校正の素読み(すよみ)とは?

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校正・校閲の素読み(すよみ)とは?

1. 素読みの意味・辞書での定義

素読みとは、ゲラだけを読み文章の間違いを見つけることをいいます。

「素」の漢字が付くことからわかるように、素の状態=そのままの状態=原稿も何もないゲラ刷りだけの状態で文章を読むということです。

素読み校正では、原稿と離れ校正ゲラだけに集中することができるため、原稿との引き合わせのときには気づけなかった誤字・脱字や矛盾点などの誤りを見つけやすくなるという効果があります。また体裁などの細かな不備にも気づきやすくなるという利点もあります。

 ▼ 素読みは辞書では次のように定義されています。

1.書物に書かれた意味・内容を考えずに音読すること。
2.原稿と引き合わせずに、ゲラ刷りだけを読んで校正すること。
【出典:小学館_デジタル大辞泉】

・原稿から離れて校正刷を読みながら、誤りを発見、訂正をする校正方法。
【出典:ダヴィッド社_編集校正小辞典】

平たく言えば、校正用のゲラだけを渡されて、
「これを読んでおかしな箇所を見つけてください」
と言われる感じです。

 依頼する側に立てば、
「素読みお願いします」というように使います。
もしくは、
「文章を読んでおかしな箇所があれば指摘してください」と言っても同じことです。

素読みは校正者の特殊な作業のことを指しているわけではなく、誰もが普段から行っていることです。

2. 素読みで必要なもの・範囲

素読みで必要なもの

素読みは、辞書の定義にもあるように基本は校正ゲラのみでするものです。なので素読みをするときに必要なものは校正ゲラだけになります。

ただし、文章を読んでいくうえで不明な点があれば、辞書で調べたり場合によっては原稿・規定書・表記ルール・別紙資料などで確認したりすることも多いです。

結果的に校正ゲラだけでなく原稿や規定書に頼ることもありますが、前提としては校正ゲラだけになります。

素読みの範囲

素読みの定義は同じでも、素読みでどこまで確認するか(素読みの範囲)は環境によって変わってきます。

これは素読みだけではありませんが、校正依頼者(著者やクライアント)の意向や現場の作業方針に左右されます。校正者だけで判断できるものではありません。

・校正ゲラだけを読んでわかる間違いやおかしな点だけ指摘すればいいのか?
 (誤字脱字、文章の言い回し、表記ゆれだけ etc.)

・固有名詞や専門用語などがあれば、それらが正しいか別の資料を使って調べる必要があるのか?

その他、様々な状況で素読みの範囲は変わってきます。時間や予算の制約があり、誤字脱字だけ、致命的な間違いだけを指摘してほしいということがあります。多少文章の言い回しがおかしくてもスルーしてもよいという場面も珍しくありません。そのため、依頼する側と依頼される側で作業内容をしっかりと詰めておく必要があります。

3. 素読みの意味は環境によって変わる

どこの会社にもハウスルールが存在し、特殊な用語が存在します。

中でも、校正の仕事は作業が属人化されやすいので、使用される用語も特定の環境に依存した使われ方をすることが多いです。時代にそぐわない用語が使用されていることもあります。

「素読み」もその一つで、辞書での定義では『校正ゲラだけを読む』ですが、今では、紙に出力された校正ゲラでなく、パソコンやタブレットなどのディスプレイ上で文章の確認をすることも多いです。

現在の校正は、紙から離れたやり方も広がっています。

そのため、素読みは、
校正ゲラだけを読んでというよりも、
文章だけを読んでと言い換えたほうが適切かもしれません。

4. 素読み作業での確認項目

以下は、日本エディタースクール出版部『実例 校正教室_素読みの注意点』に掲載されている素読みの確認項目をベースに作成したものです。

素読みでの基本的な項目が網羅されているので、素読みのやり方でお困りの方は参考にしてみてください。

編集・校正の本をお探しの方(日本エディタースクール公式サイト)

素読み作業での確認項目

1文章に矛盾や不整合の部分はないか、文脈が乱れていないか

2漢字の字体、仮名遣い、送り仮名がルールに沿っているか、不統一や誤用はないか

不統一をなくすのは大切なことですが、巻頭から巻末まですべて整理統一するのは困難なため、不統一が目だつものの近辺だけの統一にとどめることもあります。たとえば、見開きページ内、章単位などの範囲で統一するといった感じです。

3数字の表記や固有名詞に不統一がないか

4西暦と和暦に不一致がないか。日付と曜日に不一致がないか

特に改元の年は、日にちによって和暦の表記が異なることもあるので注意します。

5数表や百分比(百分率)があれば、その合計を計算して不整合がないか

ただし、四捨五入の関係で合計が100とはならないこともあります。

6引用文などは、必要に応じて原典にあたって確認

7注と本文との照合および挿入位置が統一されているか。参照ページと本文とを照合し、文献のあげ方や形式を確認

8図・表のキャプションと本文とに内容上の不整合がないか

9ルビ(振り仮名)の付け方に不統一がないか

10ページの欄外にある柱やノンブルの確認

11柱と見出しの照合。柱やノンブルの位置および書体の確認

12目次と本文の見出しやページ数が正しいか照合

13索引があれば、各項目が本文の該当するページにあるか照合

14その他、見出し、本文、キャプションなどの文字の大きさ・書体・行ドリ・字下がりなどの体裁上の不備がないかについて確認

おわりに

以上、素読みにおいての基本的な確認項目を紹介しましたが、一番のポイントはすべての項目を同時にやろうとしないことです。

一気に見ようとすると必ずどれかが疎かになります。慣れないうちは、各項目を一つ一つしっかりと確認していくことです。そうすることで素読みの精度は確実に上がっていきます。