文は次のようになります。
・エレガントな香りが部屋いっぱいに広がる
・頭上には満点の星空が広がっている
・芝生の上にレジャーシートを広げる
・友達の輪を広げよう
・専門外の勉強もして、視野を広げよう
そのほかにも比喩的、慣用句として使われる場合もあります。
〈比喩的な使い方〉
・熱戦を繰り広げる
・あいつは開けっ広げな性格だ
〈慣用句としての使い方〉
・大風呂敷を広げる
・商売の手を広げる
「③ 範囲が大きくなる/範囲を大きくする」の意味として使われる例
■ ③の意味のときには「ひろまる/ひろめる」と訓読みし例文は次のようになります。
・東京暮らしの間に、交遊の範囲が広まった
・根拠のないうわさ話が広まる
・大学院に進学して知識を広める
・新しい派閥が党内で勢力を広めている
・キリストの教えを広める
・新商品の長所を広める
2.「拡」の成り立ち・意味・例文
成り立ち
「拡」のもとの字は「擴」になります。手と廣を合わせた漢字です。手で「ひろげる」という意味を表します。
意味
「拡」には次の意味があります。
・面積や幅、範囲などを大きくする
「広」には「面積や幅、範囲などが大きい」という状態を表す意味も含まれていますが、「拡」にはその用法はありません。つまり「拡い(ひろい)」という訓読みはないということです。
「拡」は「面積や幅、範囲などを大きくする」という動作だけを指す点が「広」と異なります。「ひろげる」と訓読みして用いる場合には「広」よりも意味がはっきりして「積極的に大きくする」というニュアンスになります。
たとえば、「駅前の駐車場を広げる」のように「広」を使うと普通の表現になりますが、「駅前の駐車場を拡げる」と書くと「手間とお金をかけてひろげる」という意味合いが強くなります。
例文
「面積や幅、範囲などを大きくする」の意味として使われる例
■ 音読みの例:「拡大」「拡張」「拡充」など
■ 訓読みの例文は次のようになります。
・我が社としては、なんとしても販路を拡げたい
・この運動への支持を拡げて、政府に再考をせまる
以上のように「積極的にひろげる」というニュアンスを含ませたいときは「拡」を使います。
逆に「新聞を広げて読む」「松の木が枝を広げる」のように積極的なニュアンスが薄い場合や単純にその行為を表す場合に「拡」の漢字にすると違和感がある使い方になります。
「新聞を広げて読む」「松の木が枝を広げる」→ ◯
「新聞を拡げて読む」「松の木が枝を拡げる」→ ✕
「拡」は「ひろげる/ひろがる」と訓読みをして使うことが多いですが、「広」と同じように「ひろめる/ひろまる」と訓読みする使用例もあります。
〈ひろめる〉
・新しい派閥が党内で勢力を拡めている
・キリストの教えを拡める
・新商品の長所を拡める
〈ひろまる〉
・東京暮らしの間に、交遊の範囲が拡まった
・根拠のないうわさ話が拡まった
いずれの例文も「広」よりも「拡」を使うことで「積極的に範囲を大きくする」という意味合いを含ませることができます。
「根拠のないうわさ話が拡まった」は、「根拠のないうわさ話が広まった」よりも「誰かが積極的にうわさ話をひろめている」というニュアンスになります。
まとめ
以上、「広」と「拡」の違いをみてきました。
それぞれの意味と違いをまとめると次のようになります。
広 → 面積や幅、範囲などが大きくする
拡 → 面積や幅、範囲などを大きくする(より積極的な意味合い)
基本的に「広」も「拡」も意味は同じです。ただ「拡」を使うと「積極的に大きくする」という意味合いが強くなります。
そのため、一般的な使用には「広」の漢字を使い、「より積極的に大きくなった」というニュアンスを含めたいときには「拡」を使います。